17歳と思えない文章力
『インストール』これが本当に17歳の高校生が書いたものなんだろうか。やはり才能ってあるんだなぁ。以前、友人で小説家を目指していたのがいた。行李いっぱい習作がなければ一人前になれないと口癖のように言って暇さえあれば書いていた。だがいつしかその夢も潰えたようで商社マンになっていた。何度か習作を読ませてもらったが大げさな表現や難しい語彙が散りばめられ読み切るのがきつかった。感想を聞かれるのが何よりもつらかった。『インストール』(綿矢りさ)は、もっと若い人が書いた作品だというのにスーと小説の世界に入っていけた。題材もありえそうで面白いし、タイトルも意味深長でいい。コンピューターにソフトを導入するというよりも、学校をさぼり一月の間、見知らぬバーチャルな世界をコンピューターを介して体験していく、それがソフトを組み込んでいくような体験だったと言いたかったのだろう。高校生の主人公と小学生が出てくるが、それぞれの親の描き方もあっさりと淡白で好い。「17歳、最年少の文藝賞を受賞した」という紹介がなく、本屋や図書館の棚から偶然取りだして読んだら普通に楽しめる小説だ。この本とは、そんな出会いがしたかった。