列車消失
列車消失【電子書籍】[ 阿井渉介 ] なかなか大胆なトリックを使って列車を消失させてしまった。 さてそのトリックが実際可能かどうかはともかく、机の上で考えるだけすごいことだと私は思う。 そもそも客車7両中6番目の車両が消えてしまったというトリックなのだった。 それについては、古典的なトリックがすでに外国のミステリーで例示されていて、それに則って若い刑事が推理したのだが、6号車だけをいれる引込線がなくて不可能だということになったのだった。 さて本作は、ループ線と言うものを利用して、身代金の受け渡しやら、猟銃による殺人を試みるというもので、たしかにすごいトリックではあるけれど、いやそうであるからこそ、図を使うなどの工夫があっても良かったと思う。 それから、いきなり容疑者が出てくるのはいかがなものか。 要するに、本作は国鉄vs.JRに関わる問題なのだ。 JRになる段階で多くの人が首を切られた他、希望の通らない部署に移動させられることになって、不満が爆発したことは本当のことだったろう。 で、読み手は、どうやってこの6号車を消したのかとういことにずっと頭が行ってしまうのだった。 そして私は、例えばそもそも7両なかったんじゃないのかとか号数の付替、あるいは、当初とは違う順番に客車が並んだなどということを考えた。 このことは決して誤りではなかった。 そして最終盤、すごいクレーン車が登場して、終わる。 その前、トレーラー車に乗せるなどというトリックも紹介してくれたな。 なお、犯人の動機もしっかりしていると思う。 最初から身代金の受け渡し役にJR北海道の幹部職員を指定してくるあたりから、うむどうも、国鉄絡みだろうなという推理はできた。 まあそれにしてもトリックを作るのは難しい。 しかしミステリー文学は、トリックがあってなんぼのものだ。 だからトリック作りに作者たちには努力してほしいものだ。(2/19記)