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1999年9月30日・・・・ 茨城県東海村、核燃料加工施設「JCO東海事業所」で起きた東海村臨界事故。 ウラン燃料の加工作業をしていた技術者二人が大量の中性子線を浴びて死亡した事件を題材にしている。 中性子線による被爆。 それ以降、なされた治療を医療者の視点で、施された治療を中心に描かれている。 朽ちていった命 被曝治療83日間の記録 日本放送協会|新潮社|2006年 10月発売 文庫|ISBN/JAN:4101295514 本体価格:438円(税込:460円) 中性子線によって細胞の染色体が破壊される。 染色体の役割は、細胞分裂する際の細胞の設計図をなす。 たとえば、皮膚の細胞なら皮膚らしく細胞を保つ、腸の中の粘膜の細胞ならそれらしく細胞が振舞えるように新たな細胞をコントロールする役割を果たすのだ。 人の細胞の60兆といわれる細胞数の中で、たまたま1-2個正常に作用しないケースがあったとしても、周囲の細胞が概ねその役割を補填してくれる。 ところが、その機能が全身の至る所、中性子線を強く浴びた場所ほど強烈に欠落していく。 新しい皮膚が出来ない、消化管の細胞が生まれてこない。 新しい免疫細胞が作り出せない。 細胞が失われていく、補われない・・・・。 放射能物質を「裏マニュアル」に沿って取り扱い、さらにその手順すら省略して作業して起きた事故。 その当時、事故の一報を聞いて関東から避難するか?・・・と、夏の蒸し暑かった夜に真剣に考えた。 ただ冷静にニュースと情報を探り聞き取ろうとした自分。 どうやら避難しなくても大丈夫そうだ・・・ その後伝えられたニュース知ったことは、柄杓とステンレスバケツで作業していて臨界事故となったこと。 技術の粋を集める最先端の原子力を支えている末端では、ずいぶん荒っぽい作業が現場判断で行われているのだなぁ~ といった感想を抱いた。 その後は、あまり気にもとめなかったが、この12月にはいって本屋にチョッと立ち寄ったとき、この本を手にした。 そういえアノ時、かなり真剣に行動しようとしていたけど、あまりその後を知ることもなかったなぁー という思いで、とりあえず読んでみた。 元旦の夕飯後、一気に読み終えた。 放射性物質による人体への影響が、これほどにまですさまじいものとはツユ知らず・・・・。 私も、科学の知識を持ちうる一人として、放射能=キケン=原発反対、といった短絡なステレオタイプの反応をするつもりもないし、そういった感想をココで展開するつもりはない。 放射性物質によるリスクの認識とそれを回避するための安全性を、人の命という面から問うているのが本書のように思える。 あとがきにも触れられているが、日本の電力の1/3が原子力によるところである。 その周辺の医療機関等で、被爆や放射線障害に対する治療のスペシャリストが皆無に等しいこと。 この事態が、すでに人の命という側面から、技術を捉えていないのだ。 人命が甚だしく軽視されている事態や実態に直面しているワリには、われわれはあまりにも鈍感じゃないのか・・・・? 人に絶対はない。 だとしたら「まさか」や「ありえない」、「安全」と根拠のない判で押したような『原子力=安全神話』から目を覚まし現実的な対応をするべきである。 新潮文庫。 お勧めの一冊。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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