猛霊八惨
「海で水死した人は陸にあげて弔ってあげないと、猛霊八惨(もうれいやっさん)という妖怪になる」いつか読んだ、水木しげるのマンガの話し。イージス艦と漁船の衝突事故のニュースを見てたら、このマンガの話しを思い出しちゃったわねえ。水に溺れて、呼吸が停止したら、5分以内に救命措置を施さなければ蘇生の望みは無い。こんな話しを聞いた事があるのよね。もう、何日も過ぎてる。だから、犠牲者の御家族の方も、諦めているのかも知れないわね。猛霊八惨って妖怪は、仲間を増やそうとして、舟を沈めるの。夜の海、舟を進めていると、海から声が聞こえてくるのよ。「も~れ~やっさん ひ~しゃく~を~よ~こせ~」これが、猛霊八惨の声なのね。そのうち、大合唱になってくるの。「柄杓(ひしゃく)をくれ」って言ってるんだけど、素直に柄杓を渡したら駄目なの。もし、柄杓を海に投げ入れると、海から柄杓を持った猛霊八惨の手が出てくるの。柄杓の水を舟に注ぎ込んで、何度も何度も注ぎ込んで、舟を沈めてしまうの。だから、猛霊八惨の言い伝えの有る地方では、底を抜いた柄杓を舟に置いてあるんだって。猛霊八惨が「柄杓をよこせ」って言ったら、その底抜けの柄杓を海に投げ入れるんだって。妖怪が何か要求してきても、素直にそれに従ったらいけないのね。「遣ろか水(やろかみず)」もそうね。「やろうか~ やろうか~」って言って出て来る妖怪ね。これは、手塚治虫の「どろろ」にも登場するけど、この妖怪の「やろうか~」に対して、「くれるんだったら、くれよ」って答えると、その地帯が大水に襲われるって話し。「いらないよ」って答えなきゃいけないのね。猛霊八惨のマンガは、確か、海で死んで猛霊八惨になった両親に、その子供が救われて、1週間後に戻ってくるって話しだった・・。テレビニュースではこの事件、大きな音で伝えられているけど、当事者の立場になって考えてみたら、とても寂しい事なのよね。ニュースで騒がれなくなっても、この事実は永遠に残るのよ。水木しげるのマンガの世界みたいに、寂しくて哀しい出来事なのよね。夜の海を見るたびに、思い出す事なんじゃないかしら。政治家や官僚の悪い人達。人間の世界の決まりでは、なかなか退治する事ができないみたいだから、ここは妖怪さんの力を借りてでも、懲らしめてほしいところだわ。いつか自衛隊艦船が、猛霊八惨と出会いますように。