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地球侵略本部

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プロローグ

  プロローグ 日常は終わりを告げる-Gone into fantasy


「――なっ!――」
 呆然と立ち尽くし、言葉を失った。
 見渡す限り、ビル、ビル、ビルの風景に。
 しかも、ただのビルじゃない、その全てが二〇〇メートル以上、そしてその全てが学生寮。つまりマンションだ。
「驚きました?」
 菊川は隣に居た少女が言った。
 名前はやまなみ五月さつき
 菊川がここに到着したときに出迎えてくれた少女だ。
 菊川は嘘をついても仕方が無いので、素直に「はい・・・・・・」と返事をした。
 今は四月の二日、もう四月の一日エープリル・フールは過ぎてしまっているが、この現実が「全て嘘ですよ」と誰かに言ってもらいたい気分だった。いや、嘘であって欲しかった。
(どうして、俺はこんなところにいるんだ・・・・・・)
 と、つくづく思う。
 ここは茨城県の二分の一の広さを占め、総人口六八〇万人弱を抱える教育機関『学園都市』。
 突然、自分の立っているところが、陰に包まれた。二〇〇メートル以上のマンションが立ち並んでいる中、ココは辛うじて日に当たっていた。
 が、
 影に包まれた。驚いて空を見上げると、空にでっかい何かが飛んでいた。二〇〇メートル以上のマンションの遥か上を飛んでいるにも関わらず、でかでかとしており、もうすぐで太陽を隠せてしまいそうだ。微かに漏れる光の所為せいでハッキリと何が飛んでいるかは分からなかった。だが、形が流線型というぐらいは分かった。
(ひ、飛行船?)
「あれは、飛行船です」
 驚いた。
 少女の口から『飛行船』と言う単語が出てきたことに。
 空に飛行船が飛んでいるという事実に。
「ひ、飛行船って、大きさから言って硬式飛行船じゃないですか!」
 硬式飛行船。
 金属の枠組みを作ってそれに外皮を貼り、複数の気嚢きのうをその内部に収納する形式の飛行船。
 一九三七年五月六日に起きたヒンデンブルク号爆発事故により、大型硬式飛行船の安全性に疑問が持たれ、それらの建造が行われなくなった。
 だから、今この場で硬式飛行船が飛んでいることに驚いている。
「あの飛行船は従来の飛行船とは違った方法で飛んでいるそうです」
少女は菊川の心を悟ったかのように、菊川の疑問に答えた。少年は面食らった。自分が質問しようとしていた事の答えが返ってきたこと、なにより『従来の飛行船とは違った方法で飛んでいる』と言うことに。
「従来とは違った方法?」
「ええ、私も詳しい仕組みは存じませんが、名前だけなら」


 反重力装置アンチグラビティシステム


 少女の口からまた凄い単語が出てきた。
 菊川はなんとなくだが、名前からそれがどういうものか解った。心の中では、なんですかその未来的ないきすぎた発明品の名前はァ!? 実は名前が違うだけでV2が背部に搭載している物と同じ物なんじぁァァァァ!? と両手で頭を抱える。だがすぐに何かを思いついたかのように、左の掌を右手でポンと叩くと、
(何言ってんだよ菊川、そんな粒子、在るわけないじゃん、在るわけねーよ、在って堪るかよ! の三段活用ですよ)
 アハハハハハ・・・・・・、と心の中で力なく笑った。少女は、『どうしましょこの人(汗)』、と言った感じで少し引き気味で菊川を見ていた。菊川はそんなのに気付かず、一人で知恵熱を出し唸っていた。

 菊川はまだ知らない、この先に待つ受けている学園都市産の超科学オーバーテクノロジーの数々を。


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