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カテゴリ:2010年W杯ダイアリズム
6月24日グループE第3戦@ロイヤル・バフォケン(ルステンブルク) 27,967人(73%)
デンマーク代表 1-3 日本代表 【得点者】 前半17分 本田圭佑(CSKAモスクワ) 30分 遠藤保仁(ガンバ大阪) 後半36分 ヨンダール・トマソン(フェイエノールト) 42分 岡崎慎司(清水エスパルス) ワールドカップの開幕前、浦和レッズの原口元気と話す機会に恵まれた。サンフレッチェから電撃移籍した柏木陽介にポジションを奪われ、今年は途中出場のゲームが目立つ。しかし19歳の彼が、今後のレッズを背負う期待の若手株であることに疑いの余地はあるまい。 意地悪を意図したわけではないのだが、こんな質問を投げかけてみた。 「今回のワールド杯でブレイクする候補のひとりとして、デンマークのニクラス・ベントナーの名があがってます。元気は次のブラジル大会の前年に22歳になるわけだけど、いま同じ年齢のベントナーが注目されていることをどう思いますか」 彼の返事は「…………?」だった。筆者は「……ですが?」で終わるような、相手に下駄を預けた、漠然とした質問の仕方を好まない。かなり具体的に質問したつもりだったのだが、レスポンスを返してくれたのは見るに見かねたクラブ関係者だった。 「高卒だから」とか「まだ19歳だから」では、すませてほしくない。ジャーナリストからの質問に対しては、自分の頭で考えた回答を導き出してほしいと願う。将来、どこの国でプレーしようとも、求められるのはひとりの大人としての姿勢だろう。大人と子どもの違いは何か。それは「責任の有無」、すなわちインディペンデントになれるかどうかだからだ。 次のアジア予選では、ロンドン五輪世代の元気も代表候補のひとりに入って不思議ではない年齢だ。そのときにベントナーのように、世界のクラブから注目されるような選手になれているのかどうか。あるいは旋風を巻き起こしているチリのアレクシス・サンチェスのように、自分の頭で考えた強烈なプレーを引き出すことができるのかどうか。ちなみにサンチェスは、まだ20歳なのだ。 この日はリオネル・メッシ23歳の誕生日であるとともに、俊輔のバースデーでもあった。なぜ覚えているかというと、筆者の誕生日でもあるからだ。 だが当然のことながら、先発メンバーに変わりはなく、イレブンには連戦の疲れが残っていたようだ。勝利を手にしたほうが予選突破という大一番で、序盤の日本はデンマークのパス回しとスピードになかなかついていけなかった。 しかし北欧勢をはじめとする長身チームとの対戦は、それほど相性が悪くない。たとえば加茂周時代の95年、ノッティンガムで行なわれたアンブロ杯で引き分けたスウェーデンには、翌96年のカールスバーグ杯でも90分間ドローに終わっている(=PK戦で4-5)。 デンマークとは71年、コペンハーゲンで行なわれたテストマッチで岡野俊一郎率いる日本が2-3と惜敗した。長身選手が多い彼らは、そのあまりもの高さから小兵でスピードのある日本の攻撃陣をつかまえきれないのである。そして日本には「引き分け以上で決勝トーナメント進出」が決まるというアドバンテージがあったが、デンマークは「勝たなければ次に進めない」という切迫感がある。。この現実が、両チームの選手の真理にに微妙な影を落としていたことは否めないだろう。 オランダは日本最大の武器であるフリーキックを与えまいと、自陣バイタルエリアで慎重なプレーに配慮していたように見えた。しかしデンマークはGKトーマス・ソーレンセンを筆頭に190cm台の選手を数名擁する。ストッパーのダニエル・アッガー(=リバプール/25歳)が190cm、彼と組むペル・クロドルップ(=フィオレンティーナ/30歳)はベントナーと同じ194cm、後半10分に投入されたセーレン・ラルセン(=デュイス・ブルク/28歳)も193cmといった具合である。体重85kg前後の肉体を引きずりながら小兵を止めようとする彼らにも次第に疲労が見えはじめ、武器であるはずの長い足が危険な位置でのファウルを誘うのだった。 前半17分の本田の無回転フリーキックは、彼が得意とするペナルティエリアの右から放たれたものだ。同じく30分のヤットのフリーキックも、得点率の高いゴール正面の位置からカーブを描きながらゴールに吸い込まれたものだ。展開のなかからの決定力に欠く日本にとって、これらふたつのゴールは貴重な「ボーナスポイント」だったともいえる。デンマークには変化球をもったキッカーがいなかったことも幸運だった。レフェリーの判定は一見デンマーク寄りだったが、じつは運を味方につけたのは日本だったのである。 後半はデンマークのパス回しにもすっかり慣れてきた日本だったが34分、エリア内でのハセのプレーがアッガーに対するプッシングと判断され、PKを奪われてしまう。永嗣の驚くべき好セーブで一度は阻んだものの、キッカーのトマソンが跳ね返ったボールをそのまま押し込んで1点差に詰め寄った。 日本はグループ予選を1位突破すれば、やはり長身選手を多く抱えるグループF2位・スロバキアと決勝トーナメントで当たることになる。逆に2位突破となると、堅牢な守備を誇るパラグァイとの対戦だ。スロバキアのほうが組みしやすいのは明白だったが、飛び道具しかない日本に多くを期待するには無理があった。 しかし後半43分、なんとしても同点を狙うデンマークの守備の枚数が少なくなったところで、本田がキープしてひとりかわす。直後GKの詰めによってシュートコースを失ったと見るや、後方から駆け上がってきたオカに回してとどめの3点目を加えたのだった。ロスタイムに入って残り1分、ペナルティエリア内で犯したハセのハンドリングが見逃されたのも日本には幸運だったといえるだろう。 さて、ベスト8進出をかけた次戦は、いよいよパラグァイである。イタリアを予選から蹴落としたスロバキアを0-2で破ったイヤな相手だ。しかも南米予選ではホームでブラジルとアルゼンチンの2強を破り、一時は予選2位につけていた。ロングフィードを得意とするビクトール・カセレスが累積で出場停止となるはずだが、ホナタン・サンタナ(=ボルフスブルク/28歳)やエドガル・バレット(=アタランタ/25歳)が彼の穴を埋めるだろう。決戦は29日のプレトリア、日本時間2300である。カメルーン戦で手繰り寄せた日本の幸運は、このままパラグアイ戦でも続くのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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李さんは現地で取材されているんですか?
帰国してどこかの新聞や雑誌にレポートを発表される予定は? 教えてください。 (2010.07.05 06:12:49) |