『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』実写版 アニメ版 小説版 全部解説!
○「なずな」はなぜ「典道」を振り回したの?○なぜ「永遠の別れ」なの?●なずなの意味不明の行動には訳がある■ドラマ・映画 レビュー■岩井俊二の代表作的名作TVドラマ 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? Fireworks,Should We See It from the Side orthe Bottom?---------------------------------------------------------------------------------------------------■■■もくじ■■■- INTRO -- STORY -■1. 本作について■■2. 岩井俊二の映像詩的短編ドラマ版■『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』■A. マニアックな本格志向の90年代■■B. 映像作家岩井俊二■■C. 無垢と危うさが同居する作家性■■D. 物語と解説■●なずなの意味不明の行動の意味を解説。■E. バッドエンドの「A」の結末とアンハッピーエンドの「B」の結末■■F. 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』がベースの物語■■G. バッドエンドの「A」の結末■■H. アンハッピーエンドの「B」の結末■■3. ドキュメンタリー作品■『少年たちは花火を横から見たかった』■4. 岩井俊二による小説版■『少年たちは花火を横から見たかった』■5. 2017年公開アニメーション映画■『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』■6.大根仁監督制作ドラマ『モテキ』第二話■「深夜高速~上に乗るか 下に寝るか~」▲目次へ▲---------------------------------------------------------------------------------------------------- INTRO ----------------------------------------------------------------------------------------------------さて、このコロナ禍の最中、連日灼熱地獄の真夏日に自宅がヒートアイランド化する中で水分補給や日差しの工夫などの対策に追われた夏が過ぎれば涼しい秋になったと思えば記録的豪雨と防風を伴った猛烈な台風が連続発生との報道に連日警戒する日々へとスライドしやがて秋も深まれば海上の水温が下がるに連れて台風も北上しなくなるだろうと警戒が解けていくのもつかの間今度は雪が溶ける春までの間冬対策が待ち受けるという・・・加えて一体何が目的で何がしたいのか分からない様な異常なあおり運転や傷害事件が局地的に発生し更にはこのコロナ禍でのストレスのハケ口を探す様に誰かが何かでバッシングされ息も出来なくなる程平穏な暮らしを脅かす数々の問題には常に頭を悩ませられます。その様な中 映画界では少しでも平穏に過ごしたいという我々一般市民のささやかな願いと癒やしを求める気持ちに応える様に消費者の足を少しでも映画館へと向いて貰おうとこんなご時世であっても数々の話題作が公開されて来ました。最近ではアニメ映画『鬼滅の刃 無限列車編』の記録的大ヒットが記憶に新しい所ですがコロナ禍以前、最も稼ぎ時となる夏休みに公開された話題作としては2016年に公開されたアニメ映画『君の名は。』大ヒットが新海誠 監督の名を一躍広めた事でも話題となりましたそれに続けと2017年には元スタジオジブリ組による『メアリと魔女の花』世界的キャラクターの最新作『怪盗グルーのミニオン大脱走』常勝のピクサー制作『カーズ/クロスロード』実績のディズニー制作『モアナと伝説の海』世界の人気コンテンツ『ポケットモンスターキミにきめた』灼熱の夏に敢えてぶつけた大本命『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』などのアニメ話題作が公開されて来た中、映像作家 岩井俊二が制作した90年代名作TVドラマを『TRICK』『モテキ』『まほろ駅前番外地』の大根仁が脚色し『化物語』『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之監督とアニメ制作会社「シャフト」がタッグを組み新たにアニメーション映画としてリメイクし映像化した『打ち上げ花火打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』が鳴り物入りで公開されました。