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マニュアルは誰のものか?
「自分たちがマニュアルをつくっている、という意識を持つべきだ」 サービス業では、「マニュアル」の是非というのは、結構微妙な問題だ。 サービスにおいて「マニュアルどおり」というのは、 ファーストフードのチェーンでの接客とか、メカニカルで心がなく、 味気ないものを想像するだろう。 でも僕は、結論から言ってしまうと、べーシックな部分のマニュアルは 絶対に必要だと思う。 「システム」として動かすべきものは、マニュアル化するべき、 ということだ。 問題は、そのマニュアルを「どう見るか」だ。 リッツにもマニュアルは存在する。 それは「リッツでは、こうです」という指針だ。 前述のクレドカードも、リッツの方向性を示した、言ってみれば マニュアルのひとつ。 それとは別に、「リッツのスタッフは、こうするものだ」という マニュアルもある。 たとえば技術の面でいうと、カットについても「ボブに切る」 とは言っても、人それぞれのボブの切り方がある。 みんながバラバラに切っていたら、教わるアシスタントは困っちゃうよね。 ある人は、 「ボブってのは、ノンテンションで、こうやってパツーンと切るんだよ」 で、またある人は、 「だめだよ。 引っばって、ちょっとハサミ入れて、イングラにして切らなきゃ」 なんて言う。 仕方ないよね、人それぞれバックボーンが全然違うんだから。 でも、いろんなことを言われちゃうと、もう教わる側はそれだけで どうしていいかわからなくなる。 だから、 「リッツのボブの切り方はこうですよ」 という、ひとつのルールをつくるのは必要。 また、お客様への挨拶とか、そういう当たり前のことに関しても、 マニュアル化されていたほうがいい。 要するに、組織の中の共通言語を明確にしておく、ということだ。 共通言語があったほうが伝わることって、いっぱいあるものなんだ。 でも、よく会社であるような、朝礼でみんなでマニュアルを声に出して 「唱和」する必要はない。 社長「おはようございます!」 社員「おはようございます!」 社長「本日もがんばります!」 社員「本日もがんばります!」 みたいなやつね。 みんなで唱和なんかしたら、だめだ。 リッツでもクレドカードを読み上げたりするけど、 それは「みんなで唱和」ではない。 単なる確認作業。 なぜ唱和をしたらだめなのか? それは、考えるヒマを与えていないからだ。 べーシックのマニュアルをつくったら、それをそのままに しておいてはいけない。 スタッフにとって、マニュアルを「自分たちでつくりあげたもの」 に見せなければいけない、ということだ。 べーシックな部分、ということは、ひとつの考え方のべース。 そのべースに対して、誰もが考え、改善していく・・・ モノを言うシステムをつくっていかなければいけない。 リッツでも、マニュアルに対するスタッフからの意見は、大歓迎! たとえば2年前につくったマニュアルがあったら、それが古くて、 現在に当てはまらないことも書かれているのは、当たり前。 ならば、それを変えていくのは誰か・・・という話だよね。 クレドの場合と同じく、マニュアルについても各店からの意見が 毎日メールで事務所に集まるシステムになっている。 会社の規模が社員15人くらいまでだったら、こういうシステムは かえってギクシャクしてしまうかもしれない。 通常の、面と向かって話すコミュニケーションが、全社員と簡単に できるからね。 でも、現在リッツは80人。 考えの共有化が絶対に必要なんだ。 だから、マニュアル化の怖さっていうのは、 「みんながマニュアルどおりにやって、オリジナリティがなくなる」 ということより、 「みんながマニュアルについて考えなくなった」 時の怖さだと思う。 オリジナリティがなくなる、というより、 オリジナリティのつくり方を忘れる、ということだね。 オリジナリティのつくり方を知らなかったら、いつまでたっても 「与えられるものを待つ」だけの人間になってしまう。 これではとても「記憶に残るサービス」なんてできないよね。 もちろん、マニュアルの基となる最初のものは、トップである僕がつくる。 後はそれをスタッフが全員で進化させていっている。 「そんなに上手くいくわけないじゃないか」って思う? 「難しいことだよ・・・」って思う? ところが、全然難しくない! 何か新しいことを始めたら、最初は反感があって当然。 あってオッケー。 でも、トップの人間は、そこで言い通さなくちゃいけない。 絶対的な権限を持って言い通す。 そう、まずはトップダウン、「上から下への意見」だ。 トップダウンから始めないと、組織が飽和しちゃう。 途中で意見がこんがらがっちゃうんだね。 浸透するまでは徹底してトップダウン。 浸透した後は、徹底してボトムアップ、「下から上への意見」だ。 「トップダウン型よりも、ボトムアップ型のほうがいい」 と単純に言う人がいるけど、僕はそうは思わない。 まず徹底したトップダウンがなければ、ボトムアップは始まらない。 ボトムアップができるということは、スタッフがそのレベルに育って はじめてできること。 まずトップダウンでスタッフの意識をそこまで持ってくる。 気づかせる。 そこからボトムアップだ。 順番を間違えなければ、会社全体に新しいシステムを導入することは、 難しいことじゃない。 マニュアルについても、みんなが考えるというシステムができたことは、 僕たちにとってすごい自信になっているんだ。 (「すべては記憶に残るサービスのために」金井豊著より) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004.07.09 00:44:53
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