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灯台

灯台

瓦斯






 思い出が旅客機の窓みたいに不自然に小さくなる。

 それが虫ピンの展翅板とか、

 標本類のたぐいのようにおもえてくる。

 なんて空虚で――限定的・・な白昼夢。

 いつもそうさ、ピアニッシモやブラッシングがたくみ過ぎて、

 僕は聞き分けのない子供みたいな表現使い。

 でも僕は、意味不明の音声でいい、

 それでも素直に、真っ直ぐに

 ただせめて、焼酎の飲み過ぎで声が嗄れるように、

 自分の気持ちが届くことだけを切に願った。

 狭い世界にある星の匂いから欠如してゆく、

 緻密な玉の接触・・


 人生は同じことの繰り返し、

 騙されているよ――・・

 おどけているよ、

 ねえ、かわいらしく泣いているよ。

 どこかで鶏の鳴き声が聞こえてくる。


 トワイライト、

 ミルキーウェイ、

 シリンダーが眠って呼吸しなくなる場所、

 毛むくじゃらのおおぐま座を想像する場所、

 カムチャッカというと赤い服を想像してしまう馬鹿な僕、

 繰り返すほどに、

 わけわかんなくって、

 悟ったふりをすんのさ、

 ベイビー、

 僕は君が好き。

 僕は君が好き。


 真面目な人とか、

 不思議な人とか、

 おもしろい人とか、

 全部そうだ、

 みんなそうだよ、

 嫌な奴はすぐにわかるようにね、

 素敵な奴や、

 癖のある奴はすぐにわかんのさ。


 相手を対象化することで、

 生きるバランスを得ているような僕等は、

 木に根がなくて、葉がなくて、枝がなくて、
 
 という不足感を持っているようなものだと、

 たまに思う。

 そら、空想の枯渇!

 あいやあ、力技のボリュウウゥム!

 おひねりのトランスフォーム!


 埃の光が宙に加速――。

 凍えるような冬の手前の秋の中を加速。

 照明が匂いをつけてしまったような目鼻の微動。

 食べかけのチョコレートを鮮やかにポケットから出したい、

 僕等のまがいものの戦争に加速。

 お、なんとなくインド洋めざしちまった、コロンブスの加速。

 どっかの海がひっくりかえって、洪水となった情報のパニックス。

 トピックは驚くほどたくさん。

 殴りかかってくるような学生の声も加速。

 鈴の声、スズメの声がそこだけ明るく聞こえている。

 桃の実が、たわわさ。

 たわわ、すもも。

 すもももももも。

 おっと、いま、俺の中の祝福が炸裂しちまったようだ。

 にじんだ赤の冷たさに加速。

 破裂せよ。

 木端微塵になれ。

 いやいや、人生、加速せよ。


 僕は、毎朝、

 なかばひとりごととも思えるような声の群れを聞き、

 いろいろな喋り方の群れのなかを通過する。

 アナフィラキシーショック!

 魚だなと思う。

 プランクトンだな。

 地引網だな。

 するべきだな、

 人為的なショベルカーみたいに、

 うなぎのようにのびて、のびて、大蛇のようになって、

 通行を邪魔する人の群れ。

 そして何故か、睡蓮の葉のうえの、

 運命論的な一瞬を想起するのさ、僕は。


 僕は引っ越しをしてから、

 ひそかに、駅と僕とは相いれないと思ってた、

 そら、無数の経験の扉たちが浮かんでいる。

 でも二年と半年くらい経てば、

 地上の無言劇に祝砲が鳴る。

 なんだか、水気を失った感覚でいるよりも、

 なにやら人のようなものがいる馬鹿馬鹿しさよりも、

 こおろぎだとか思っている方が楽しい。

 きりぎりすたち、きゅうりあげようか。

 ねえ、グアアアウッって、さけんでみようか。

 なんで? わからない。

 ギャン! キャウオオオン!

