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カテゴリ:東宮~永遠の記憶に眠る愛~全55話
东宫 Goodbye my princess 第34話「危険な一手」 裴照(ハイショウ)は万年県で皇太子妃・曲小楓(キョクショウフウ)とアドゥを助け、承恩(ショウオン)殿まで送り届けた。 「裴将軍、謝謝!」 しかし急に寝殿の扉が開き、待ち構えていた皇太子・李承鄞(リショウギン)が睨みつける。 「待ちくたびれたぞ?こんな夜更けまでどこへ行っていた?」 李承鄞は女官・永娘(エイジョウ)たちを下げてから小楓を叱った。 「また市中で騒ぎを起こしたのか?! 裴将軍は東宮を守る統領だ、君の尻拭いをする付き人ではない!」 「毎回、見張らせているのはあなたでしょう?」 「君が抜け出すからだ!」 「私と喧嘩をしに来たの?」 すると李承鄞はふと用件を思い出し、冷静になった。 「″狼の牙″の件を説明すべきだと思ったのだ、あれは西域から戻る際に拾った品だ …君の物だったのなら折を見て返そう」 そんなある日、戸部尚書・高坤(コウコン)が安護(アンゴ)府から届いた長兄・高顕(コウケン)の上奏を朝議で報告した。 実は丹蚩(タンシ)の残党が未だ朔博(サクハク)の西南に潜伏して民を脅かしており、討伐のため兵糧50万石および軍資金100万銀が必要だという。 すると早速、趙士玄(チョウシゲン)がかみついた。 討伐なら鎮北侯(チンホクコウ)として丹蚩を治める趙家の役目、軍資を出すなら趙家に出すべきだという。 そもそも少数の残党を討つにはあまりに高額な要求であり、軍資を名目に兄弟で示し合わせて国庫の金をせしめるつもりだと追及した。 しかし高于明(コウウメイ)が武力で鎮圧する高将軍と懐柔策でなだめる趙将軍、皇帝への忠誠心は同じでも各職責により重視する点が異なると説明する。 「恩威並行、飴と鞭を用いてこそ丹蚩を従わせ、平安を保てましょう」 そこで皇帝は腹が減っては軍ができぬと話し、国庫の備蓄を切らさぬことを条件に安護府に軍資を送ることを認めた。 趙士玄は納得がいかず、東宮で李承鄞に警鐘を鳴らした。 丹蚩はすでに滅び、逃げ延びたのは老女と幼子ばかり、大軍など必要ないはずだという。 しかし高家と対抗していた忠(チュウ)王一派が凋落した今、高于明に逆らうことは難しかった。 「そなたが高右相の企みを証明できれば話は別だがな…」 李承鄞は趙士玄をけしかけて高家を探らせることにした。 顧剣(コケン)は陳嫣(チンエン)こと明月(メイゲツ)を密かに李承鄞と引き合わせた。 すると明月は顧家と陳家のため、高家打倒に協力したいと申し出る。 「私は陛下に2度お目にかかり、多少の信頼は得ました 陛下の助力があれば両家の汚名もそそげます」 明月は一族を皆殺しにした高家への深い恨みがあった。 もし皇太子に断られても、皇帝に近づいてひとりで復讐するまでだという。 顧剣はもちろん李承鄞も柴牧(サイボク)不在の今、その娘に何かあってはならないと反対した。 しかし明月の決意は揺らがない。 「殿下、高の悪事は両家の虐殺にとどまりません… 今や朝廷は高の手中にあり、噂では科挙の不正まで行っていたとか? このまま見過ごせば災いは民にまで及びます」 科挙の件で長兄の死を思い出したのか、李承鄞は結局、明月の協力を受け入れた。 顧剣は明月を先に帰し、東宮にやって来た。 李承鄞は従兄が自分の身勝手さを責めていると気づき、確かに1日も早く高于明を倒したくて承諾したと認める。 高于明が自分を疑い始めた今、柴牧の正体が暴かれる前に手を打たねばならない。 顧剣は李承鄞に記憶がないと分かっていても苛立ちを隠せず、不満をあらわにして出て行った。 かつて愛する小楓を利用して深く傷つけた李承鄞、また同じ過ちを繰り返すつもりだろうか。 しかし当の李承鄞は何も覚えておらず、ただ従兄の態度に困惑するばかりだった。 良娣(リョウテイ)・趙瑟瑟(チョウシツシツ)は皇后からの罰で1日の半分もひざまづいて経を唱える毎日だった。 しかし皇后からどんなに冷遇されようとも皇太子さえ信じてくれれば良い。 実際、李承鄞も瑟瑟の顔を見られなくても、朝晩、青鸞(セイラン)殿を訪ねていた。 一方、小楓は今も熱心に故郷へ文を書いていた。 嫁いで1年になるが時折、故郷の品が届くものの、父からの返事は1通だけ、母からは音沙汰なく、兄の来訪もない。 …機会があれば西州に帰れるか頼んでみます …阿爹、阿娘、会いたくてたまりません アドゥは公主の手紙を預かると、今日もまた居所にある化粧箱に入れて大切に保管した。 永寧(エイネイ)と珞熙(ラクキ)が承恩殿にやって来た。 今夜は皇后主催の宴が開かれ、親族の婦女子も集まり、事実上のお見合いの場所だという。 