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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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塩野七生著『ローマ人の物語』(42)
       ローマ世界の終焉(中)(新潮文庫)

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フン族が不穏。筆者によれば、フン族の恐ろしさは五つの「無」から来ると。1:目的なし、目的地なし。2:家をもつことに関心なし。3:法律なし。4:家族の守り神なし。5:明日の食を確保する考えなし。強力なリーダーさえ得れば、資産蓄財に興味なく、家族の概念もない臨機応変の軍団が容赦なくノーガード戦法で襲ってくる。そして、強力なリーダーを得た。その名もアッティラ。青少年期をフン族の中で過ごした帝国の軍総司令官アエティウス、代償を払って協定関係にあったため、しばしばフン族に兵士の借用を依頼していたようだが、アッティラが起って様子は変わる。突如としてローマ帝国に矛先を向け、怒涛の侵攻を開始。ただ進軍するのではなく、奪い、破壊し、焼き払って進む。アッティラの後に犬の鳴き声すらしないという。蛮行を繰り返しながらついに、アッティラ、コンスタンティノープルから百キロ地点に到達。恐喝開始。法外な要求に、もはや飾り立てるだけの皇帝になっていたテオドシウス二世はなす術もなく、条件すべてを呑んで同盟者協定を受け入れるしかなかった。首長になって五年、このままの勢いならアッティラの手によって、いち早く滅亡していたかも知れなかった東ローマ帝国。しかし、テオドシウス二世の死によって、一変。子がなかったテオドシウス二世のあとは、先帝アルカディウスの娘プルケリアとの結婚で神意をクリアした軍人皇帝マルキアヌス起つ。老いて盛んな軍人皇帝、フン族との協約を破棄して、フン族掃討に血道を上げる。
アッティラ、ピンチ。そこに、まさかの朗報が西方よりあり。重たい母、ガッラ・プアチディアの死により開放された娘・ホノリア、自分と結婚すれば西ローマ帝国の領土の半分をあげる、とアッティラに提案。姉の行動に驚いたのは、皇帝ヴァレンティニアヌス。姉を監禁処分にするも、もはや手遅れ。西ローマ帝国に向うアッティラに、アエティウスが立ち向かう、シャンパーニュの会戦。西ゴート族の族長、老将・テオドリック、討死するほどの奮迅で、アッティラ率いるフン族を辛くも破る。これで落ち着くかと思いきや、ホノリアとの結婚履行を名目に押し寄せるアッティラ、北イタリアを、半年にわたり略奪し放題。これにローマが動いた。
といっても、要は金を払って帰っていただく、という手段のみ。ここに伝説生まれる。聖ペテロと聖パウロが助太刀に来て、司教レオがアッティラに神の功徳を説くと、アッティラは感動してイタリアから去った、と。この時期には司教=法皇、レオ一世を飾る名エピソード。
翌年、アッティラ、突然死。フン族は後継者争いを始め、内部分裂、雲散霧消。フン族、十年に満たない天下。
ようやく真の平穏が訪れたかと思いきや、還暦アエティウス、息子の嫁に、皇帝の娘を要求。これに、ヴァレンティニアヌスはキレた。その場でアエティウス、皇帝に刺殺される。翌年、閲兵中の皇帝ヴァレンティニアヌス、隊列を離れて突進してきた兵士に殺される。下手人は、アエティウス子飼いの兵士。
息子がなかったヴァレンティニアヌスのあとは、“律義者”ペトロニウス・マクシムスが皇帝に選出される。アントニヌス・ピウス似と言われたマクシムス、帝国が安定していれば、名君になれたものを。
フン族去って、ヴァンダル族現る。制海権を奪われ、地中海でも「パクス・ロマーナ」を失う。ヴァンダル族もまた、とんでもないリーダーを得ていた。有力、強力、長命なるゲンセリック。十万人を、スペインから来たアフリカに連れてきただけでも、そのカリスマ性は推し量れる。マクシムス即位から二ヶ月、ゲンセリック率いるヴァンダル族、オスティア上陸。
