今回の騒動に関して、いろいろ考えさせられた。小学館が(ひいては出版社が)、今マンガ業界をどう考えているのか、それについて自分でも思い当たることがいくつかあるので。雷句誠先生の話とはズレてしまうんだけど、ついでというか。
自分は小学館とは「仕事」はしたことがないので、自分の小学館話は「マンガの持ち込みに行って編集さんに聞いた話」がほとんどなんだけど。2005年の秋、スピリッツに行って没になった時の話(この春に発行した「持込忍法帖・下」という同人誌に描いた内容の抜粋です)。
没の原因として、編集さんには「ネームが多いこと」と、「読むのに時間がかかること」の2点を挙げられた。とにかくスピリッツは、サラリーマンが通勤途中に電車の中で読むことを想定した雑誌なので、一駅か二駅でサクサク読めるマンガじゃないとダメだと。おまけにスピリッツの読者は保守的なので、(足立さんのような)新人には、付き合ってくれない、と。浦沢直樹先生や細野不二彦先生とかは、読者との間に「この人のマンガは面白い」という信頼関係があるから、多少ネームが多くても付き合ってくれる。だけど新人は、とにかく読みやすくする努力をしないと。間違っても「ネームが多くてもその分面白いから読んでくれるだろう」と、読者に期待してはダメだと。
…続けて編集さんが言うには、昨年(この場合2004年)、小学館的には「世界の中心で愛をさけぶ」(セカチュー)がヒットした。内容はどこにでもある恋愛ものなのに、何故ヒットしたか分かりますか、と言う。それは「本を読まない層に向けて売ったからだ」と。で、実際のマンガ業界も、そうなりつつある。これからはとにかく、マンガを読まない人に向けてマンガを売っていかなければならない。今のマンガ読者は、ハッキリ言ってマンガに能動的ではないので。
…と、まあそういう話をされた。小学館の雑誌の中でも「スピリッツ」は、けっこうマンガ好きの読者がいるかと思っていたから意外だった。わざわざ「セカチュー」を例に出すってことは、スピリッツだけではなくて、全てのマンガ編集部の総意なのだろう。もちろんサンデーも。
だから、ひょっとしてその頃から既に「マンガ好きな読者」を相手にしない商売方針に、小学館ごと切り替えていたとしたら、社内に、マンガ家や熱心な読者をないがしろに扱う気風が蔓延するのもしょうがないのかな、と思った。まあもっとも、その編集さんの個人的見解だったかもしれないけどね。終わり。
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