エレクトーンというガラパゴス 12.
ラテン語 白状しますと、私は少年合唱団というか子供を用いた声楽や器楽が苦手で、それはウィーン少年合唱団でもリベラでも変わりはありません。怒られるのを覚悟で言うのですが、まあ趣味レベルの話だから好いじゃないですか。 簡単に言えば、それらは大人の側の「希望」とか「都合」とかの投射によって、演奏されていると感じざるを得ない場合が、しばしばあるからです。先に「Kyoto Tachibana High School Green Band 6」でも触れたように、私たちは知らず子供やJKや高校野球少年に、ある「標準化された指標」を当てて見てしまっているのですが、それは判断される当人たちにとっては、ある意味大きなお世話でしょう。「京都橘」をながながと取り上げたのは、彼女たちの演奏コンセプトは、間違いなく本人たちから編み出されたものだったろうと判断したからです。 歌が汚いとか下手だからということではなくて(むしろ逆で、恐ろしく美しい)、それらを聴くこちらの側に、本人たちのありようとは関係のない「夢」や「幻想」を投射してはいないか?早い話、いくら「天使」とはやし立てられても、そうではない本人たちは困ってしまうでしょう。やっかいなのは、そうした仕方の「標準化された指標」を、大人の側から押し当てられ続けると、本人たちが時に自身を勘違いしてしまう、あるいは自身の見立てを誤る場合があるということです。 「それを言うなら、おまえだって他ならぬ826asukaさんをずいぶん以前から(と言うことは「子供の時」から)推奨してるじゃねえか」と逆ねじを食らいそうですが、だからこそ私は彼女の話をするときは、演奏の中身だけに限定して、その他のことには一切触れないというふうに、かなり注意しているつもりです。「じゃあ、あえて突き放して淡々と大人と対するように批評するのか」と言えば、もちろんそうではない。十代の女の子が発する声を、こちらからの指標抜きで、素のまま等身大で聴き取ろうとするのは並大抵ではないんじゃないか。 ピカソの絵を観るとき、観る側はそれまでの標準化された「指標」や「観念」はいったん棚上げにして素の目で享受しないと、「そこにある絵」は私たちに「何かを語りかけて来る」ことは絶対にないでしょう。 ところが、リベラに関してはその美しさあるいは技術について、充分敬意を払いつつ、なおかつ「素の耳」で聴くのを困難にしている、という部分が私の場合にはあるのです。それは非常に微妙なのですが、要はこれらの歌声や曲は、結局のところ「大人の都合」によって仕組まれていると考えざるを得ないからでしょう。リベラ・ファンの皆さん、ごめんなさい。私がリベラのファンを否定しないのと同様に、私が以上のような理由で、リベラを「素」で聴くことが出来ない訳も分かってください。826asukaさんについては、そもそものスタートがyoutubeということもあって、おそらく「大人の都合」という部分はかなり少ないだろう、というのが私のかろうじて踏みとどまっている根拠なのです。 とはいえ、「天使のくれた奇跡」を聴いた以上、そこに付された歌詞が先のブリッジ・パッセージの話と絡んでいるような気がするので、ここで別の方のこれを聴いてみましょう。佐野仁美さんという関西出身のシンガーソングライター(というか、マルチアーティスト)なのですが、これまたお若いですが発声が明瞭なうえに、歌詞が画面に付されているので、分かりやすいですよ。 で、これを聴いていてただちに気付くのは、先の中間部、私がブリッジ・パッセージと呼ぶ部分が、どうもラテン語で歌われているらしいということなのです。リベラが教会音楽をオマージュしている以上、ラテン語が出てくるのはそれほど不思議ではないにせよ、英語詞の間に挿入されるラテン語というのは、いわば現代語の間に古典語が嵌入したみたいな、かなりな気分の転換を感じる。平たく言えば、この部分は歌う対象、あるいは語りかける相手が他とは違いますよ、という暗示になっているのではないか?とみてくると、他にも前半と後半の真ん中にやはりラテン語の歌詞が挿入されてますね。 下線の部分です。わりと平易な英語なので全文を掲げます。Angel take your wings and fly, watching over me see me through my night time and be my leading lightAngel you have found the way, never fear to tread You will be a friend to me, angel spread your wings and fIy Voces angelorum gloria, dona els pacem For you're always near to me, in my joy and sorrow For you ever care for me, lifting my spirits to the sky Where a million angeis sing, in amazing harmony and the words of love they bring to the never ending story A million voices sing to the wonder of the light So I hide beneath your wing You are my guardian, angel of mine Cantate caeli chorus angelorum Venite adoramus in aeternum Psallite saecula et saeculorum Laudate Deo in gloria Can you be my angel now watching over me comfort and inspire me to see our journey through Can I be your friend indeed, from all cares set free the clouds would pass away,then I'd be an angel too Voces angelorum gloria, dona els pacem For you're always near to me, in my joy and sorrow For you ever care for me, lifting my spirits to the sky Where a million angels sing, in amazing harmony and the words of love they bring to the never ending story A million voices sing to the wonder of the light So I hide beneath your wing You are my guardian, angel of mine Angel of mine