牽制球たるアッティラもフン族もなく、アエティウスもいない西ローマ帝国に、容赦なきゲンセリックによる、史上二度目の「ローマの劫掠」始まる。軍事力なき皇帝がいかに無力か。二十万の市民がありながら、抵抗もせずに怯えるばかり。必死に鎮める皇帝マクシムス、恐怖に駆られた市民に殺される。
ここで、ローマの司教が動く。もはや法皇と呼ぶにふさわしいレオが、アッティラ回心の伝説夜再びとばかり、ゲンセリックとの交渉に乗り出す。といって、キリスト教徒と教会には手を出さないことをルールに、劫掠を同意したようなもの。
マクシムス以降、最後の二十年、西ローマ帝国は、動揺の中で、実に、数年ずつの治世を任された皇帝が次々とすげ変わる悪あがきの体。その数、9名。
中でも、皇帝マヨリアヌスは、強硬路線の皇帝。ない袖を振っても、北アフリカに出来上がったヴァンダル王国とゲンセリックを許せず。筆者曰く、マキャヴェッリですら合格点を出すに違いないというゲンセリック、無理に無理を重ねて編成した討伐軍の船団に火を放ち、瞬く間に皇帝の彼岸と、帝国の国庫を完膚なきまでに無に帰してみせる。こんな時期、無理をして結果が出せない皇帝など、何らかの理由で殺される。そして新たな傀儡が生まれる。その繰り返し、いや積み重ねで、着実に帝国は滅亡一直線。
それでも、最後にひと花火ならば上がった。私腹肥やしの名人にしてフィクサー・リキメロスのお膳立てで、互いの不足を補い合う、利害のみでつながった夢の競演、帝国最後の東西共闘で、北アフリカのヴァンダル族討伐へ。この時期にあっては、まさにコラボレーションによってしか実現できなかったであろう、それなりの軍勢が、ゲンセリックを目指す。が、そこはゲンセリック。人を見る目も鋭かった。せっかくの大軍を率いる、皇帝レオの義弟バジリスコス、虚栄心の塊。この愚かな総司令官が、ゲンセリックの目に留まった。手紙で巧みに交渉を匂わせ、時間稼ぎをしながら艦隊をカルタゴ湾内に引き入れると、またも身動きの取れぬ船団に火を放って、壊し、奪い、殺す。総司令官、逃亡。陸路で合流する予定のマルケリヌス軍も巻き込まれて壊滅、ヘラクリウス軍は撤退。ここに、東西共闘大作戦、あっけなく幕切れ。
東西、それぞれに失ったものは計り知れず。領土のほとんど失った西ローマ帝国は、東ローマ帝国からも見捨てられ最後の混乱に突入。フィクサーにして実力者となったリキメロスと、滅亡前夜の皇帝アンティウスの関係悪化。武力衝突の果てに、血塗られた代表の交代劇。見かねた東ローマ帝国がユリウス・ネポス将軍を皇帝として派遣する意向も、反東ローマ帝国の頭目・オレステス従わず。かといって、オレステスに西ローマ帝国復権の意思がある訳でもなく、ただ権力者になりたかっただけ。息子ロムルスを皇位に就け、アウグストゥスと称させたことで、東からの皇帝ネポスと、帝位のダブル・ブッキング状態に。が、異議は東ローマ帝国でなく、北イタリアから上がった。労働条件改善要求を退けられたのに似た形で起こった蛮族からのデモに似て、リーダー・オドアケルを立てて武力闘争に。二度の敗北でオレステス、討死。ロムルス・アウグストゥスも退位。オドアケルの採った道は…誰をも皇帝に就けないという方策。
度重なる皇帝交代劇の果てに、誰一人皇帝を立てようとする者もなく、自ら起とうとする者もついにはいなくなって、見棄てられるようにして静かに、西ローマ帝国は滅亡。紀元四七六年のことである。
いまだ東ローマ帝国は存命も、その首都はコンスタンティノープルである。ローマという都市なくしてローマ帝国はあり得ない。ゆえに、真の意味でのローマ帝国はここに、「偉大なる瞬間」なる感慨もなく、誰にも気付かれずに、滅亡したのである。(了)


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Last updated  2011/10/11 07:01:00 PM
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