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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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テーマ:お勧めの本(7254)
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塩野七生著『ローマ人の物語』(25)
       賢帝の世紀(中)(新潮文庫)

読破ゲージ:
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野心と旅の皇帝ハドリアヌスの治世。トライアヌスとは対照的に、この人はポジションからして、皇位は十分な射程距離。あとは準備万端整えるのみ。幼き日より、同郷(つまり、ハドリアヌスも属州出身)のトライアヌス、さらにはトライアヌスの近衛軍団長官のアティアヌスの両名を後見人(代父)に持ったのだから、スタートからいい位置にいたワケで。順調に「名誉あるコース」でキャリアを重ねるが、辛酸も舐める。ギリシャ贔屓で狩が好きな、ちょっと危うさも持つハドリアヌスはだが、苦境にも輝きを失わぬ男。皇帝であり父同然である皇后プロティナにも愛される。なお、年上の女性に愛される条件。「美」、年齢に関係ないフレッシュさ、頭脳の明晰さ、センシティヴであること、とてつもなく大きな野心、以上五点とは筆者の弁。よき皇帝でありよき夫でもあったトライアヌスの妻へのハドリアヌスの愛は、プラトニックゆえに長く生き続けた。37歳から41歳までが、いわば陽の当たらぬ雌伏の時期。心中や如何に。そして、トライアヌスの病。後継者をハドリアヌスに指名して逝く。本当に、そこに指名があったのか疑惑はあった。トライアヌスの最期を看取った唯一の第三者である侍医が数日後に原因不明の死を迎えたから。そこにプロティナの強権があったのか。先帝の死後二日経って、ハドリアヌス即位。肌合いの違いに一歩後継者指名に踏み出せなかったトライアヌス、まさに「イン・エクストレミス(in extremis)」つまり、ギリギリでの決断。ハドリアヌスの治世は、問題山積の中でスタート。ユダヤ問題、ブリタニアでの原住民の反乱、北アフリカはマウリタニア問題、ドナウ北岸のサルマティア族の再起。ドナウ前線滞在中、先帝の重臣四人による陰謀ありとの報に接す。トライアヌス時代とは一変したハドリアヌスのパクス・ロマーナに反発が予想されないはずはなく、ハドリアヌスもすぐに動いた。が、もっと早く動いた、代父の一人、アティアヌス。近衛軍団は、この四人を裁判無しで殺害。もちろんヒステリックに反応したのが元老院。またも国家反逆罪を掲げた恐怖政治の到来か、と。作家マルグリット・ユルナス(仏)『ハドリアヌス帝の回想』における、ハドリアヌスと老長官のやりとりは筆者も絶賛。治世のスタートから元老院に睨まれ、後世に悪名を残す所業を指示したと咎められるような勇み足をよくも…。アティアヌス、長官解任。親子の如き両者の間にどのような思いが交錯したのか。善政への熱意と実践で、こわばった元老院もローマ市民も気分を変え始める。ハドリアヌスの治世のスローガンは、「寛容」、「融和」、「公正」、「平和」。そして、旅が始まる。視察と帝国の整備のためだけにこれだけの大旅行をしたのはハドリアヌスを措いてほかになく、その範囲であれば転戦しながら移動したユリウス・カエサルのみが唯一匹敵した。21年間の治世で、本国にいたのはわずか三回、合計7年。13年間を旅に費やす。「疲れ知らずの働き者」の面目躍如。ライン河視察では「リメス・ゲルマニクス」の補強。防衛の質の刷新ならば、ローマ軍主戦力である軍団兵の入隊・資格マニュアルを作成、以後旅の先々でこれを自ら普及しローマ軍の水準の統一を図る。ブリタニアでは、名高き「ハドリアヌスの防壁」を建設、ブリタニアでの安全保障を約す。といっても、着工するや皇帝は旅の途上、結局、存命中にハドリアヌスはこの防壁の完成を目にすることはなかった。故郷スペイン滞在中では、一人で散策中だったハドリアヌスが狂人に襲撃される事件も。47歳の皇帝、自ら襲撃者を取り押さえるも、狂人は罪に問わず。翌年には、少年時代からの憧れの土地、ギリシャ入り。なんせハドリアヌス、ネロのちょろ髭を除けば、ローマ史上初めて、ギリシャ風に豊かなあごひげをたくわえた皇帝。運命の人、ビティニア生まれの美少年・アンティノーをそばに置いてのギリシャ行にさぞご満悦。アテネ人の傲慢さゆえに衰退したアテネに胸痛め、ここではアテネ再興事業着手。この皇帝、旅先で「私、いまここにいて、こんな仕事しました」的メッセージを刻印した貨幣を都度鋳造して帝国の民にアピールした人。「我らが皇帝は、アテネにて彼の地の再興を成し遂げたのか!!」と硬貨を手にした人々が思いを馳せる頃には、ハドリアヌスは北アフリカにいたりして。この後、首都に戻った旅人皇帝、一年半はジッとしていた。「ローマ法大全」の大事業にいそしむ。ユスティニアヌスに先駆けること400年、法の民・ローマ人の法律観のルーツとなる。放縦を嫌ったハドリアヌスの数ある偉業の中でもキラリと光る「ローマ法大全」、セクハラ禁止も盛り込まれていた。なお、以後公衆浴場でのローマ式湯浴み=男女混浴は、永久に姿を消す。芸術愛好家でもあったハドリアヌス、古代ローマ時代のままで現代に遺る唯一の建造物、パンテオンの事実上の前面リニューアル。建築と音楽が似るように、法と建築もまた。(了)


ローマ人の物語(25)

「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『何のために生き、死ぬの?』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2009/01/07 12:16:04 PM
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