穿天の黒柱 第二話 ~森の死神~
穿天の黒柱 ~第二話 森の死神~ その人は森に入っていった。ここがどんなところか知らないわけではないだろうに。ただ、この森に住むと噂されるただ一人の人間に会うが為だけにその身を危険にさらそうというのだ。 その人の風体からは何者かは判らない。とても奇妙な格好をしている。首から下は鋼色の布でできた服を着ている。頭には金魚鉢を逆さにしたような透明なガラス状の帽子をすっぽりかぶっている。所々に宝石のような石が埋め込まれているがその一点を除けばまるで宇宙服だ。まぁ無理もない。この土地の毒気は人間には強すぎる。少しでも肌に触れれば十数分で皮膚はただれ始め、肉は腐りだし、四肢にとび、臓物は壊死する。一時間もせずに死に至る。そんな場所なのだ。 その人は木々に邪魔をされ顔は見えないが、小柄な体つきをしている。大人にしてはずいぶんと小さい。青年か、それともゴブリンか何かであろうか?頼りない足取りで進むその人はどこを目指すのか、それでもわき目も振らずただひたすら進み続ける。 もうどれだけ歩いたか分からない。もう昼を過ぎた頃か、日が頭上に照っている。秋も終わりに近づいたとはいえ、日差しが暖かい。あの宇宙服も、毒を避けることはできるにせよ、さすがにエアコンは付いてはいないだろう。もう数時間も歩き続け、蒸し風呂状態のはずである。 さらに歩き続けると広く開けた草叢に出た。あの場所だ。黒柱の真下である。間直で見る柱は流石に大きく、柱の湾曲を感じさせないまるで壁である。上を見上げると天に続く道のように黒い壁が空に吸い込まれていく。柱の下だけは木は少なく、雑草が生い茂っている。 木の陰から出たその人の体に太陽の光が優しくふりそそぐ。赤毛より緋色といった美しい髪が輝いてみえる。深い茶褐色の瞳があたりを見渡す。白い肌に一筋汗のしずくが滴り落ちる。薄紅の唇から吐息がこぼれその人が口を開く。「おっかしいわね」なんと女である。いや、見た感じだと女というより少女と言ったほうが良いだろう。年は16~17ほどだろうか。「っったく。師匠も師匠よね。修行だとか言ってこんなトコ来させるなんてさ。 だいいちこんな広い森どうさがせってのよ。」・・・口はあまり好くないようだ。「『黒柱に向かい歩いていれば死神に会う。そいつが知ってるよ。』とかテキトー言って 死神どころかロボットも凱虫もいないし・・・・」 ズウゥウウウン師匠の悪口を遮るかのように地響きがなった。「何?」振り向くが早いかバキバキと音を立て視線の先の木が倒れていく。倒木音に隠れかすかに悲鳴が聞こえる。少女は音のするほうへ走っていった。 音源にたどり着いた少女は一瞬たじろいだ ギチチチチチ・・・凱虫である。その迫力は少女の想像をはるかに超えていた。優に10mは有ろうかというその巨体で、ムカデを思い出させる長い体で獲物の周りを囲うように蠢いていた。大きな二本の顎が獲物に近づく。 襲われているのはなんとロボットの子供達である。ロボットを虫が喰うのか?命を投げ出して戦うべきか?何故私は襲われなかったのにロボットが?さまざまな疑問が少女の頭をめぐった。「待ちなさい!!」気づくと少女は凱虫に向かい石を投げつけていた。 (・・・。ヤバ・・・)何故そんなことをしたのか本人にもわからない。性格であろう。性格は悪くないようだ。「わ・・私が相手よ。(ああぁ・・・(涙))」 凱虫が標的を変え、少女のほうへ身をくねらせながら近づいてきた。少女は逃げようと身を翻す。だがその素早さは少女に逃げ道さえも与えてはくれなかった。少女が振り向いた先にはもう凱虫の尾が道をふさいでいた。「ウソ・・・」 ギチチチチ・・・凱虫の声が耳のすぐ後ろまで来ているのが分かる。少女の体温が一度下がった。 死を覚悟した瞬間だった。 そのとき、大きな金属音に似た音が少女のすぐ後ろでした。振り向くと顎を一本折られ、苦しみもがく凱虫の姿があった。ふと突然少女を照らす日の光が遮られた。反射的に上を見上げた少女は目を疑った・・・・ 「・・・死神・・・・・」ランキングなど参加中ですよかったらぽちっとどうぞ↓↓↓★★★クリスマス特集やってます★★★おすすめスウィーツ紹介サイトsunlight sweet`s street