紅蓮の毒
【中古】 紅蓮の毒 薬売り・辻村の探偵行 推理傑作集 / 日下 圭介 / 光文社 [文庫]【宅配便出荷】 8作の短編集。 越中富山の薬売り辻村が主人公だ。 薬売りの話だけに、毒を盛るというトリックが多用されている。 けれども、なんと昭和初期に飛行機を使ったアリバイ作りも入っている。 そして、彼は司法警察員でないから、犯人に対しては寛大なのだ。 また、警察に対しても有益な情報を与える。 実によくできたシチュエーションだ。 この作品がすぐれているなと思うのは、前読で千草検事が仮説後に自供を得て証を得る方法を取っていたのに対し、あらかじめ証を提示しそれをもとに推理して犯人を突き止めるというところだ。 それがミステリーリーダーには実に心地よい。 久しぶりの一気読みだ。 この作品の得なところは、司法警察員があまり出てこないところ。 だから、刑事法の知悉も警察組織もなにも必要ない。 ミステリーの三大要素にストーリー性が加味されていればいいのだ。 そのストーリー性が実にすぐれていて面白い。 衝撃的な話は、硫酸で死体を溶かしてしまう話だな。 これは、密室トリックにもなっていた。 まあそれにしてもこれだけのミステリー作家が今はもういないと私には思える。 令和のミステリー作家よ、奮起せよ。(3/30記)