という訳で、今回は映画監督岩井俊二の出世作となった1995年に公開された実写版を中心に2017年公開のアニメ版と共に関連作品を合わせてこの様な偏狭でマニアックなサイトでのいつもの5万文字を超える出版レベルな記事ではありますが微力ながらもコロナ禍での混沌と連日の猛暑に対する、僅かばかりの平穏とささやかな清涼を提供できればと夏を舞台にしたこれらの作品をご紹介したいと思います☆▲目次へ▲---------------------------------------------------------------------------------------------------- STORY ----------------------------------------------------------------------------------------------------ある海辺の町の夏休みの出来事、典道と仲間達はふとした会話の中で打ち上げ花火は横から見たら丸いのか平たいのかで盛り上がるプールでは友人の祐介とクラスメートの女子 なずな への告白を巡り他愛のない賭けのレースを始めるがターンを失敗した典道はレースに負けてしまって・・・---------------------------------------------------------------------------------------------------- 解説 ----------------------------------------------------------------------------------------------------▲目次へ▲■1.本作について■本作は岩井俊二監督が映画に進出する以前のテレビマン時代の 1993年に「もしもあの時ああだったら」という2つの異なる結末を持った「What if」タイプのジュブナイル作品として企画され『if もしも』シーリズのエピソードののひとつとしてTV放送用に制作された一時間枠正味45分の短編テレビドラマで1995年に劇場作品としても公開された岩井俊二監督の代表作的な作品です子役時代の山崎裕太、反田孝幸他子役時代の奥菜恵をヒロインに据えた子役を中心とした配役に加えベテラン田口トモロヲや光石研人気タレント蛭子能収など個性派俳優が脇を固めとある海辺の町を舞台に少年と少女が繰り広げる一日限りの駆け落ちを斬新な映像と瑞々しくもノスタルジックなタッチの映像が印象に残る岩井俊二の代表作として現在もファンの間で根強い人気を持つ一風変わったロードムービーとしても見ることが出来る作品でもあります。又本作から6年後の99年には『少年たちは花火を横から見たかった』というタイトルで岩井俊二自ら監督、企画した撮影当時を振り返るドキュメンタリーと撮影当時のメイキングに描かれる事のなかった物語を交えた映像作品が発表され更には本作から24年後の2017年には『化物語』『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之監督とアニメ製作会社「シャフト」の黄金コンビによって装いも新たにリメイクされたアニメーション映画が制作されるなど岩井俊二作品中でも時代を超えて制作され続けてきた唯一の作品でもあります。【Blu-ray】化物語 Blu-ray Disc Box [ 神谷浩史 ]価格:24640円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)【Blu-ray】魔法少女まどか☆マギカBlu-ray Disc BOX 【完全生産限定版】 [ 悠木碧 ]価格:22000円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)▲目次へ▲■2. 