 ねえ、さけんでみようか、

 そしてそれを君が笑うか、賭けようか。

 ひよこの鳴き声がきこえてきそうだな、おいおい。

 おっとおっと、

 まるで次第に大きくなる品の悪い声だよ、

 悪魔諸君。

 
 ねえ、爬虫類のふりしたがる君たち、

 自称変温動物たち、

 この駅に停まっている電車の前の喧噪を横目で見ながら、
 
 バイクで通り抜けるって、

 どんなシーンかわかるかい?

 僕はくわえ煙草をしてる。
 
 多くの人は、くわえ煙草する僕のことを、

 喫煙マナー守れよ、と思ってるのかも知れない。

 煙草をぷかあ、と吸う。

 うすあおいかげにつつまれるというところの美化。

 あるいは、何にも見ていないのかも知れない。

 ああ、俺も駅で吸いたいなあ、

 と思ってる奴もいるかもしれない。

 ああ、雨だれのように途切れそうになる会話。

 でも、本当は、

 違うんだ、面倒くさいだけなんだよ、説明するのが。

 眠たい頭を起こすとか、

 社会が好きでもないのを煙草で吸うことで誤魔化してるとか、

 僕はそれを生きている理由として考えているとか、

 本当はひとつひとつ理由がある。

 もっと即物的な理由もある、習慣的な理由もある、

 さようでございます。

 さようでございます。
 
 俺もそうさ、こんな馬鹿なことをしてる。

 でも本当はね。

 どうでもいいほどにあるんだよ。こんなこと。

 認められようが、られまいが、あるんだよ。

 こんな時、かなしい軋り音を聞いたような気持ちになるね。

 そのまま坂をまっすぐ駆け降りて子供が轢かれる、

 クラッシュ!

 イグジット!

 もし本当に煙草をすわないでバイクで通るんなら、

 僕はゴミ袋を毎日出したい、

 君等がそうしてるようにぼくだってそうしたい、

 そうしたいそうしたい、

 でも僕は全部すっとばす。

 だって、面倒くさい。

 だからもう何も言わずにそうしていいやって思う。

 牛のげっぷはよくて、煙草はいけないのかい。

 毒ガスはだめで、都市ガスはいいのかい。

 結局みんなどこかでそんな考え足らずを繰り返してるんだろう。

 俺だってそうさ、でもお前だって同じさ。

 あのね。

 僕が怒るのは、それなら、煙草なんか全部なくすべきなんだよ。

 原因を作ったのは昔の人じゃないかい。

 それをどうして今更話をややこしくする必要があるんだい。

 じゃなけりゃ、毎朝煙草患者のぼくのために、

 タクシーをまわしてくれたまえ、きみ。

 そうすりゃ路上で煙草なんか吸わない。

 そんなの不公平だ、うそつけ! 

 いまじゃタクシーだって禁煙だぞ。

 じゃあ、煙草持つかわりに、はさみ持たせろ!

 銃刀法違反だ。

 はさみは、銃でも刀でもない、だからいいんだ!

 警察が来たって、俺はこれこれこういう理由でってキレまくってやる、

 はさみがいいか、煙草がいいか、決めろ!

