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カテゴリ:永遠の桃花~三生三世~全58話
三生三世十里桃花 Eternal Love 第57話「別れと旅立ち」 白浅(ハクセン)は央錯(ヨウサク)、楽胥(ラクショ)夫婦の願いを聞き入れ、夜華(ヤカ)を返すことにした。 「皆さんの言うことは道理にかなっています…よく分かりました ただかつて素素(ソソ)だった時、私は夜華の妻でしたし、今は許嫁です 妻として最後に夜華の衣を整え、顔を拭き、綺麗な姿で送り出したいのです…」 すると白浅はひざまずいて叩頭し、この一礼は夜華の妻として2人に捧げると言った。 東華帝君(トウカテイクン)たちは白浅が夜華の身支度を済ませるまで待つことにした。 しかし楽胥はまだ白浅を許せない。 連宋(レンソウ)は思わず白浅を恨んでは天族と青丘に不和が生じるとなだめた。 すると楽胥は2度も息子を奪われながら、それでも天族と青丘の心配をしろと言うのかと感情的になってしまう。 「悲しんでいいのはあの白浅だけだと言うの?!」 「大嫂…そう言う意味ではありません…」 そこへ白鳳九(ハクホウキュウ)がお茶を出しに来た。 連宋は話題を変え、その若さで女君を継ぐとは優秀だと白鳳九を褒める。 しかし鳳九は白浅が嫁げばの話だったが、その必要はなくなったと言って東華帝君に茶を献上した。 白浅は夜華と最後の別れを惜しんだ。 「夜華、覚えている? 狐狸洞に閉じ込め、私以外の者に会わせないって、あなたに言ったわよね? だけどそれは…もう無理なの、あなたは天族太子で私は青丘の女君だもの あなたを閉じ込めたら、青丘と天族のどちらも困らせることになる 前に言ってたわよね、″誰よりも二叔が羨ましい″と… 当時は理解できなかった、降格された方の何がそんなに羨ましいのかを…でも今は分かる もし太子でなければあなたは青丘にいられたのに…そうしたら私たちはずっと一緒だった 私っていつも不自由な立場にいるわね 人間だった時はあなたに釣り合わず、今の私は女君だから一緒にいられない…ゥッ… 本当に役立たずよね?でも大丈夫よ?あなたとの日々は忘れない、ずっと心に留めておくわ 永遠に覚えている…ふっ、こんな話はやめましょう そうだ、ひとつ打ち明けるわね、あなたが狐狸洞の外で7日も私を待っていた時のこと 本当はもう許していたの、でも知っての通り私って強情でしょう? 本当よ?とっくに許していたの…何百年にもわたってあなたを苦しめたわね…」 白浅は最後に夜華に口づけし、しばしその胸に顔を埋めていた。 夜華が玄晶氷棺(ゲンショウヒョウカン)に納められた。 白浅は自分も無妄海(ブボウカイ)まで行きたいと頼んだが、央錯は聖地には天族しか入れないと断る。 仕方なく白浅は諦め、最後にそっと棺に手を乗せた。 するとその瞬間、東華帝君たちは棺と共に姿を消してしまう。 白浅は思わず狐狸洞の外へ飛び出したが、憔悴のあまりその場にへたり込んだ。 白鳳九は東華帝君を追って天宮へやって来たが、門衛に止められた。 しかし東華帝君が鳳九がいることに気づき、戻って来る。 「さっきは大勢いたので聞けませんでした…傷の具合は?」 「よくなった」 「良かった…安心しました、ではこれで」 「あの話は良いのか?」 鳳九は東華帝君が三生石の自分の名を削っていなかったら自分を愛したかと聞いたことを思い出した。 「愛した」 「…帝君、今、何と?」 「もし三生石の己の名を削らなかったら愛していた 人間界へ下ったのはそなたの願いよりも、己の願いを叶えるためだった」 東華帝君は最後に本心を打ち明け、皇帝だった時と同じように鳳九の額のアザにそっと触れると、天宮へ引き返して行った。 白浅は抜け殻のように十里桃林をさまよっていた。 やがて木に寄りかかってうたた寝していると、誰かが頬に触れる… 白浅はふと目を覚ますと、そこには愛しい夜華がいた 『来たのね! このところずっと考えていたの、私も跡形もなく消えたらあなたに会えるって… でも怖かった…もし私も逝けばあなたを忘れてしまう、だから思いとどまったの だからこそ、こうしてあなたに会えた、そうでしょう?…よかった、本当に良かったわ…』 しかし夜華は微笑んだだけで、煙となって消えてしまう… その時、白浅は本当に目を覚まし、実は夢だったと気づいた。 夜華の面影を探し求め、悲しみに暮れる白浅、すると白真(ハクシン)が現れ、情けない妹を叱責する。 「夜華が死んだから生きていけぬとでも?いい年をしてなぜ生死を達観できない?!」 「どう吹っ切れば良いのか分からないの…あの日、私は酔って結魄灯(ケッパクトウ)を割った そして300年前のことを思い出したけど、頭に浮かぶのは夜華から受けた仕打ちばかりだったわ でも夜華がいなくなると、思い出すことと言えば優しい夜華の姿だけ… ふっふふふ、以前、離鏡(リケイ)が青丘に私を訪ねて来た時、私はもっともらしく罵倒した ″あなたという男は得られないものを追い続けているだけで、得たら大切にしない″ってね でも私も同じよ…夜華を失ってやっと気付いたの、夜華なしでは生きていけない…」 「…もういい、帰って休め」 白浅は十里桃林の小屋で眠った。 