岩井俊二の映像詩的短編ドラマ版■【DVD】打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? Third Edition価格:3293円(税込、送料別) (2021/8/8時点) 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?監督/脚本:岩井俊二出演:山崎裕太/奥菜恵音楽:REMEDIOS 撮影:金谷宏二 編集:茶園一郎企画:小牧次郎/石原隆製作会社:フジテレビジョン/共同テレビ□TV放送版□(語り手:タモリ)『if もしも』エピソード16(オムニバスドラマシリーズ)放送時間:木曜日 20:00 - 20:54(54分)放送:1993年8月26日□映画版□TV版再構成バージョン配給:ヘラルド・エース / 日本ヘラルド映画公開:1995年8月12日上映時間:45分■解説の前に、百聞は一見に如かずと言う事でまずは岩井俊二が監督したドラマ版の鑑賞をする事をオススメします内容も正味40分程度の短編ドラマですのでサクッと鑑賞できます。現在鑑賞するには、「Amaz○n Prime ビデオ」や「楽天TV」で300円か400円程度の 有料配信で鑑賞可能です。レンタルではT○TAYA宅配レンタルで、ネットで無料会員登録すれば「DVD単品レンタル」できます。コチラは配信と違って、レンタル代の他に送料がかかりますので、ご注意をまあ、どうしても無料で観たいという方には大きな声では言えませんがY○utube のサイトに移動して、キー○ードに「【秘蔵映像】打ち上げ花火、下からみるか横からみるか」と、入○すると「購入またはレンタル」有料配信動画の他にモニョモニョ動画が○ットするのでそれをモニョモニョ再生してモニョモニョ鑑賞・・・wなどを利用してご鑑賞頂いてからレビューを読むことをオススメしますW■さて、本作は元々は、90年代にフジテレビ系で人気を博した『世にも奇妙な物語』のレギュラー放送の終了を受けてスピンオフシリーズとして誕生した『If もしも』シリーズの中の番組エピーソードのひとつとして制作されたテレビマン時代の岩井俊二が担当した短編ドラマでした『Ifもしも』シリーズは物語の途中で2つの選択肢が提示されそれぞれを選択した結果変わっていく結末を順番に描くというお題で様々な演出家、脚本家を起用して連作した短編ドラマシリーズでゆえに本作はその枠内で作られた「企画作」でもありました。▲目次へ▲■A.マニアックな本格志向の90年代■本作が放送された90年代は本作を含めてこの様な比較的マニアックなタイプのドラマシリーズがゴールデンの時間帯に放送されていた所にひとつの特徴があった時代で深夜の時間帯になると 三谷幸喜 の同じ脚本を毎回異なった演出家、スタッフ、キャストを起用してドラマ化し河野圭太、若松節朗、星護、鈴木雅之などの三谷作品常連監督の他井筒和幸、伊丹十三、杉田成道などの映画監督や変わった所ではタレントの木梨憲武や、舞台演出家の大家 蜷川幸雄など異なる演出家によって毎回同じ脚本を映像化する『3番テーブルの客』という実験色の強い極め付きとも言える番組まで登場するなどこの時代は今とは全く異なった、バブル経済ならではの高級志向が大衆化したニーズに応えたドラマの深みを嗜むタイプの番組が数多く制作されたテレビ制作者達にとっての黄金時代という印象がありました特に『3番テーブルの客』という番組は・・・もしアノ監督がアノ映画を映像化していたら・・・という様な映画ドラマファンの間で常に論議を呼びながら実際に確認する事の無かった「作家性による仕上がりの差異」を視聴して確認出来る非常に貴重なシリーズとなりました。この様にドラマが過渡期にあった90年代は良いドラマを制作して視聴者に提供するという従来の番組作りとは別に80年代中期から確立されてきた「深夜の枠内」という一般視聴者とは異なる層が視聴する時間帯を利用した様々な脚本家、演出家の作家性に着目する実験的番組作りも支持を受けた時代でもあった事から日本の映画ドラマ界の中からも その様な経緯から才能溢れる若き演出家が頭角を現す機運が高まり従来の演出家とは性質の異なる 映像作家 と呼ばれる様な岩井俊二を始めとする様々な才能あふれる映画監督が誕生する土壌が出来上がって行ったとも捉える事が出来言わば本作『打ち上げ花火~』とはその様な時代の流れと要求から生まれた生まれるべくして生まれた作品と言えるものがあったのかも知れません。