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カテゴリ:自然・ネイチャーのおはなし
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小出 大部分の放射性物質はきのこ雲に巻き上げられて、成層圏に入れられました。ごく少ない割合の放射性物質は「黒い雨」に洗われて広島周辺に降り積もりました。 広島原爆も含め、その後連綿と続いた大気圏内核実験の放射能は、もちろん周辺に降った分もありますが、大部分は成層圏に入り、その後ゆっくりと地球の表面に降ってきています。 問4 エネルギーを大量に使う国がエネルギーを少ししか使わない国に与えるには、どうすればよいでしょうか? 小出 ご質問のうち初めの方のご質問は大変政治的な問題で、一介の原子力の専門家である私には手に余ります。しかし、今現在エネルギーを使えていない国々は、今後少しずつでもエネルギー消費量を増価させてくるでしょう。そして、「先進国」と自分を呼んでいる国々が同時に自国のエネルギー消費をこれまで通りに増加させてしまうのであれば、地球の生命環境は破壊されます。今、世界平均以上のエネルギーを使っている国々が自らのエネルギー消費を減らし、これまで蓄積してきた経験を、エネルギー不足に苦しむ国々に伝え、さらに両者が現在の世界平均のエネルギー消費量程度になれるのであれば、地球の生命環境をこれ以上破壊せずに済むかもしれません。 問5 トリウム熔融塩炉の技術的難点は? 小出 トリウム熔融塩増殖炉の技術的難点は数え上げればきりがありません。シンポジウムでも発言しましたが、天然にある核分裂性物質はウラン235だけです。そして冷却剤とし一番優れている物質は水です。だからこそ、たくさん構想された原子炉のうちで軽水炉が生き延びました。しかしその軽水炉ですら、経済性も安全性もありませんでした。トリウム熔融塩炉がこれまで開発されてこなかった理由には、シンポジウムで森中さんが強調したように、核兵器材料であるプルトニウムを生まないということも一つの理由にあったかもしれません。しかし、それ以上に原理的に技術的な妥当性がないからです。 燃料を熔融塩にして循環させようとすれば、配管などの腐食が大問題になるでしょうし、何より、放射性物質の日常的な管理の難しさは想像に余ります。大きな事故が起きなくても、日常的な運転管理に多大な被曝が伴うでしょうし、少しの漏えいがあっても、現場に近づくことすらできません。 問6 エネルギーを産み出す技術として昔から核融合が研究されていますが、それは期待できないのでしょうか? 小出 現在の原子力発電で使っている軽水炉の燃料はウラン235です。地球上のウラン資源はそれほど多くなく、ウラン235だけを使うのであれば、石油に比べれば数分の一、石炭に比べれば数十分の一という貧弱な資源です。それでは、到底未来のエネルギー源にはなりません。そのため、人工的にプルトニウム239を作り出して、それを燃料に使うというプルトニウムサイクルが構想されましたが、一向に実現できませんでした。また、仮にそれが実現できたとしても、資源量は60倍に増えるだけで、せいぜい石炭に匹敵する資源にしかなりません。そのため、ウランやプルトニウムの核分裂反応を利用する技術は核融合炉が実現するまでのつなぎの技術だと言われてきました。 核分裂反応は原爆が使った反応ですし、核融合反応は水爆が使った技術で、太陽で定常的に起きている反応です。つまり、核融合炉とは地上に太陽を生み出す技術です。1955年に第1回原子力平和利用国際会議が開かれた時、その議長を務めていたインドのバーバさんは、核融合炉は20年以内に実現すると予言しました。しかし、その後10年たつと、実現までの年数が倍に増えるといわれるように、実現の可能性はどんどん遠のき、今では21世紀中に実現できると考えている専門家はだれ一人いないはずです。私自身は、この技術は決して実現できないと思いますし、させてもいけないと思います。 核融合炉の旗を振ってきた人たちは、核分裂炉は核分裂生成物を生み出すのでダーティーだが、核融合反応では核分裂生成物が生まれないので、クリーンだと宣伝してきました。しかし、かろうじて実現するかもしれないと期待されている核融合炉の燃料はトリチウムという放射性物質です。反応を起こす前から放射性物質を取り扱うことになりますし、このトリチウムは三重水素とも呼ばれるように水素です。水素の閉じ込めは大変難しく、必ず一部は漏れてきます。それは重大な環境汚染を引き起こすでしょう。 問7 先進国の消費量と同じ程度のエネルギーを世界中が使うと地球は滅びてしまうというお話でした。その具体的な理由は? 小出 すでに、地球の生命環境は散々に痛めつけられてきました。日本で数多く起きて来た公 害もそうですし、ヨーロッパでの酸性雨、森林破壊、地球温暖化など、枚挙にいとまがあ りません。そして、産業革命以降人類が急激にエネルギー消費を拡大してきたことと軌を 一にして、たくさんの生物種が絶滅に追い込まれています。現在の「先進国」並みのレベ ルまで他の国々がエネルギー消費を引き上げようとすれば、現在の人類全体の消費量は2 倍をはるかに超えてしまうことになります。地球の生命環境は多数の生物の絶妙なバラン スの上に成り立っており、それに伴ってさらに多数の生物種が絶滅に追い込まれ、やがて 人類自身も絶滅するでしょう。 問8 石炭、天然ガスなどのエネルギーで現在は十分に足りるという認識になりましたが、尽き たその先をどうお考えですか? 小出 再生不能エネルギー資源はいずれ枯渇します。現在の軽水炉が使っているウランは簡単に枯渇しますし、石油にしても石炭にしてもいずれは枯渇します。天然ガス、オイル・シュール、シェールガス、タール・サンドも生成不能である限りいずれ枯渇します。メタハイドレートにしても、今後開発が進むかもしれませんが、これもまた枯渇することは必然です。 そうであれば、再生可能エネルギーに頼る以外にありません。地球にとっての再生可能エネルギーは太陽です。石油、石炭などの再生不能エネルギー資源はすべて、地球が46億年の歴史の中で生成し、蓄えてきたものです。一方、太陽は、再生エネルギー資源の究極埋蔵量の合計の 10 倍以上のエネルギーを 1 年毎に地球にくれています。そのことは第69回日本生物地理学会年次大会、講演要旨集の p.22 に図を示しました。風力、波力、潮力なども太陽エネルギーが変換されたもので、それらを含め、太陽熱、太陽光などの利用にいずれは縋る以外にありません。 ただし、例えば、日本の場合、37万8000平方キロメートルという国土に太陽が届けてくれているエネルギーの0.6%に相当するエネルギーを人為的に使っています。風、波、空気の対流など、私たちが自然現象と呼ぶ現象を引き起こすために使われている太陽エネルギーは全入射エネルギーの0.2%です。私たち日本人は、すでに自然現象を引き起こすために使われている太陽エネルギーの3倍にも相当するエネルギーを人為的に使っていることになり、これで自然環境が破壊されなければ、むしろ不思議です。そして、例えば、太陽光発電で現在のエネルギーをすべて賄おうとすれば、太陽光発電の効率は約1割ですので、日本の国土の6%に太陽電池パネルを敷き詰めることになります。そんなことをすれ ば、そのことでまた環境は破滅するでしょう。そうであれば、一番大切なことはエネルギ ー消費を減らすことです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年05月18日 11時33分13秒
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