小出裕章先生　たね蒔きジャーナルの発言記録

　永岡です、ラジオフォーラム、今週はジャーナリストの石丸次郎さんの司会で放送されました。三角山放送局で、ラジオフォーラムは毎回小出先生のお話とかすごいことが聞けるとのコメントがありました。
　今週のテーマは特定秘密保護法案のこと、これに詳しくて、そして反対している日本弁護士連盟の太田健義弁護士のお話がありました。臨時国会で注目され、私たちの生活に大きな影響があり、石丸さん記者で取材をして、国の隠そうとしていることを暴露すること、過去の記録に闇を当てることもあり、そういう取材にもこの法律で制約が出る危険性があります。
　太田さん、最初にこの法律はちょっとではなくかなりヤバイと言われました。
　安倍政権が提出した法案、理由は安全保障の情報で保護する体制を取るために特定秘密を指定すると言うのですが、太田さん、目的は安全保障であるのに、秘密の範囲が広すぎて、太田さんたち弁護士会は、政府が隠したい情報が隠されるためのものとして反対しているのです。安保の秘密を守る、アメリカとの関係を良くするためと言うのですが、実際はアメリカから秘密を守れと言われ、しかし内容は問題もあり、メディアでも批判されるのは、よく使われる標語が｢何が秘密か、それが秘密です｣であり、大臣が秘密を指定し、指定されたら、大枠（防衛の何を指定したか）すら分からず、秘密は秘密とされ、何が隠されているがチェックできない。官僚が決めて大臣秘密と指定すると、隠したいものは隠せる。裁判所、外部の機関のチェックが出来ず、隠した事実すら具体化しない。国会議員のチェックも出来ない。主権者の選んだ国会議員に秘密を提供できるものの、義務ではなく、アクセス不可、政府の隠したい放題なのです。
　今も情報公開制度があり、一応出すが黒塗りであり、この法がなくても隠されるのに、弁護士会も日本では情報公開が機能していないとして、秘密を増やすのではなく（今でも多過ぎる）、もっと出すべきなのです。市民生活への影響は、原発情報が分かりやすく、事故情報は秘密の対象でないと言うものの、しかし原発は核物質警備、核施設は秘密対象＝耐震基準を満たしていないとか、危険なところにあるとかは秘密になり、原発が活断層の上にあることも秘密になるのです。
　公務員に秘密保持の義務があるだけでなく、外交、防衛だけでなく、国に仕事を振られている業者も指定されるのです。民間で仕事をしても秘密取り扱い業者になり、身元調査（お金を借りているか、精神疾患経歴、家族構成（家族の思想動向、子供が大学でデモに参加など））を国がやるのです。なので、身内が反戦活動をすると、情報活動の担当から外されるのです。実質的に思想調査になり、その上どう調べるかも秘密になり、どういう情報を調べたかも秘密になるのです。
　罰則が厳しく、昔から秘密法制があり、10年の懲役＋1000万円の罰金は重い。もらすことに神経質になり、自衛隊ＯＢに取材しても、罰せられるとしゃべらなくなる、それが蔓延することが心配されるのです。

　小出裕章ジャーナル、小出先生の今週のお話。今週のテーマは福島4号機の燃料棒取り出しで、11月からやるのですが、廃炉作業の一環で、3･11事故時の4号機、定期検査で止まっており、炉心には燃料はなく、使用済み燃料プールにある状態で事故になり、このプールの中に原子炉の中の燃料が大量にあった状態で事故になり、運転していないのに4号機でも爆発し、建屋が大規模に破壊された。特殊な爆発で、最上階（オペレーションフロア、1，3号機はここのみ爆発）の爆発だけでなく、その下も爆発で吹き飛んだ。そこに使用済み燃料プールがあり、プールが宙吊りで、東電も危険性にすぐに気づき、くずれないように下から鋼鉄の柱を入れてコンクリートで固めたが、被曝環境下で工事自身しっかり出来ているか不安。爆発が起きて、支えを立てる下の階も損傷し、支えは半分しかないのです。残りの半分は支えられず宙吊り（泣）。使用済み燃料プールにある放射能は、小出先生の計算だとセシウム137換算で広島原爆の14000発！分がそこにあるのです。燃料棒集合体は1533体あり、1体の燃料棒集合体は、8行8列のもの、1本は直径1cm、長さ4mの細長いもの。これを取り出して50m離れた共用プールに移すが、この作業がいるのは大きな余震でこのプールが壊れて水がなくなると燃料が融けて大量の放射能が出るので、少しでも安全なところに一刻も早く移さないといけない。すぐにでもやらないといけないが、使用済み燃料はプールから空気中に出すと回りの人が死ぬほどのもの放射能の塊で、簡単にプールから出せない（泣）。出すには水の中にキャスクという鋼鉄と鉛の100トンの容器を入れて、そこに燃料を入れて、約20体入れて蓋をしてからからそれを取り出すが、巨大なクレーンがいるのにクレーンは爆発で壊れ、東電は建屋を撤去して新しい巨大なクレーンを設置し、今月ようやく作業に取り掛かれるのです。
　この作業が順調に行くかは小出先生も心配で、プール内に瓦礫が大量にあり、取り除いても瓦礫がくずれて燃料集合体そのものが変形していたらうまく取り出せない、キャスクに入れられない。やってみるしかなく、被曝環境下で、困難なのです（泣）。
　この作業は4号機だけでなく、1～3号機でもやらないといけない。4号機は放射能汚染が比較的少なく作業員もプールに近づけたが、1～3号機は汚染がひどく作業員が行けないので、これからの作業が不安なのです。今週の小出先生のお話は以上でした。なお、ラジオフォーラムのＨＰには未放送分も合わせた小出先生とのやり取りの全文が掲載されています。
http://www.rafjp.org/koidejournal/no44/