ちなみに本作が『If もしも』シリーズとして制作される際には「やり直しを描いたり、一方が空想で終わるのはNG」というシリーズのルールを無視したプロットになっていたり本作のタイトルが、制作側の意向で差し替えられたもので岩井監督は『少年たちは花火を横から見たかった』というルール無視のタイトルを用意していたりとスタッフ側と度々揉める程制作中に作品が一人歩きを始めて番組の枠内に収まり切らなかった造りは稀代の異才が制作する作品らしい裏事情があった様ですがこの様に局の意向には絶対的に従うというテレビ映画界の「掟」の様なものが不条理な権力に立ち向かう反骨精神やリベラルな立場での断固とした意思による拒否とは異なり新人類の様な草食系の若者によって何となくなし崩し的にかわされる時代が来た所に80年代まで脈々と様式が受け継がれながら衰退して行った邦画界が変化を余儀なくされた時代の節目を感じさせる作品という印象を受けるものがあります放送後岩井俊二監督はテレビドラマとしては異例の日本映画監督協会新人賞を受賞しそれを受けて映画用に編集したものを1995年に劇場公開されるなどテレビドラマとしても異例な作品となりました【書籍】三谷幸喜創作を語る [ 三谷幸喜 ]価格:1100円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)▲目次へ▲■B.映像作家 岩井俊二 ■岩井俊二 (画像参照: wikimedia)岩井俊二 は90年代に一世を風靡した人気映画監督で代表作(95)『Love Letter』(96)『スワロウテイル』にも見られる「岩井美学」と呼ばれるセピア色的浮遊感を感じさせる独特の映像美が特徴の日本でそれまで一般的に余り使われなかった映像作家という言葉を定着させた日本を代表する映画人の1人です。岩井俊二は、音楽や映画が硬質で乾いたスタイリッシュなタッチで制作されるのが流行していた80年代後半にMV監督としてデビュー、その後、セレブタレントによる大人のラブコメ作品が流行りテクノロジーの発展による未体験映像エンタメ作品の様なバブルを象徴するセレブ感の高い作品が人気を博していた90年代のテレビ界に進出します。93年に脚本監督したテレビドラマ『打ち上げ花火・・・』が認められ独特の作風が人気を博す映画監督としてキャリアをスタート、99年には初めてのドキュメンタリー作品として自身の作品『打ち上げ花火・・・』のメイキング作品『少年たちは花火を横から観たかった』を発表します。2000年に入りますと『エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督の実写作品『式日』をプロデュースし自身が俳優としても出演しました。世がネット時代へと向かい始めるとBBSを利用した大衆参加型ネット小説を企画し、完成した作品は01年『リリィ・シュシュのすべて』というタイトルでフィルム作品の様な効果を出すデジタル撮影によって映像化されました。03年には当時としては珍しいWEB配信という形を取って『花とアリス』を公開するなど、様々な映像作品の制作と数々の話題作の発表を行ってきました。岩井俊二監督は早い段階で映画製作にデジタル技術を導入してきた事からフィルム制作による映画監督という枠にはまらない従来の邦画の映画人とは全く異なったアプローチで様々な映像作品や映像関係作品を制作し近年はアニメーション制作にも手を拡げるなど常に新たな表現の可能性を求めて日本の映画界に話題を提供し続けてきた異色の映画人と言えます。その一方、活動拠点を海外に移すなどの、世界を視野に置いたグローバルな活動を続ける中で時代性を考慮したアプローチの違いはあるにせよ日本人なら誰もが理解できる様な懐かしさに満ちたノスタルジーを感じさせる映像表現で自身がリスペクトする市川崑作品を彷彿させるような邦画の伝統に則った表現法をベースに持つ映像作家ならではの日本的映像美 を思わせるものがある事からも岩井俊二監督は実は極めて正統派 な映画作りを目指す映画人でもあるのかも知れません。【Blu-ray】Love Letter[ 中山美穂 ]価格:4224円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)【Blu-ray】スワロウテイル [ 伊藤歩 ]価格:3735円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)▲目次へ▲■C.