 いま、そのはさみがお前の咽喉を切り裂くだろう。

 やめろ、それはすりかえだ。

 それだったらそれでいいさ、でも考えるんだな。

 社会で暴動が起きても、いいと思うんだな。

 煙草を吸わない人と、煙草を吸う人が、

 ナイフで刺し合って、拳銃で撃ちあって、

 ヤクザの抗争している場面を、

 するべきなんだよ、そこまで言うなら。

 極論ちがいます。

 おまえをからかってるのさ。


 じつは、明日からそうしよう、

 と、さっき、決めたんだ。

 僕はそれを善行で陰徳だって思おう。

 そしてみんなのためだって思おう。

 前にもそうしていたことがあるのさ、

 でも、ある眠たい朝、

 むくむくむくむくっ、と悪い気を起こしちまった。

 きっと犯罪ってこんな気持ちなんだろうな。

 俺はそれで捕まらず、

 ある人はそれで留置場にぶちこまれるのかも知れない。


 真夜中にうさぎが轢かれてる。

 頭蓋骨がぐしゃぐしゃなんだ。

 でもそれを誰にもどうすることはできないんだ。

 悲しくはないよ。

 ひどくどうしようもない気持ちがするだけさ。

 トラック運転手だってのは一発でわかる。

 こんな所に飛び出したうさぎが悪いのさ。

 でもそうじゃない、それならうさぎが入ってこられないように、

 するべきだ、でもそれはできない、

 ねえ、悲しくはないよ、

 ただどうしようもないという気持ちがして、

 よくわからないけど、一発おまえの顔面をなぐってやりたいだけ。

 
 えーと何の話だっけ。

 そう、煙草を吸うのはやめにしようと思った。

 結局なんにもかわらないだろうけど、

 そんなの常識だよって諭す人がいるかもしれないが、ね。


 地図になった世界には、

 しりぞいてゆく波がある。

 切り離されてゆくてのひらがある。

 棒鱈がいる。

 あるいは、はねつるべが。

 気まぐれなほどに訪れる、

 何かのなごりをとどめながら荒れ狂っているバグが、

 じつはそれ自体の病巣における当然うまれた状況が。


 時々僕はお前の間違いを指摘やりたくてたまらなくなる、

 常識なんかお前は持っていない、

 いいか、その常識は、お前の妄想で、

 マスコミがつくりあげた妄想だ。

 昨日はほんとうに昨日だったのかと、

 問いかけてやろうか、お前の食事とかの話を聞いてるんじゃない。

 会話を聞いているんじゃない。

 お前は寝て醒めて、それがほんとうに昨日だっていう保証は、

 どこにあるのかと聞いてるんだ。

 おまえはきっとこの問いがわからないよ。無知だから。

 そもそも路上喫煙が犯罪になり、重い罰金刑になれば、

 嫌でもそうなる、

 それが常識だ。そこまで馬鹿するような奴はまずいない。

 より信頼性の高いもの、それが常識だ。

 百パーセントじゃない。

 いいかい、昨日を探すことだ。

 なまなましい轟音をプレゼント!

 
 俺はもっと言ってやりたい。

 ましてや、ねむたい眼をこすって、

 もはや意識朦朧となりながら会社へ行くような奴が、

 煙草を吸うのがそんなに悪いことなのか。

 その社会の常識はお前の定規じゃないのか。

 さっきの理屈でいやあ、俺はカジキマグロな顔をしてるのかも知れない。

 警察官はさしづめ、サメですね、こりゃあ。

 でも冗談まじえた比喩はともかく、

 その定規が正当だと勝手に思い違いしてはいないかね。

 (八当たりだとしてもね、

 みんなそうさ、一番心の奥底では、

 絶対に触れられたくない何かを持ってる。
 
 エゴってやつが! エゴってやつを!)

 喫煙そのものが本当に悪なら、国家は税金なんか上げず、

 廃止すべきではないのか。

 マリファナだって好き勝手にやらせてやったらいいんだ。

 合法ハーブだっていいじゃないか、やらせてやれ、

 それが社会の悪だと言う根拠はまだ見つかっていない、

 本当さ! だって、第三の麻薬だって持ち込まれるかも知れない、

 バファリンだって大量に飲めば意識が混濁する!

 ねえ、そんなことは起きないとか、

 そんなことないよ、どこで何が起きるのかなんて全部把握できないのさ、

 大多数の思い込みにおける常識はそこにあるらしいがね、

 でもよすんだよ、おたくさん、

 アメリカみたいに、あなた方の為というポーズを。


 でもこんな話をするのは、
 
 きっと、僕は、
 
 どこかでまだ社会を信じたいからなんだろう。

 内省的なものになまめかしくなでられながら、

 ごぼごぼとくもぐった音が鳴る。

 僕は僕で見直すべきところがあることを、認めるべきなんだろう。

 それは路上喫煙のマナーのためでもなく、

 公衆衛生のためでもなく、ましてや常識のためでもなく、

 自分がみんなのために、と思っている限りは。


 でも行き過ぎた正義は、

 所詮お金や、心理学の手法にすぎない。

 ずっと無自覚で生きてきた、君よ!

