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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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テーマ:お勧めの本(7264)
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塩野七生著『ローマ人の物語』(23)
       危機と克服(下)(新潮文庫)

読破ゲージ:
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帝国再建の皇帝ヴェスパシアヌスを継いだ長子・ティトゥス。庶民派皇帝の息子もまた、実直純朴の皇帝。生涯の恋も国民のために放棄したティトゥス、筆者をして、公僕に徹し、良き皇帝たらんとした人。しかし、その治世は降り掛かる厄介ごとの収拾に終始した。まずは、ポンペイを襲ったヴェスヴィオ火山の噴火。その詳細は、『博物誌』で知られる大プリニウス(老プリニウス)の甥、小プリニウス(若プリニウス)。叔父譲りの勉学の人、小プリニウスの記す地震の様子(書簡)、残存するのは一部なれど迫真のレポート。この大震災に、公僕皇帝ティトゥス、即対応。余震の続く中、現地に被災者対策本部を置き、陣頭指揮でことに当たる。時をほぼ同じくして首都ローマ、火災。公共建築の立ち並ぶ一帯を襲った火事に、ティトゥスも急行。天災に休む暇なし。疫病対策にも抜かりなかったティトゥス、度重なる災難への心労か、病に倒れ、急死。41歳に満たない生涯、二年三ヶ月の統治。短い治世でも、結果的には市民にも元老院にも愛されたティトゥスの死は悼まれた。死の翌日、弟である皇帝ドミティアヌス、即位。後に、元老院の伝家の宝刀、ネロと同じ「ダムナーティオ・メモリアエ(記録抹殺刑)」に処されるも、実は功績多いドミティアヌス。なぜ元老院を敵に回したのか。父・ヴェスパシアヌスも予測しなかったティトゥスの早すぎる死に、ドミティアヌス、統治に必要な経験もないまま皇位就任。善帝で実兄のティトゥスと比較され続ける統治は不快だったろう、と。しかし、やるべきことはやった点、“悪名高き皇帝”の轍は踏まず。極刑である「ダムナーティオ・メモリアエ」に処されたのだか残る資料は少ないながら、公共事業に偉業は残る。現ナヴォーナ広場にドミティアヌス競技場。父、兄が手がけたコロッセウム落成に都市計画(「ネルヴァのフォールム」)。そして、最も重要なのが、「リメス・ゲルマニクス」の建設。これ、ローマの防衛体制の強化のための、全長542キロの長大な防壁(「ゲルマニア防壁」)。この防壁は、後を継ぐトライアヌスやハドリアヌスも熱心に補強した、ローマの守りの生命線。これが機能すればこそ、ライン河防衛線を心配せずに、ドナウ河防衛に専念できたのだ。二千年後には、軍事専門家からも防衛システムの傑作と評されるも、この防壁建設のために、元老院も望まないゲルマン人との争いを起こしたのであるから不評にも頷ける。このドミティアヌス、秩序を重んじ、不正を嫌ったのもまた清濁併せ持つことのできなかった不器用さか。人間の心の機微に通じていないかと思えば、これが憎いほどそこも抜かりなく。庶民の心は、史上初のナイター試合を提供。要は、抜かりなさ過ぎて、隙がないほどデキたのがまた気に入られなかったのか。インフラ整備、ゲルマンやブリタニア(勇将・アグリコラ活用に失敗して難航、これも失策として批判に)相手に戦争、ナイター試合、とやっても、最高の国税庁長官・皇帝ヴェスパシアヌスらの税制により、万事が滞りなかったが、悩みのタネがないワケでもなかった。パルティアが偽ネロを擁して反ローマ。高地ゲルマニアでも反乱の火の手。ここに、後の皇帝トライアヌスが司令官として抜擢される。ダキア族に大勝。講和に持ち込んだドミティアヌス、ダキア族に対して、捕虜のローマ兵をお金で“買い取る”策に。買った側が金を払い、しかも戦争で体を張った兵士を買い戻す。このやり方が、深く読めないローマの決定的な不評を買うことに。さらに、「デラトール」による、密告・スパイ・告発制度を活用して、恐怖政治再開への警戒心を煽ることに。また、初の終身財務官に就任。明らかに、元老院議員への牽制球。いや、管理下へ置くと一睨みしたに等しく。そして、皇帝ドミティアヌス、暗殺さる。45歳に一月、15年の統治。が、ドミティアヌス、何も不評を買ったローマ市民や、警戒心を抱いた元老院の陰謀によって殺されたのではなく。ドミティアヌスの胸に消え残る生涯の恋に、打ち勝てぬ苦悩ゆえか痴情または至上の愛のもつれ、皇后付きの解放奴隷により、睡眠中に襲わる。死後、元老院議員ネルヴァが皇帝に推挙される。誰の意向か、元老院は早々にネルヴァを皇帝にし、ドミティアヌスを記録抹殺刑に処すことを決定。人望あった近衛軍団らを抑え込み、元老院へ突きつけられた宝刀をなまくらにするのが狙い。ドミティアヌスは、墓碑すら与えられなかったが、心の恋人とともに眠ることはできた。初、が好きなドミティアヌス、ちなみにクィンティリアヌスに、古代唯一の体系的教育論述書を書かせる。ネルヴァ、ショート・リリーフ自覚の上で皇帝に。この皇帝在位中の最大の善政は、後継者にトライアヌスを指名したこと、と。一年余りの治世で、皇帝ネルヴァ、自然死。71歳。己の役割を自覚し、それならば十分に果たした。トライアヌス、皇帝に即位。筆者曰く、ローマの人事・ローマ史はリレー競争。既存の機能が衰えれば、必ず新しい人材がバトンを拾う。やむを得ず続投・既存の体制保持は衰退を加速し、共同体の崩壊へ。バトンタッチする相手に不足して走り回り、あげくトラック上で倒れて死ぬ図式、と。(了)


ローマ人の物語(23)

「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『何のために生き、死ぬの?』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2008/12/15 03:05:38 PM
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