注射針その2
業界では「注射針」を「ちゅうしゃばり」と読まずに「ちゅうしゃしん」と読む。普段病院で注射をされるときに、ちょっと嫌だけど注射針を見てみると、針がピカピカに光ってる場合と、光って無い場合があるのに気付く。というか、ほとんどの場合が金属の地肌むき出しで光って無いんだけど、それはテル○とかニプ○の注射器の場合で、これは針のコストを抑えているためだ。注射針は以前も書いたことがあるけど、切削のときにできるバリを落としているのだが、月間最高で数百万本も製造する針を一本一本バリ取りしてたら、時間がいくらあっても足りない。そこで化学薬品を使って研磨する。つまり針を薬品に漬け込んで、バリをまとめて溶かしてしまう。針の先端のトンガリは丸めない程度に、刃先に残ったヒゲみたいなバリのみを5µだけ溶かす。この時に「電解研磨」とか「化学研磨」という方法を使うんだけど、その違いは専門的過ぎるのでここでは割愛するけども、どうしても知りたければ私の会社のHPを見てちょうだい。ここの「管理人のひとりごと」は私が書いてます(つまり私が管理人)。ところでその「電解研磨」と「化学研磨」なんだけど、光沢がある針は「化学研磨」を使っていて、光沢の無い針は「電解研磨」を使っている。一般的にこの二つの研磨の仕上がりの出来とコストを比較すると「電解研磨」>「化学研磨」なんだけど、注射針の場合はこれが逆転する。これは「電解研磨」の方は針をまとめて束ねて処理するために、刃先のバリは落ちるが針の表面は薬品がいきわたらないので研磨しきらないためで、しかし束ねて沢山処理するからコストは安くあがる。従って、大手の注射器メーカーは「電解研磨」を採用しているのである。注射針の表面が、ゼムクリップや裁縫の針みたいにツルツルして光ってたら「化学研磨」、ホッチキスの針やカッターの刃みたいな金属の地肌のような表面だったら、それは「電解研磨」だ。