 砂だって繰り返し生きていることを認められない、君よ!

 あらあらしい意味を与えている線路が、

 盲目的な人をたくさん生みだす。

 そして彼等こそ、

 常識を持たない連中だ。

 お前のことだ、カメレオン、

 お前のことだ、お前のことだ!

 そいつは粉々になってばら撒かれた音ばかり聞き、

 いつまでも本当の音を聞かない。

 情報はすべての正しい音じゃない。声じゃない。

 社会の締め付けは、ルールの厳守は、

 あんまりよくないことだ、

 誰もが素直に人のことを信じられなくなる。

 でもそうすると、奴等は言う。

 信じなくていい詐欺にかかる。

 
 嘘だ、間違ってる、ふざけるな!

 見破れないと本気で思ってるのか!

 そんなのは騙されたことのない人間の台詞だ、

 でもお前も実はもう騙されてる、

 そしてそういう人間をさらに騙して苦しめる人間がいる、
 
 どこまでもこのシステムは続く、

 思い込みで自分の世界の壁をつくった人だけが、

 そのシステムを破壊できる、

 ただし、人生を無駄遣いすることはもう確定済みだがね。

 そうでなければ君は法に裁かれる、

 裁けない、嘘だ、嘘なものか、法にはいくらでも落とし穴がある、

 まして君に恨みのない人間がいないと本気で思ってるのか、

 そんなことを言ってるような奴にいないと思ってるのか、

 あるいは人に刺される、

 刺されないと思ってるのか、お前は今度から後ろを見て歩け、

 そしてこれは脅迫じゃない、

 言語上のトリックにすぎない、

 でも、もうちょっと痛い目を見た方がいいな、

 お前の性根は腐ってる、

 あなたが死後かならず裁かれますように!

 とても重い重い罪があなたに課せられますように!


 お前をからかってるのさ、

 でも、車を運転すればスピード違反は生まれる、

 暴走はうまれる、

 最低そんなの一年もすればわかったはずだよ、

 車によってあたらしい事故はうまれたはずだよ、

 でも一体誰がその車より、

 もっと安全で快適なものを生み出せたんだい?

 それを作るためのプロジェクトがあるなら、

 この国はお金を惜しまないのかい、

 もちろんそうだ、これは詭弁だ、でも、この詭弁が、

 指し示しているのはなんだ、

 君が勝手に作っている常識は所詮、

 つくられた常識にすぎず、

 本質的な常識ではないということだよ。


 手塚治虫の未来都市も、

 SFにおける創造的な世界のフィクション的な問い掛けも、

 なにか、しらじらしい。

 ぼってりと闇を吸ってふくれあがったすえに、白い光が生まれたというくらい、

 どこか、うさんくさい。

 頭の中の素晴らしいことを寄せ集めれば、世界はしあわせになる、

 でも、頭の中のそれは、お金ではないからうつくしいんだ。

 最初からそれはそうだったのに、

 それだけでよかったのに、悪い気を起こしたんだなって気持ちがする。

 ちいさなものにおおきなものを入れ子にして納めるさざ波のリズム。

 トンネル長屋にでも入っていくリズム。

 実際この国には、貧乏な人がいる、

 子供にごはんを食べさせやれない人もいるんだ、
 
 それをあなたの責任でしょという人もいれば、

 いやそうじゃない、これは神の賜り物、という人もいる。

 捉え方次第で、人の心はスムーズになる、

 でも、人の心を捉えているのは、

 本質じゃなく、見せかけではないのかな。

 おや、顔色が悪いね、どうした。

 そうさ、そんなことを言ってもどうしようもない、

 とあなたが言った瞬間、

 僕は即座に、お前は自分で嘘を認めたんだ、となる。

 じゃあお前の常識は何だったんだ、絡んでやろうか、となる。

 有り金全部もらってやろうか、
  
 指の骨を全部折ってやろうか、

 俺はいらいらしてるんだ。

 とっとと消えろ!

