正しい意味で身を呈して主人公を守った、エース捜査官瀧河信次郎サンのクライマックス。
逃げる木幡容疑者、追う桜木。インサートされるのは追跡の命に従った桜木が見えなくなっても、まだ自分が所轄や野次馬を引きつけたくない仕事の権化の瀧河。
いよいよ二枚目道は大詰めへ。
そもそも二枚目の条件とは何か、よく考えてみる。ただし、ここでは歌舞伎の札の順序に沿った話はしない。歌舞伎の『二枚目』とは優男を指す。瀧河信次郎サンは知力も胆力もある人物に描かれているので、これには当てはまらない。
実際に、このドラマにおける桐谷健太くんの札順は、確かに『二枚目』なのだが。
王道の二枚目は、打たれても打たれてもへこたれない男前でなくてはならない。わかりやすい例がヒーローものだ。
ヒロイックファンタジーも、戦隊ヒーローも、壮大なスペクタクルでおくるなんとやらのアクションムービーも、剣戟ヒーローも。みな二枚目の根幹は共通している。
実は二枚目にとって、『へこたれない』というところはミソではない。『打たれる』事こそが二枚目の王道である。苛め甲斐をみせるのが二枚目の本領であり、痛めつけられてこそ、光るのが二枚目。そして、最終的にはへこたれない。
二枚目を追求していくと、そこにいる究極の姿は強烈なマゾヒストだ。
じつに律儀に自分が容疑者追跡の妨げにならぬよう、事態終息までひとりで耐える気の二枚目は、腹に穴が空いているにもかかわらず身を屈めて時間の経過をひたすらに待つ。二枚目は存分に痛めつけられなくてはならないのだから。
設定上の瀧河サンの頭脳なら、あと何分放置されたら自分が死に至るのかくらいの事は、およそは予測できるだろうに。
映像はもちろん、桐谷健太くんの生身の味が出やすい右側面、右の横顔。
ラガー体型特有の側面のラインをよく知る衣裳は、桐谷健太くんの古い友人が選んだものなのか。7話、9話でもみられたが、屈みこむ体側のライン強調は彼の肉体的なアピール度を上げる。
それにしても、うら若き女性が主人公のテレビドラマで、どうしてこんなサブリミナル映像を使う流れになったのか。
主人公は清純でも、傍らの二枚目を徹底的に二枚目たらしめようとすると、どうしてもこうなる。
芝居そのもののリアリズムとは別の、この映像が生み出す効果は意図的なものの筈だ。
こんな映像は濡れ場と同じだ。
痛みに耐える顔と快感に耐える顔は共通。
瀧河信次郎サンの二枚目道も様々な意味で、ここに極まれり。
セオリー通りで何が悪いんだ、とばかりに成長物語は主人公を育て上げてみせた。
二枚目を徹底的に二枚目に仕上げた方法も、セオリーに忠実。
追尾シーンなどを『斬新』とアピールしたりしたドラマだったが、「絶対零度2」チームの仕事の仕方は存外、基本に忠実で地道なものだった。
感情移入に流されて流動的に芝居をすることなく、芝居のコントロールや気持ちの『見せ方』の探求に余念のない桐谷健太くんは、この芝居場にベストマッチングだったのだ。
そして、ついに事件解決をみて退いたエース瀧河。
そこそこ生意気に育ってくれた桜木泉に意外なほどぞんざいな口調で、まるで父親のように接する瀧河信次郎サンの最後の寄り映像は、右側からウンと近寄ったクローズアップ。
余韻を残す最後の表情は、怜悧な横顔よりも温もりのある生身の人物で。
番組序盤では他者を大きくを引き離し、ひとり道の先を行くようだった瀧河信次郎サンが、気づけば、最後は視聴者の傍らにいた。
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