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カテゴリ:本
『部屋にて』 石田千著 2007年 角川書店
石田千さんの今年2冊目の単行本は、月刊文芸雑誌「野性時代」にこの2年間連載されていたのをまとめたもの。そのころから忘れなければ読むようにしていたのだけど、こんなに早く単行本になってびっくりした。 あ、この「野性時代」には、お友達、石黒由紀子さんのゆるゆる街歩きエッセイ「さんぽ」が今もすてきに連載中です。見かけたら、手にとってみてくださいね。 この『部屋にて』。「電球」「ボタン」「ねじ」「りんご」、、、と部屋の中にある身近なものを題材にした小編が24収められています。過度に女性っぽくなく、なんとなく「湯上りのこざっぱりとした感じ」が今まで石田さんの書いた文章に抱いていたイメージだったんだけど、今回はタイトルからも内容からも、内に向かうというか、自分と対峙しているというか、そのような印象を覚えました。湿度感が増したような気がするのは、今まであまり書かれていなかった色恋にまつわる話も登場するからかな。随筆?私小説?どちらでもよいのですが、石田さんの世界、深化してる。 ひらがなの多い独特な文章に油断していると、グサリとやられます。読み手の状態によって自在に伸び縮みする行間。じっくり読もうとすると全然さきに進めない。昔あったできごとや、人の心の機微などについてじつに淡々と書いているのだけど、こちらの気持ちは波が立ったり凪いだり、不思議な感じ。読むたびに違ったおもいを抱くのだろうなぁ。 佐々木美穂さんの絵も好いです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jun 8, 2007 08:47:41 AM
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