 
 おいおい昔の悪い癖はやめなさい。

 でも答えはたった一つさ。

 お前は嘘をついてる。

 さらに付け加えよう。

 そしてお前は何もしない。お前は善人じゃなく、

 自分に責任を持てない悪人だ。

 悪人は、他人をだまして死後罰を受けるらしい。

 君も、それを子供だましと言って重い罰を受けるつもりなんだ。

 いい心がけじゃないか、最初に言っておこう、

 まず俺を笑え、俺のそれは、お前の人生に一番よく効く。


 おっと、緊張しないでくれ。

 こんなのは別に論理上のひとつの帰結じゃないか。

 雨のための執拗な増水、それだけじゃないか。

 冗談はあれとしても、

 馬鹿丁寧にそんなのいちいち喋ってられないよ。

 かまってられる?

 おまえ、犬か。

 お手しろ。

 三回まわってワンと言え。

 違うだろ、

 違うのさ、

 みんな多分そうだなって思ってるのさ、

 世界はきっと何をしてもいい、

 でも、僕等はルールを守る、

 秩序をおかすものを許したくはないから、

 青い水底にある真珠を守りたいから。

 でもそのために、小さなことに、

 眼をつむらなきゃいけない。

 生きることは小さな罪の積み重ねだから。

 わかんなかったらわかんなくていいよ。

 お前の人生まで俺が干渉するのか。

 違うだろ、だからお前は俺を干渉してはいけない。

 でも、干渉すること、すなわち接触することが、

 人の成長でもある。

 本当はいつだってその向こう側にある。

 向こうがわのあたらしいところへと行け。


 僕等は筋道のある感覚で、

 ピラミッド社会を通過する。

 ステンレス製の。

 あるいは、プラスティックというひびきの。

 ねえ、その単調な岩を噛む波の音はなんなんだ。

 ああ、雨は三角形だって思う時みたいに、

 内部には何があるのだ、そのものすごい不動のところには。

 集団的無意識、

 みずからを薄めるための幻想、

 グラスの表面だけ乾いているような神。

 そんなものわかるものか、

 空っぽかもしれない、

 愛かもしれない、

 というよりすべて嘘かもしれない。

 わかってることはたったひとつ、

 どうしてこんな恥ずかしいことを、

 大真面目に書くのかわけわかんないけど、

 君が好きってことさ、

 僕はいつだってそういうことには正直なんだ、

 セクスが好きじゃない、

 おっぱいだって実はそんなに好きじゃない、

 ゲイとかレズも実はそんなに好きじゃない、

 だけど差別じゃなくて、

 その内部にあるかもしれない、

 宇宙的なことわりのある種の矛盾、

 烈しい熱をうむその荒廃のなかのあたらしいルール、

 人はそもそも何物である必要もないかもしれない、

 というのを、僕はそこで感じてしまうからだ。

 路地裏とか、

 建設現場とか、

 たとえばコンビニのトイレの蛇口のそばの石鹸のいれものとか、

 別にどうでもいいんだけど、

 妙に心に引っかかるような時は、
 
 必ず奥の方で何かが引っかかってる。

 でもわかることはったひとつ、

 ベイビー、

 僕は君が好き。

 僕は君が好き。


