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カテゴリ:小説
太陽が高い。
とても眩しい。 ファミレスの窓から見える今日の空は、突き抜けるほどの蒼さ。 いい天気。 とても長い間、声もなく向かい合ったままの僕たち。 両手で胸の前に包むようにしていたマグカップを、君がテーブルに置いたときに。 君のこころが立ち去ってしまうのが見えた。 「ごめん ごめんね……ごめんなさい」 ほかに何が言えるというのだろう。 もう僕には、言うべきことも 言いたいことも見つけることはできなかった。 さよなら などと言って別れることなど、実際にあるのだろうか。 いつか今日の空の蒼さが、この胸の隙間に染み渡ってしまったら 僕はたった今のことを忘れてしまえるだろうか。 結局。 君が先に無言で席を立って行ってしまうと、僕はもう どこへも行けなくなってしまった。 もう行くべき場所など ナクナッテシマッタノダカラ。 店のスピーカーから聞こえる歌は。 「こんな晴れた日に……」 と歌い続けていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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