するとまどろみの中、夜華の声が聞こえ、半信半疑ながら外の様子を見に行ってみる… 『浅浅、こちらへ』 振り返ると夜華が碧瑤池のほとりに座り、白浅を呼んでいた 『夜華…』 驚いた白浅は夜華の右手が治っていることを確認し、まじまじと顔を見つめる 『どうした?』 『よかったわ…本当に…』 『チェンチェン、人形の素素とは何もない… 侍女として雇っただけだ、すべて素錦(ソキン)の策略だった』 白浅は安堵し、夜華にもたれかかる 『チェンチェン、素錦とは共に育ったが部屋の置物くらいにしか思っていなかった 顔もまともに見ていない、素錦が天妃になった腹いせにそなたを愛したわけではない』 『分かってる…何もかも信じるわ』 『9月2日は縁起が良い、だが過ぎてしまった…』 『…いいの、構わない、あなたさえいればいいの、一緒にいればいつでも縁起の良い日よ』 『ふっ、狐狸洞に閉じ込めたいか?』 『うふふ、いいの?』 そこで白浅は目を覚ました。 しかし確かに夜華に触れた感覚が残っている。 目が冴えてしまった白浅は悲しみを紛らわせるように酒を飲み、また横になった。 夜が明けると、白浅は桃花を彫った墓標へやって来た。 夜華の亡骸を引き取れなかった白浅はここに夜華の衣だけ埋葬してある。 「私の声が聞こえるかしら…夢であなたに会ったの、生きている時のように私に話をしてくれた 嬉しかったわ、暇な時はまた夢の中に来て欲しいの、私と話したり、碁を打ったり…」 傷心の白浅が白真と旅に出て3年が経った。 青丘では今日、白鳳九の即位の儀が行われる。 鳳九は祭壇に上りながら、司命星君(シメイセイクン)の報告を思い出していた。 この3年、東華帝君は夜華の代わりに政務を代行して寝る暇もないという。 鳳九は心配していたが、かと言って何もできずに悶々としていた。 しかし姑姑から″女君は自分勝手な行いをしてはならない″と教えられ、今後は自由に太晨宮(タイシンキュウ)へ行くことは叶わない。 鳳九は覚悟を決めて帝位を継ぎ、青丘の万民から祝福を受けた。 その時、東華帝君の使者として司命星君が現れる。 その手には東華帝君からの祝いの品があった。 「かつて帝君が征戦に使った四海八荒絵図で、自ら描かれた物です」 参列していた青丘狐帝・白止(ハクシ)は驚いた。 あれはかつて帝君が父神と共に戦った時の絵図で、今の天君でさえ見たことはないという。 すると白鳳九は司命に感謝し、祝いの品の他に東華帝君から言付けはないか聞いた。 「その絵図があなた様への言葉だと仰せでした ″数十万年が過ぎ、描かれた物はすべて存在せず、四海八荒でさえ姿を変えた 万事は取るに足らぬもの、懐かしむ価値もなし″と…」 鳳九は東華帝君の想いを受け止め、天族と青丘との末永い友好を願うと告げた。 天宮でその様子を見ていた東華帝君は銅鏡を消し、ふと立ち上がって外へ出て行く。 その腰には鳳九が切り落とした尾をつけた玉飾りが下がっていた。 一方、白浅と白真は人間界の茶館にいた。 すると偶然、同じ店にいた夜華の表妹・織越(ショクエツ)が白浅に気づいて声をかける。 「あなたたちも人間界に来たのね?」 「なぜ私が神仙だと?」 「仙気が強いもの、人間には見破れなくても私には分かるわ~えへへ 銭を貸してくれない?良いお芝居だからおひねりをあげたいの」 「小仙なら銭くらい変化(ヘンゲ)の術で作れるはずよ?なぜ借りたいと?」 「…親に仙力を封じられたの」 白浅は仕方なく銀子を出してやった。 白真は行き交う人々をながめながら、人間は司命の決めた運命に従い、わずかな年月しか生きられないと同情した。 「ある者は貧しさに苦しみ、ある者は挫折に嘆く、女は嫁いでも幸せになるとは限らない… だが楽しそうに生きている、人間に比べたらお前は恵まれている」 「この3年で口うるさくなったわね…」 白浅はつまらなそうに歩き出した。 しかし白真は最近の白浅は顔色が良くなって来たと安堵する。 白浅は夜華の夢を良く見るおかげだろうと笑顔になり、白真はやはり心配になった。 「まだ夢と現実の区別がつかないのか?」 「四哥…荘周(ソウシュウ)が見たという″胡蝶(コチョウ)の夢″を知っている? 荘周は自分が蝶になった夢を見たの ひらひらと楽しく飛んでいたのに、目覚めてみると人間のままだった そこで自分が蝶なのか、蝶が自分なのか、分からなくなった 3年前に初めて夜華の夢を見た時、こう悟ったわ ″現実を夢と思い、夢を現実と思えばいい″と…見方を変えて生きればいいのよ」 その時、2人は偶然、天界を追放された素錦を見かけた。 素錦は妻のある夫を奪って後妻に収まったが、街中で夫に罵られ、捨てられてしまう。 「お前は尻軽で男と見れば色目を使う、2度と俺の前に現れるな!」 「あなた!待って!」 つづく |ω・`)夜華…素錦の扱い、さすがにあんまりなんじゃ… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.10.07 17:18:46
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