自分探しの心の旅

　３年前に、中学３年生の若さで原因不明の脳梗塞（こうそく）に倒れ、リハビリ

　とトレーニングを重ねていた高校球児がいます。



　中学生のときは軟式野球のエースで、約１３０キロのストレートを投げていま

　した。



　エースとして地区大会に挑み、チームを優勝に導いた３日後、彼は学校で倒

　れます。



　数日間の意識不明から目覚め、状況を理解した息子に、母は泣きながら身体

　をさすってあげることしかできませんでした。



　その、失意のどん底の少年を、三重高野球部の上尾隆一監督が訪ねます。



　花束と硬式ボールを持って見舞いに来た上尾監督は、地区大会の少年の投

　球を見ていました。



　そして、「野球を続けよう」と励まします。



　少年は野球に望みをつなぎ、同校に進学しました。



　それから３年、１３０キロの直球を取り戻した大分県豊後大野市の県立三重

　高３年、広田一弥投手が、１３日、夏の高校野球選手権大分大会のマウンド

　に立っていました。



　「一回きり、走者が出たら即交代」を条件に先発したのです。



　かなり回復したとはいえ、左半身が思うように動かない広田投手には、それ

　が限界と、監督も考えたのでしょう。



　３球連続球はコースを外れ、４球目・・・。


　ストライク！



　球場がどよめきます。



　その後、球は２球続けて厳しいところを突き、ファウル。



　運命の７球目・・・。



　最初で最後の登板は、先頭打者に四球を与え、７球で終わりました。



　チームは２対９で敗退し、広田投手の「夏」も終わりました。



　チームメートは、いつも底抜けに明るい彼を無くてはならない存在といい、「もっ

　と投げたかったけれど、悔いはない」という彼と同じように、すがすがしい表情

　で球場を後にしたようです。



　上尾監督は、「ノースリーからフルカウントになった時は感動した」と語り、３年

　間よく頑張ったと広田投手を讃えました。



　チームメート、監督の支えがあってここまでこれたと語る彼の夢は、プロ野球

　選手だそうです。



　ニュースのスポーツコーナーＶＴＲの後、解説のパンチ佐藤が、涙でぐしゃ

　ぐしゃになりながらコメントする姿に、もらい泣きする単純な私です（笑）。




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