猫も食わない

「タイは住みやすいですか？」

その質問をされたら、私はなんと答えるだろう。

もし日本人に聞かれたのなら、

「いやー、まあ他の国に住んだことないのでなんともいえませんが、

イライラすることはけっこうありますよね。あはは。」と答えるだろう。

もしタイ人に

「ユー　ムアングタイ　サバーイ　マイ？（タイに住むの快適？）」

と聞かれたのなら、

私はまあたいてい

「サバーイ　カー。（快適です）」

と人工的な笑みとともに一言で返している。

もちろん、前者が本音、後者はお世辞の形をした単なる遮断。

いろいろ説明するのは面倒だし、

第一住んでいる国の人にそこの不満や悪口を言うのは失礼だと思って

「タイは住みやすいですよ。」とタイ人に言うと、

タイ人はたいてい

「でしょー？！タイはいい国でしょ。

物価は安いし、食べ物はおいしいし、タイ人はやさしいし。

まあちょっと暑いけどね。

日本は寒いし、物価も高いんでしょ？

やっぱりタイに住むのがいいわよ。

寒い国の人はみんなタイが好きでタイに来るわ」

的なことを何の疑いもない無垢な目をして言ってくる。

私は

「いやー、日本は寒いもあるし暑いもあるし、

その間の気候もあるし、

四季があってその日その日で空気の香りが違って、

空の高さ、風の色、すべてが常に移ろう、

寒い冬があるから暖かい春の喜びを、

木の葉が落ちるから新芽の緑のまぶしさを、

いちいち感じることができる非常に魅力的な国ですよ。」

と日本の魅力を語ってみたくなるのだが、

「タイは物価は安いとは言っても、生活の便利さはさることながら

安全保障、治安、基本的人権の確保、健康管理、といった人の生きる基幹の部分もすべてあからさまに

“地獄の沙汰も金とコネ次第”

を地で行く国だから、金もコネも持っていない外国人の私は常に底知れぬ恐怖と隣り合わせで暮らしていますよ。」

と不安で心細い気持ちを訴えてみたくもなるのだが、

そんなことタイ人に言ってもまったく関心なさそうなので言わない。

以前、タイ人対象の

“あなたは生まれ変わってもタイ人になりたいですか？”というアンケート結果のニュースを日本語情報誌で読んだことがある。

それには、およそ9割のタイ人が生まれ変わってもまたタイ人に生まれたい、と答えたそうな。

へーそりゃすばらしい。

でも可笑しいのが、その中で

“次回生まれ変わったら外国人としてタイで暮らしたい”という意見があったということ。

これ、意味わかります？

多くのタイ人にとって、外国人＝お金持ち。

お金をたくさん持って、このタイという国の・・・

ん？なんだ？自由さを？混沌さを？快適さを？？

なんだかわからないけどこのタイにある何かを謳歌したい、ということなんじゃないかと私は推測します。

でもそれって・・・タイは好きだけど、

タイ人ということに誇りを持っているというわけではないってことなのね？！

あはは、タイ人はそんなこと深く考えないんだっけ？！

でもまあ、その意見こそがなんかものすごーーーーーーくタイ人的な発想。

こういうこと考えるタイ人のキミが外国人（ここでは欧米人や日本人のことを言っていると思われる）になった時点で

キミの脳みその中にはもっと別の思考回路が構築され、

タイという国はサバーイだけの国じゃなくなると思うんだけどな！

そこで、あなたは？

あなたは生まれ変わったら何人になりたいですか？と聞かれれば、 

私は生まれ変わったらまた日本人でもいいと思いますね。

今、日本人として生きている私はやっぱり日本を愛していると思うし。

それは、日本の花鳥風月であり、日本人の築き上げてきた日本の文化、

それが今その質問を受けた私の血であり、肉。

他の国の人になるということは考えられない。

でも、他の国の人に生まれれば、きっと私はまたその国とその国の文化を愛すると思いますよ。

とういかもうそれは私じゃないということなんだけど。

てことはやっぱりこの質問がちょっと変？

「生まれ変わっても・・・」なんて聞かないで、

「今、あなたはこの国の国民で幸せだと思っていますか？」って聞けばいいんだ。

あなたは日本人でよかったと思いますか？→YES

あなたにとってタイは住みやすいところですか？→NO

そりゃそうだよね、よそ様の国だ。

やっぱり、自分の国に帰るべきなのかなー。。。