無垢と危うさが同居する作家性■岩井俊二監督はその独特の作風を称してしばしば、地に足の着かない90年代バブル世代感を背景にした多感な十代のふわふわした心情を懐かしくも新しい独特の空気感で映像化する所に定評があるとよく語られますが(94)『PiCNiC』や『スワロウテイル』の様な終末系に見られる荒涼とした息苦しい世界観で残酷描写を多用した作品を制作している事からもむしろ 近年映画監督としても名を馳せた『エヴァンゲリヲン』の庵野秀明監督の様な人物の作風に近しいものがある様な印象を受けるものがあります。自身の出世作となった『打ち上げ花火・・・』と自身のヒット作となった『スワロウテイル』とでは作風がまるで違う印象がありますがどちらの作品にも何かに囚われた様な境遇にあり今いる世界と外との境界線の様なものがある事を意識した何事にも達観した様な主人公が登場しその様な異色な主人公に中庸な人物を絡ませてそれらの人物を通して主人公の観ている世界を浮かび上がらせながら特別なドラマを生み出している点に於いて共通しておりこの辺りの作風が文学的と言うよりは80年代コミックス的なのですがSFアクションやダークファンタジースポーツを通して対決や友情や絆を熱く描いてきた少年漫画のタッチからよりはくらもちふさこ や 槇村さとる 作品の様な愛と憎しみと喝采と苦悩をドラマチックに描いてきた少女コミックスの様式の方に、作品への影響が見られるという所に「多感な十代のフワフワした心情」と語られる理由がある様に思われます。同時に、先程の庵野秀明の代表作『エヴァンゲリヲン』でも描かれてきた孤独と残酷さを孤立感で打ち消した様な心境の中で何かに囚われた様な人物の眼を通して観た様な生と死、始まりと終わりを同じ目線で捉えるかの達観した様な側面を持った閉鎖的作風に特徴がある映像作家という印象を受けるものがありますこの様な印象を受けるのは、アメリカの巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督がファンタジー映画の巨匠と呼ばれる理由にファンタジーと厳しい現実を同居させる類まれなバランス感覚の持ち主である所に理由があるのと同様であの大ヒット作 (74)『JAWS』のサスペンス感に5感で感じさせるイベント性をもたらしたのも浜で無邪気に海水浴を楽しむ子どもたちがいつサメに襲われるか知れない未曾有の恐怖に根ざしたものが普段は平穏に見えて突如牙を剥く「海」そのものにあった様に本作で描かれる無垢な子どもの世界がいつ壊されるかも知れないいつでも牙を剥く大人の社会がすぐそばに隣接しそれは垣根一枚で隔てられている様な危うい存在でもあると言う事が作品内でしっかりと描かれている所に危うさと隣合わせの無垢さが際立つ独特の作風を生み物語がある様で無い様な感覚的なタッチの脚本が相まって俗に言う「フワフワした」様な印象が強まる鑑賞感を生む要因となっていったのかもしれません従って 岩井俊二の作品は、殊更多感な「フワフワした」心情を描く所に特徴がある訳では無く常に何かが壊れた様な環境や境遇にある人物達を描く事を通してその様な特殊な境遇の中で一瞬覗かせる絶望の中で一筋の光が差し込む様な無防備な「素」の表情を捉える所に骨頂がある故の作風だという見方もする事が出来ます。後、物語があるようで無いような脚色にすべての伏線が回収されるカタルシスを感じられなかったり物語が着地するべく地点で帰結する結末感が無かったりと、映画のセオリーを無視する様な造りになっている事に付いては、ハリウッド超大作映画で目が肥えた若い世代達がこれまでの日本映画に対して感じていた日本映画=(演劇+実直+任侠)÷退屈という図式を払拭する様な建設的なものよりも、感覚的なものを重視する経験と知識ではなく、瞬間的な感性で映像を撮る造られた「物語」に「演技」を付けて「撮影」して収録するのでは無く予測が出来ない「行方」に「ドラマ」を感じた「映像」を切り取るという「既存のシステムへの破壊と再生」を目的とした新時代の映画の在り方を追求する作品作りに大きな理由がある様な印象を受けました。