フルトヴェングラー:交響曲第2番
今日はいよいよワールドカップドイツ大会開幕、ということでやはりドイツ音楽。ドイツ音楽はドイツの指揮者で、ドイツの指揮者といえば「フルトヴェングラー」ということで(かなりなこじつけですが)、私の「フルトヴェングラー作品集」コーナーからフルトヴェングラーの交響曲第2番をご紹介したい。<知られざる名交響曲>D.バレンボイム指揮/シカゴ交響楽団 2002年録音(TELDEC 0927 434952) およそクラシック音楽、特に交響曲を聴くものならば、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)の名前は避けて通れない。特にベートーヴェンやブラームスらドイツ・オーストリア系の作品解釈において他の追随を許さず、亡くなって半世紀たっても新譜が発売され続けている。だが、彼の演奏を聴いた人は数多いが、彼自身の「作品」は意外と知られていないのだ。 その作品解釈以上にフルヴェンの名を成さしめているのが、ナチスドイツに残り、多くのユダヤ人演奏家をナチスの手から救ったこと。体制内に残り、死の危険と闘いながら音楽活動を続けた彼を、ドイツ国民は「真の愛国者」と称えた。 フルヴェンの交響曲は三作あるが、この第二番は1944年から45年にかけて作曲された。フルヴェンは友人に、「この作品は私の魂の遺書である」と述べたそうだ。彼はこの作品には自信を持っていたようで、各地で自演し、かつ7種もの録音を残している。(現在CD化されているものは5点)。 演奏時間70分以上の大作だが、第一楽章冒頭のファゴット、クラリネット、ヴァイオリンによるもの悲しげな旋律は、一度聴いたら頭を離れない。時代を反映した色濃い悲劇性が全曲を支配しており、ブルックナー的な総休止も繰り返される。しかし、終楽章はその悲劇的な旋律に対して力強い勝利の凱歌が打ち勝ち、全曲を結ぶ。恐らくロマン派交響曲の歴史の最後を飾る、偉大な作品だと思う。 この曲の日本初演は1984年、朝比奈隆指揮、大阪フィルハーモニー交響楽団によって行われた。<お勧めCDについて> 今や押しも押されぬ巨匠となったバレンボイムがフルヴェンの崇拝者だということは有名な話。その彼が手兵のシカゴ響を振ってこの録音を行ったのが2002年。崇拝者を自認するわりにはずいぶん時間がかかったような気もするし、他の曲ももっとやって欲しいが、この録音は凄い。 恐らくは現在出ている全ての演奏を凌駕しているし、本人の自作自演盤をも超えてしまったのではないかと思わせるほど、丹念に緻密に練り上げられ、それでいて流れも十分に流麗な素晴らしい演奏になっている。 私はバレンボイムの他の演奏は皆今ひとつ好きではなく、この指揮者の実力が理解できないでいたのだが、この録音でその懐疑は吹っ飛んでしまった。シカゴ響の能力、それに録音もとにかく秀逸。こちらもクリックいただけましたら幸いです