　音楽、スティングのフラジャイルがかけられました。
　
　太田さんの後半のお話、報道の自由、知る権利であり、石丸さんも記者で、取材への影響を懸念し、公明党は取材の自由を配慮せよとしており、これでは不十分で、こういう文言を入れないといけないのが問題＝この法律は報道、知る自由を侵害することを表しているのです。出版、公益を図り、不当な取材でないといいというのはふざけたもので、これを決めるのは処罰する側＝政府、警察、検察が決めるもので、不当な方法と決めるのは政府。何が不当か線引きできず、いくらでも処罰できるあいまいなのであり知る権利を侵害するものです。取材、報道の自由を縛り、石丸さん、事例を想像し、アジアプレスで紛争地帯に取材し、自衛隊も行くが、武力衝突をもし起こして地元の住民を殺したら、それを報じることは特定秘密に指定されると、取材が法律違反になるのです。太田さん、共謀、教唆（そそのかす）、扇動（あおる）が俎上になり、ジャーナリストが秘密を教えろというのすら検挙される。北朝鮮と日本の交渉で、例えば裏金があったとして取材し知らせるのは、取材対象からそそのかされたといわれると捕まるのです。取材方法の是非の線引きがあいまい、この情報が漏れたら危ないと思われるとやられる。秘密保護法の罰則が厳しく、取材対象の外交、防衛（民間も含む）の口が重くなり、不正を知っても刑罰が怖くて告発も出来なくなる。太田さん、知る権利、蛇口（情報源）が閉められたら水（情報）は流れない、公務員が公表すべきとしても刑罰怖さに公表できないのです。
　また、記者と報道機関は特別というのは石丸さん本末転倒と言われ、国民の知る権利からしておかしい。記者でない人も取材する（市民運動家、弁護士、オンブズマン）際に、こういう人も処罰対象になり、市民関係で基地、原発を問題にして秘密と知って情報を取ったら処罰されるのです。
　尖閣漁船衝突のビデオの流出について太田さん、政権により言うことが異なり、民主党政権では秘密にすべきと言うのに自民は異なり、政権により異なる＝隠したいものを隠す政府の意図を感じるのです。秘密を持つのは強権国家の特徴で、北朝鮮でも町の裏通りを写すのも秘密で罰せられ、成熟した民主主義国家は公開が前提、日本の民主主義の度合いが試されるのです。太田さん、日本弁護士連合会、大阪弁護士会も秘密保護法に反対しており、こんな法律が出来たら市民の知るべき情報は隠し放題、このラジオを聞いている人は反対する声を上げ国会成立を阻止してほしいと言われました。以上、太田さんのお話でした。

　最後に、ドキュメンタリー映画「笹の墓標」の影山あさ子監督のお話がありました。戦前、ダムや飛行場建設のために北海道に動員された朝鮮人は10～15万人、故国に帰れず北海道で亡くなり、その遺骨発掘を日本人、在日、韓国の方が15年間されています。これを扱った映画であり、影山さん、ソウルからのお電話です。
　9時間にも及ぶもので、影山さん、遺骨収集に参加され、影山さんも撮影に回られ、遺骨発掘、韓国、在日の方も来られて、国際交流の一つであり、始まると準備では想像のつかない爆発的なものになり、97年には韓国との行き来はなく、出会いの勢いは大変なものであったのです。ベルリンの壁の崩壊を目の当たりにしたようなものなのです、そこから映画になりました。
　過去を見つめる重い作業で、それを撮られたものであり、お互い理解を深める中、葛藤は常に抱えており、共通する目的で集まり、発掘した遺骨を遺族に返す、共同の目的を持ち活動する、ぶつかりつつ、互いを認め合受け入れるものであり、遺骨を目の前にして、歴史認識により、理解、関係を深めるのです。この15年間、日本と韓国、北海道に強制的に連れて行かれた人のこと、映画で伝えることは、影山さん、結果が分かっているものではなく、掘って初めて分かる、見る人にも感じて欲しい、その後、広がる出来事も経験してもらい、伝わるものがあるのです。日本と韓国、隣国の若者が共同作業するのは大事で、しかし竹島、歴史認識で日韓関係は冷え切っており、影山さん、起こった出来事に比べて、我々の出来ることは小さく15年一緒にやり、一緒に生きたいとみんなが願い、竹島のことなどに左右されない関係を持つのが、未来のためだと言われました。国家の関係は変えるべきだが、市民も歴史に向かい合い、人と出会うべきと言われました。日本と韓国は永遠のお隣さんであり、あいさつはちゃんとすべきであり、楽しい結末がやってくるものなのです。映画の上映日程、大阪のシネ・ヌーヴォで11月22日まで、12月は東京の渋谷でゲストトークあり、12月8日広島平和映画祭でもやります。
　映画のブログは、http://sasanobohyo.blogspot.jp/です。
以上、映画、笹の墓標のお話でした。

　特定秘密保護法、この法律が危ういのは秘密が何か分からないことであり、国は外交、防衛上の秘密を持つが、それを開示するルールを厳格に守られるべきであり、何が秘密か分からない制度を作らせて良いのか、なのです。今週のラジオフォーラムでした。