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想い出は心の宝石箱に。。。

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2014.11.04
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                             第八章

 

 

 

     大学校内の道を、イチョウの落ち葉が、黄色に敷き詰めている。

     東北の秋は短く、すぐ冬になってしまう。散り尽くしたイチョウの木々が、白い

     綿帽子をつける日も間近い。



                  北海道大学イチョウ並木 



  秋の陽射しは、研究室の奥まで覗きこみ、長い影を残している。

 
    黒田は、読みかけの学術書を閉じた。


    < 千佳との関係も、そろそろ清算すべき時かもしれない・・>


   三十前独身の千佳の肉体は、若鮎のごとく勢いがあり、且年のわりに
性愛にたけていた。

     しかし、准教授に推挙しなければ、二人の関係を妻か学長に暴露すると脅かされては、

     このまま放置しておくのはまずい。千佳との関係は冴子と会う前に出来たものだが、

     その後もずるずるとここまできてしまった。
    

    

 

                     



   隣の机で書類の整理をしている千佳に、


 ( 来年の教授会で、君を准教授に推挙したいと思っている。僕の後継者
として、この

         研究室をそろそろ託しても、いいかな・・・ )


  
 ( あら・・どうして、来年なわけ。 )


 ( 僕が、学部長に昇進したばかりだし。学部長の職権乱用で、准教授に
なれたと思われ

         ては、 君も本意ではなかろう。 )


  
   ( そんなことは、ないわよ。権力なんて、使える内に使わねば。 )


  ( それに、八代が知っていたことは、二人の関係が学内でもかなり噂に、
なっているの

          かもしれない。だから、僕との関係も、今日で終わりにして、准教授への道を確実に

          した方が、君のためだと思うのよ。)


  ( へえ~~、ほとばりが、さめてからというわけね。学部長が我慢出来る
なら、私は

          別れても構わないけど・・・・)


  千佳は、<うふっ>と、含み笑いをした。それが何を意味しているのか、
黒田には

      わからなかった。

 

 

                               

              

    

 


  ここは、東京下町にある、小さなマンション。


  ベッドに体を横たえながら、久実は仙台にいる夫黒田のことを想っていた。教え子で

      優秀な男がいると父からの薦めで結婚し、早いもので二十数年が過ぎていた。三年前

      子宮ガンが発見され、卵巣への転移が見られた末期段階であったことから、子宮卵巣を

      全摘出せざるをえなかった。

 

  それ以後他の部位への転移は認められないが、治癒の為闘病生活の日々を送っていた。

      幸いなことに娘が成人しているので、身の廻りの世話はしてくれる。もともと病気がちな

      久実であることもあり、黒田の仙台学院大学への転勤にも、彼女を帯同することはなかった。

      それを、妻の役目を果たせずに申し訳ないと、涙ながらに久実は黒田に詫びたのだった。

 


                                    

                         

                               



  黒田からは、3日に1回ぐらいの頻度で電話があり、病状を細かく聞いては励ましの

      言葉をくれた。今般学部長に昇進したとの報告もあったが、久実にとってはそんなこと

      よりも、 単身生活での食生活で健康を害してしまう事の方が、心配であった。

 

  きちんと食事をしているの?との問いに対して、俺は近くのスーパー・コンビニの弁当を

      食いまくり、ほとんど制覇したと電話口で笑っていた。

 


                       



  黒田からここしばらく連絡がないが、夫は元気でいるのだろうか?

  窓から見える空には、いくつもの鰯雲がなたびき、秋から冬への景色に変わっていた。


 

つづく~  いぬ    いぬ

 

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Last updated  2014.11.04 23:59:02
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