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カテゴリ:書籍紹介
里見清一著「偽善の医療」(新潮新書)を読んだ久しぶりに書評を。 「偽善の医療」というタイトルに惹かれてパラパラ見てみると面白そうだったので買ってみた。 著者は肺がんを専門とする呼吸器内科の医師で腫瘍全般に詳しい。 また、一般に言われている医療の理想と現実を本音で書いていて面白い。 著者紹介:里見清一 臨床医。専門は呼吸器内科学・臨床腫瘍学。特に肺がんの診療に従事。東京大学医学部を卒業。日本癌学会・日本臨床腫瘍学会評議員。 目次
目次を見ただけでも面白そうな内容だと一目でわかる。 「普通に」紹介状を書いてもらうのが、一番当たりはずれが少ない。もし、紹介元が、紹介先に電話するとか、メールを送ったりしておく、ということを言ってくれたとしたら、もうそれ以上のことを手配する必要は全く無い。紹介元と先方との関係がしっかりしている何よりの証拠だから。 末期の患者さんでは、人工呼吸器を外すかどうかという議論は案外少ないもので、そもそも人工呼吸器を装着しないことが圧倒的に多い。 論理的に言うと、一旦つけたものを「あきらめて」外すのと、最初から「あきらめて」つけないのと、その意味で差は無い。むしろ、「一旦つけたものは外せない」のが原則になると、「助かるかもしれないものもつけなくなる」という風潮が蔓延することもありえる。これは杞憂ではなく、アメリカ呼吸器科学会でも指摘されているし、私もまわりでその類のことを見聞きしている。 「人間の死亡率は100%」ということを明らかに忘れておられる。最期はみんな、手の施しようのない状況になるのは当たり前で、問題になっているのはそういうときの話である。 自分が親を、配偶者を、子を、死なせる最終決定をしたということに平然としていられる人は少なかろう。そういうものにサインをさせる医者の感覚の方がよほど狂っていると思う。私は、医者はそのような決定の最終責任を負ってこそプロであると考えるが、これは「医者の傲慢」なのだろうか。 私は臨床医は、ちゃんと患者さんを診ているかどうかがすべてだと思っている。
面白かった箇所を抜き出すと切りがないのだが、現場で患者さんのことを最優先に頑張っておられる多くの医師の本音が集約されている一冊でした。
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Last updated
2010.09.12 10:06:09
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