これは、インディ・ジョーンズシリーズや スター・ウォーズ 旧三部作を脚色した米国を代表する作家 ローレンス・カスダン が脚本を担当し『アポロ13』『ダヴィンチコード』の巨匠ロン・ハワードが監督した超ベテラン映画人達が総力を振り絞って制作したスター・ウォーズのスピンオフ作品『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』がかつての閃きは微塵もない年老いた映画人達が老骨に鞭打ち打って作った様な余りにも「演劇的」「予定調和」が過ぎた錆びついたビジュアルと演出の何のワクワク感も刺激も無い、まして若者に刺さらない退屈な凡作に仕立て上げた事に対して旧時代の映像作家ジョージ・ルーカスから稀代の映像作家 J・J・エイブラムスへ と制作が受け継がれたスター・ウォーズの続三部作の第一作『フォースの覚醒』がノスタルジックに溢れた感覚的でスリリングな傑作になりながらも賛否両論となった事と状況が似ており作家性も、映画の規模もまるで違いながら海を隔てた海外で、同じ様な状況を産んでいた所に非常に興味深いものを感じるものがあります。話を戻しますが・・・w岩井俊二の出世作となった本作が岩井俊二作品の中でも特別な作品としてファンの間で語られるのも90年代当時にビデオ撮りのドラマでは見た事の無い映画フィルムを感じる質感の画面で描かれる小路の角で母親に連れ戻される場面での揺れながら細かく視点が変動するカメラワークやヒロインなずなを演じた当時14歳の 奥菜恵 を絶世の美少女に撮り上げたラストのプールの奇跡のショットで積み重ねられ本当の別れによって語られる永遠に記憶される物語が描かれる岩井俊二監督の作家性に人々が惹かれるからなのではないかと思うのでした【書籍コミックス】いつもポケットにショパン 第1巻(全3巻)(集英社文庫)[ くらもちふさこ ]価格:770円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)【電子書籍】ダンシング・ゼネレーション 1 (全4巻)[ 槇村さとる ]価格:440円 (2021/8/8時点)▲目次へ▲■D.物語と解説■このドラマは、房総半島にあるとある海沿いの小さな街を舞台に地元の小学校に通う少年 典道(演:山崎裕太)が夏休みの登校日の教室で打ち上げ花火が丸いか平たいかで友人たちと盛り上がった夏祭りの日気になるクラスメートの少女なずな(演:奥菜恵)と一日限りの「駆け落ち」をノスタルジックに描いたジュブナイル作品で本作で認められた脚本、監督の岩井俊二が映画監督としてデビューするきっかけを作った岩井俊二の代表的作品でもありますとある海沿いの街での最大のイベント花火大会の当日での出来事両親が営む小さな釣具店の長男 典道と医者の息子で友人の祐介 (演:反田孝幸)を含む少年たち5人は今夜の花火大会をネタにして 打ち上げ花火は丸いか平たいかという他愛のない会話で盛り上がる様な どこにでも居る小学生の子供たち。クラスメートの女子(演:奥菜恵) なずな は典道が気になる女の子で他の子どもたちに比べると違和感がある位大人びた少女。この典道を含む少年たちと 大人びた少女なずなを中心とした子供から大人へ成長する事を意識し始める少年少女達のある夏休みの特別な一日の物語が描かれます。特別と言っても小学生の男子の輪の中に居る時、突然気になる娘と眼と眼があったり気になる娘に首に付いたアリを取ってくれと言われドギマギする程度の若干中庸な平均的小学生少年とその仲間達と一日で終わらせる遊びの様な家出を駆け落ちと称する大人びてはいても子供だと自覚している少女が主人公として描かれるドラマの上の特別さなので架空の都市を舞台にした自身の出世作や自身が俳優として出演したアニメ監督の初実写作品や24年後にアニメ化した制作会社の代表作などの岩井俊二自身や自身を囲む関係者達が生み出す作品に共通して見られる非現実的現実世界を舞台にした問題作的作風が極めて強い傾向にある作品作りで知られている映像作家だとしてもミニスカになった唐沢寿明の奥さんがバズーカでマフィアを皆殺しにする荒唐無稽さやスティーヴン・セガールの娘と共演した少年たちが神話になる残酷さやツンデレ彼女に猫女鬼娘幽霊少女達に囲まれたハーレム状態の化物ハンター男子のアニメ物語だったり少女たちが契約で背負う過酷な運命アニメなどの衝撃的内容とは無縁の子供時代の切ない思い出を回願する様な極めて健全な内容になっています。以下、なずなの意味不明の行動の理由をE.F.G.H.パートの中で順次解説していきます。▲目次へ▲■E.バッドエンドの「A」の結末アンハッピーエンドの「B」の結末。■『ifもしも・・・』という番組には、物語を作る上での「ルール」が設定されており物語の途中で「A」「B」という選択肢が示されそれぞれの結末を描くという仕様の元に脚色するという番組側からの約束事がありました。