 とにもかくにも、

 そこでスーツ姿の人を見るんだ。

 女房を食わして、子供いて、家や車のローンあるって人。

 あやつり人形みたいな、無表情な人。

 感情を完璧にとざしてる人。

 それをよそゆき顔と言う人もいるけど、

 違う気がする、

 それがその人の怠慢なんだなと思うこともある。

 世界に期待しなくなったあなたは、
 
 相手を見て喋っているということで、

 それ以外のことを閉ざしてるんだ。

 でもそれは、しっかり勉強しろ、

 ということじゃない、

 純度があがるほど、視座がしっかりするほど、

 人それぞれの理由かも知れなくて、

 たまに考える。傷が柔らかく撫でられ、

 ごくたまに、底辺から侵食するような感じとして。


 毎朝おなじことの繰り返しだけど、

 他愛もない繰り返しほど、

 洗脳だよね。

 チェックインさ。

 光と影に弄ばれている感じがして、
 
 どうしようもない。

 ああでもほらさ、

 信号なんか別に必要はない、

 車だって本当は必要はない、

 チョコレートとクッキーが降ってくるぜ。

 マカロンにプリンにアイスクリイィム。

 ゼリー菓子にキャンディにマシュマロ。

 チョコソースのたっぷりかかったエクレア。

 シュークリームにロールケーキ。

 ふくよかで、贅沢なものが、降ってくる。

 いま、多くの人はそんなことないって言う。

 違うんだ、本当は何一ついらないんだ、

 そしてそれを認められないのを、

 弱さだって気付くことができない人達が、

 さらに嘘を重ねていくんだ。

 でも安心せよ、僕もさ。

 僕はそういうのを認めてる、ひとりの人間の重さって、

 嘘の重さのことだよ。
 
 でもどうせならしあわせな嘘がいい。

 ゲイにもレズにも、愛想よく接したい。

 実は昔、ゲイだと思われていたこともあるんだ、

 おやって、思う人もいるかもしれない、

 また、女性っぽいなんて、よく言われてたことなんだ、

 だからってわけじゃないけど、

 正直ゲイやレズの人の心理ってすごく興味があるよ、

 いろいろ違うだろうけど、

 根っこはみんな一緒だし、僕もどちらかといえば、

 社会に対してカミングアウトしなくちゃいけないようなこと、

 たくさんあるしね。そして、実際、してきた。

 残ったものは全部空虚だけど、

 正直っていいことだよ。

 いまでも、眼がきらきらしてるって言われる。

 それは、魂が燃えてる証拠だ。

 僕がまだ、人のことを人と思っている証拠だ。

 好きな人も嫌いな人も認めて生きている証拠だ。

 人生は薔薇色?

 人生はフルコース?

 どうかな、僕にはわかんない、

 ただ、人生は僕にとっては多く、恋とか、

 ロマンティックであらわされるシーンが多いよ。

 純粋だから、社会批評や、ジャーナリズムにつながる、

 素直でいたいと思うから、弱い人の味方にもなる、

 でも時と場合においては、人と話すしかないから、

 その時、自分の技術が必要なんだなって考える。

 交渉もいずれ得意になる。

 くだかれている僕等の心のように、波は、あばれていい! 