小楓は李承鄞と顔を合わせるのかと思うと憂鬱だった。 しかし永寧と珞熙は五兄と小楓がお似合いだと褒め、五兄は小楓のことを想っているという。 「五哥哥はあなたと結婚して何だか変わったわ、前よりずっと生き生きしているもの」 「趙姑娘を娶ったからよ、私は関係ない!」 宴で艶やかな舞が始まった。 小楓は皇太子と良娣と並んで座っていたが、つまらないので永寧と珞熙の席へ行こうと立ち上がる。 すると李承鄞が咄嗟に小楓の手をつかんで止めた。 「太子妃が勝手に動くな、分かったか?おとなしく食べていろ!」 小楓は仕方なく腰を下ろすと、各膳に茹でた蟹が出された。 しかし山育ちで蟹を見たことがない小楓は巨大な虫かと驚き、食べ方も分からない。 そこで李承鄞は綺麗に蟹の身をほぐして見せると、当然のように瑟瑟に勧めた。 「(はっ!)そうだ、先日の麺で体調を崩したし、蟹は良くないな…君が忘れてどうする? だがせっかくの蟹だ、捨てるのは惜しいな~時恩(ジオン)、太子妃に…」 小楓は珍しそうに蟹を一口食べると、これがなかなかの美味だった。 李承鄞は小楓が脇目も振らず蟹を食べている姿を見て、思わず笑みがこぼれる。 その皇太子の満足げな表情を瑟瑟は見逃さなかった。 小楓が蟹に夢中になっている頃、演壇にひとりの舞姫が現れた。 皇帝は美しく優雅に舞う娘を一目で気に入ると、皇后が高于明のひとり娘・如意(ニョイ)だと紹介する。 こうして皇帝の目に留まった如意は後宮に迎えられることになった。 宴が散会すると小楓は慌てて寝殿に戻り、アドゥと永娘に隠し持っていた蟹を一杯ずつ渡した。 驚いた永娘は畏れ多いと断ったが、小楓は蟹の足を永娘の口に放り込んでしまう。 「皇室の品を拒むなんてかえって不敬よ?私まで蟹泥棒で罰を受けちゃうわ~どう?美味しい?」 「(*゚▽゚)*。_。)*゚▽゚)*。_。)ウンウン」 永娘とアドゥはありがたくご相伴にあずかった。 「太子妃、今日、恥をかかずに済んだのは殿下のおかげです 助けてくださったのですから、もっと優しく接してはいかがでしょうか?」 「私を助けた?んなわけない、嫌われているんだから」 高坤は皇后に謁見し、長兄から届いた子宝観音を献上した。 「実は大哥は如意の件で気を揉んでおります 如意が宮中に入ってはや数日、どうか早々に床入りの日をお取り計らいください …父も娘娘のお力添えを願っております 如意が寵愛を得れば高家は娘娘のご恩を決して忘れません」 皇后は尽力すると約束して高坤を帰したが、途端に観音像を放り投げた。 しかし女官・容霜(ヨウソウ)が飛び出し、見事な軽功で観音像を受け止める。 皇后は無礼にも自分に催促してきたと怒り心頭だったが、この苛立ちは思い通りにならない皇太子への不満でもあった。 「近頃、太子とは日増しに距離が離れていくわ、従順なのはうわべだけよ! もし如意が子を授かれば高右相はその子を支持する、そうなれば皇后の地位さえ危うくなる…」 「娘娘、でしたら一刻も早く手を打たなければ…」 皇后は確かに意のままになる皇子が必要だと気づき、ついに危険な一手に出ると決めた。 皇后は李承鄞を夕餉に招くことにした。 時恩から報告を聞いた李承鄞は了承すると、それより女子を喜ばせるにはどうすればいいのかと聞く。 すると侍女たちと仲が良い時恩は女子とは自らの装いに心血を注ぐものだと話し、美しい衣や珍しい飾り、紅やおしろいを好むと教えた。 「殿下、なんと言っても唯品閣が一番です!」 小楓とアドゥは気晴らしに市中へ出た。 しかし李承鄞が尾行していることに気づき、アドゥを酒楼へ先に行かせて待ち伏せする。 李承鄞は小楓を見失って水路沿いを歩いていたが、急に小楓が姿を現した。 「ちょっと、何のつもり?」 「前回は役所で騒動になったとか?今日は何をしでかすかと思ってな」 「私はただ悪人を懲らしめただけよ?! 私とアドゥで詐欺師を3回、小悪党を2回、泥棒を4回?…5回はやっつけた それくらいかしら?」 「それくらいって…で、なぜ太子妃の身分を隠すのだ?」 「あなたのためよ?太子妃が街で喧嘩していると公になれば、太子の面目が丸潰れでしょう?」 「ぷっ、ならば君に礼を言わねばな…付いて来い」 李承鄞は小楓を連れて唯品閣にやって来た。 そこで小楓が商品を見ている間に店主の小唯を呼び、こっそり手付金を渡して服の仕立てを頼む。 「あ、それからこれと水色の花柄の衣も頼む」 「分かりました、公子、ぁ…でも寸法は?」 「寸法か…」 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.01.04 00:20:05
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