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カテゴリ:ドイツ職業訓練システム
今回は、ドイツで職人(金銀細工師)になるまでのみちを追ってみようと思う。
まず、ドイツでは、職人になるみちは二つ。 1つめは、ドイツのデュアルシステムに則った職業訓練*をうけ、職人資格試験に合格するコース。(デュアルシステム参照) *金銀細工師の修業期間は他の職種より長く、3年半。 2つめは、専門学校**(公立)に通って卒業試験に合格するコース、である。 (公認の専門学校の卒業証明は、職人資格と同等とみなされる) **学校で異なり、大体2~3年半。 1つめの、デュアルシステム、というのは、職業訓練と職業学校の二本立てからなり、まずは、見習い生(弟子)を受け入れている会社やマイスター経営のお店に、就職しなければいけない。 この見習い、という立場は、個人と会社間の契約書上だけではなく、手工業会議所にも登録され、社会保証も(健康保険等)きちんとおり、いわゆる、「丁稚奉公」のようなものではなく、僅かではあるが月給もでるわけだが、見習い生は、一日7~8時間労働をこなしながら修業に励み、年間にきめられた期間を職業学校に通う。(週1か、ブロック制) このドイツ特有のデュアルシステムでは、学校だけの授業ではなく、実際に職場で働きながら(生きた技術&ノウハウを)学ぶ、という点で極めて実用的であり、職人の養成には大変優れているシステム、だといえるかもしれない。 問題点としては、小さな企業への経済的負担が大きい事、修業先によってカリキュラムの内容が異なり、マイスターの技量、そして設備等の環境も影響し、最終的に養成される職人の技術面にかなりの差がでてしまう、ということだろうか。 そして、現状として一番の問題点は、ほとんど受け入れ先がない、ということ。 これは、もちろん上記した、経済的負担に大きく関係しているのだが、見習い希望者に対して、求人が圧倒的に少ない。 (私のところにも、問い合わせんの電話が殺到するのも、このせい) 残念ながらこの不景気のなか、この問題はなかなか解決しないであろうと思われる。注1 (大体、金銀細工師など、マイノリティーなわけだからそもそも数には限りがあるのだ) それでは、職人になりたくても、就職先がみつからなかった、として、2つめのみちをみてみよう。 ドイツには、いくつか金銀細工師養成の専門学校がある。 ミュンヘンから一番近いところでは、ノイガーブロンツという街に専門学校があるのだが、かなり人気があるようで(就職先が少ないから、必然的にそうなるのであろうが)倍率も高い。(入学試験有) 全日制の学校で、他のドイツのタイプの学校と同じく、最後に卒業試験に合格しなければ卒業出来ないし、成績が悪ければ退学になる。 (義務教育だと、退学ではなく、落第、留年だが) 学校でゆっくり時間をかけて技術が学べる事、仕事をしない分勉強する時間も多くとれる、など利点もあるが、私の周りでみるかぎり、専門学校卒業者は、デュアルシステム出身者に比べ職場での実践能力にかけるために、その後の就職の際にその点で懸念される傾向があるのは拒めない。 卒業後「研修生」としてもう少し経験をつんだほうが、その後の就職に有利ではあるようだ。 (しかし、学校出身者は、あまり普通の工房では使わないような技法を授業で習っていたりするので、興味深かったりする。) と、ここまでが、簡単な「2コース」の職人になるまでのみちのりであったが、この次は、教科や試験内容についてふれてみたいと思う。 つづく 注1 最近、日本人でこのドイツの職業養成システムでの修業を希望する方からの問い合わせが多いが、就職希望者が外国人、となると可能性はもっと低くなる。 なぜなら、ドイツ人の就職希望者が優先されるように、国で保証されているから。(これは、ドイツのドイツ人の為の職業訓練システムであるから仕方がないことである) 外国人が採用されるのは、ドイツ人の応募がなかった場合、外国人でなければいけない理由がその企業にあった場合、その外国人が人並み以上の才能を持っていた場合のみ、である。 それプラス、金銀細工師の就職先は小さな宝石店が多く、制作のみではなく接客をしなければいけないことが多い。 この場合、ドイツ語が流暢であることは必然的な条件である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年09月14日 05時21分01秒
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