 でも、大切なのはなんだい、

 いま、僕に必要なクラクションや、絶叫はどんな言葉なんだい。

 朗読するとき、まず何から始めるべきなんだい。

 歌をうたいながら、自分じゃなく人の気持ちを考えているとき、

 なにを真っ先に持ってくりゃいいんだい。

 そしてそれを、本当に心の底からささげたいって希う僕は、

 いま人生のどんな瞬間より価値があるって信じてるのさ。

 ベイビー、

 僕は君が好き。

 僕は君が好き。

 
 人生はややこしくなりすぎて、言葉ばっかり増える。

 僕は沈黙し過ぎて、言葉ばっかり増える。

 僕のそれは、とある精神の病の軽い症状のために、

 芸術的な衝動として処理されてゆく。

 そして人は、あやうさと友好的になれる。

 そのあやうさは、つまり恋だから。

 そのあやうさこそ、人類のマイナス面を、

 プラスにすりかえる装置だから。

 だから、現代がかかえた闇を、

 麻薬や暴力だけのせいにしちゃいけない、

 政治や経済のせいだけにもしちゃいけない、

 結局、僕等は本当のところの理解を、

 一歩手前で見誤っているんだって、

 考えて、とりあえず、前に進もうぜ。

 そこで、言いだす言葉と、言い終える時の言葉の、

 違和感にふっと思い当たる。

 それでいいんだ。

 そんだけありゃあいいんだよって思う。

 世の中は形式やパターンに充ちていて、それは因習だよと、

 ある日の僕は言った。スーツで仕事しなくたっていいし、

 ネクタイをしなくたっていい。

 働くことが苦痛なのや、

 いま、もし給料が少なくて生活に困っているなら、

 僕は運動をしなくちゃ、社会運動。

 革命をしなくちゃ。一滴も血がながれない、

 世界平和の活動。

 そしてすべての人が、才能を評価され、

 もっと自分をたかめられて、もっと前向きになれる世界に、 
 
 しなくちゃって――とある日の僕も、

 やっぱりいまの僕も、思っていたいと思う・・。


 大人っぽくなった僕を見破ってくれ、

 特別なふりも、賢いふりもしない僕だけど、

 本当はどんなに自分を恥じていて、

 いつもどんなにみんなのことを考え、

 そして少しでもよりよいものを考え、

 それが君へと向かっている前向きな感情であることを、

 見つけてくれ。

 つながってくれ。

 すると突然、忘れていた言葉が、

 地下室の天井をぶちぶちぶちぶちって破ったもぐらみたいに、

 ほら、朝陽。
 
 でも僕等は約束とか、言い訳を、

 あっさりと呑み込んでしまえるクジラなんだな。

 僕がたくさんの人にいだいた、空っぽや、むなしさは、

 僕にこう教えた。

 結局この人には何もないんだって、

 そしてそれをお金とか欲望とか、

 知識とか教養で誤魔化してるけど、

 いま自分がどことつながっていて、

 本当は何をすべきなのかも全然わかってないんだなって。

 あなたは狡い人だよ、と指摘されるのを恐れてる。

 本当はしたいこともしたいと言えない人だよ、と。

 でも、心のどこかじゃあ、そういうごまかしや嘯きにみちた人のことを、

 心の向こう側のシステムの不自然なむくみや暴走や閉ざされることのない、

 人の自由な気持ちを感じるたび、

 愛せた――。

 
 輪に応じなかったわけじゃない。

 星が散らかっていただけさ。

 僕は別にたくさんの人を嫌っていたわけじゃない。

 何ら意味をなさぬ人の心のこと、

 自分と他人が一緒だとは思うくせに、

 結局は人の弱さや、人の不幸を見つめ、

 結局猿の力関係をやめられず、

 本当の成長を感じられない社会に僕は憤りを感じた。

 名刺なんか持つなよ、詩人のくせに。

 よくできたプラモデルだと認めたいのか。

 アーティストだろ、魂の仕事なんだろ、

 人を愛するって肩書きを必要としない、

 そもそも、僕等は社会を必要としない、

 むしろ、社会から求められる才能。

 でも多くの未熟さは少し違った。

 働きたくないと言った。

 辛いだけだから、嫌なだけだから、

 それもわかるけど、でも、わかりたくなくなるほど、

 彼等の言葉は一様だった。

 ノックする者はいない。

 あきらめている以上に、

 君は弱いって、

 いま目の前のことさえ本当は理解していないから。

 ノックしても返事がないんじゃない、

 君がからくりを見破るのをやめただけだよ、

 正しいことと間違ったことから、

 三つ目の答えが生まれた社会で、

 さらに、君がそこで覚えた経験がいかされていかない、

 ノックは鳴らない、

 だからそのノックはいつまでも鳴らない!

 何が宗教だ、馬鹿野郎。

 お前は何に救われたがってるんだ。

 どんな嘘にみちて、本心を隠そうとしてるんだ。

 でも答えがないから、生きてるんだぜ。

 ただ遠くへといこうとする本能に、

 すり抜けようとしながら、

 思ってた。

 すこしでも理性を寄り添わせて、

 人間っていう笑顔を、愛を、本当の自分を、

 旅を、世界の真実を、見付けたい――・・


 でもわかることはったひとつ、

 いまのぼくも、

 光を探している、

 そして希望を見つめてる、

 それだけでいいのさ、

 そんだけありゃあ何処へだっていける、

 僕等は何処でだって暮らせる、

 どんな人生も、なんのそのさ、

 ベイビー、

 僕は君が好き。

 僕は君が好き。

 


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