遮断機
此処へ来たときの話。
あれは、そうだね20年程前だろうか。或いはもっと昔なのかもしれない。
その頃はまだ此処のことなんて真っ白にわからなかったからね。
幾分か経ってからだね。記憶を持ったのは。但しどうも私は作りが違うようでね、他よりもっとそれが少ないんだ。
覚えているのは、そうだね、揺られて謡を聞かされたことくらいさ。
そっから後はもう地獄さ。空がね、晴れたんだ。
晴れた途端見えたのは細い道だ。
その道は何処とも交わらない。
そこを歩いていかなきゃならないことを知ったんだ。
なるべく見ないようにしたさ。ただね、周りの道が交わりつつあるのを見ると泣きたいような、笑いたいような気持ちでいっぱいになった。
そうしているうちに君と会ったんだ。全て偶然さ。
だから余り入ってこないでくれ。
私には君を知ることも私を知らせることも出来ないんだよ。
そう、離れてくれればいい。そうでなきゃ目隠ししてやらなきゃならない。