しかし、友人の祐介がなずなへ告白する事を掛けた水泳50m競争で典道がターンをしくじって負けた後の結末が「A」典道が勝った後の結末が「B」という形で描いている為主人公が物語内で結末を選択するという番組ルールに則っていない造りとなった事が制作当時、上層部でも問題になりました。それに付いては後ほど解説するとして・・・ともあれこれは、時間が戻って繰り返すといったファンタジー的要素で描かれたものでは無くあくまで結末「A」が終わると次は「B」が始まるという一風変わった流れを持った以外は、子供達の日常を描いた、通常の「ジュブナイル」作品でしたが正にこの物語の流れを持った所に本作が岩井俊二作品の中でも特別な作品と語られる大きな理由がある様に思うものがありました。▲目次へ▲■F.宮沢賢治『銀河鉄道の夜』がベースの物語■【文庫本】新編銀河鉄道の夜改版(新潮文庫)[ 宮沢賢治 ]価格:473円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)『打ち上げ花火・・・』は岩井俊二が言う所の「本当の別れ」を描いた作品で2017年に発刊された『打ち上げ花火・・・』の小説版には新たなプロットとして宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をモチーフとしたEpisodeが加えられていました。これは、『銀河鉄道の夜』の親友との永遠の別れが理解できなかった主人公が列車に乗って親友と共に旅をする事を通して本当の別れを知る「A」の結末で出来なかった本当の別れを 「B」の結末で共に旅をする事を通して知る物語と捉える事が出来る事から『銀河鉄道の夜』が持つファンタジックな側面を通して帰結する形の「別れの物語」を大人の扉を開こうとする少年と大人の世界に逃避したい少女が子供時代が終わる直前にまるで遊びの様に行った「駆け落ち」として描いた中にプラネタリウムが星座を映す様に「銀河鉄道的ファンタジー」を日常生活の中に 投影 した所にこのドラマが特別な作品として語られる大きな理由がある様に思われます▲目次へ▲■G.バッドエンドの「A」の結末「A」の結末では、典道 の家での夏休みの登校日の朝の模様から始まり反抗期が始まった息子におかしなちょっかいを出す子離れが出来ていない様子の男勝りな母親とそんな女房に頭が上らない恐妻家の父親という見るからに欠点ダラケな愛すべき両親に対して駆け引きの様に上手く立ち回る息子とのやり取りが暫く描かれた後両親とのやり取りを終えた 典道 は家から出たとたん開放された様に待ち受けていたかの如く勢いよく走って来た友人達と直ぐ様合流して全速力で学校へ向けて駆け出して行くと共に元気で子供らしい姿が顔を出し大人の社会とは隔絶された一点の曇も無い輝く子供の世界が画面いっぱいに拡がって行く様が描かれて行きます一方、小学生にしては大人びた少女 なずな は両親の離婚による引っ越しという家庭の事情で今日が学校最後の登校となるというのにクラスメートの子達に何も告げる様子は無いという普段から女の子達のお喋りの輪の中に入らない教室でも孤立した少女で日頃から なずな に告白すると言い続けて何をするわけでもないまだ遊びの楽しみと恋の愉しみの違いも分からない典型的小学生男子の典道の友人祐介 の言動を知ってか知らずかプールの50m競争で典道に勝った祐介を好きでも無いのに好きだと言って花火に誘ってはいたいけな少年を惑わす様な真似をしては突然のなずなの誘いに動揺し理由を付けて逃げ出した祐介の行為に対して人は常に約束を破るものだと達観した様な諦めた口調で言い放つ様な人の心を試す小悪魔の様でも誰も信じられず心を閉ざした子供の様でもありそんな、まるで中学生の様にも見える なずな は子供らしく平和で無邪気に振る舞う周りのクラスメート達を拒絶する様な態度を取る少女として描かれます。典道は、祐介とプールでの対決でターンの時にプールサイドに足をぶつけた事で負けた後なずなに花火に誘われたはずの祐介が花火が横から見ると丸いか平たいかを調べに出かけようと誘ってくるのを不審に感じながら、なし崩し的に行くこととなり、一端帰宅するのですが一端帰宅した自分の部屋に勝手に上がっていた祐介に驚きます。浴衣姿の なずな が、スーツケースを引きながら約束の時間に 祐介の実家の医院へ向かう中、典道と祐介も、花火探査で仲間と合流する為出かけプールで引っ掛けた足が怪我している典道を見た祐介は実家の医院で診てもらう事を、頑なに勧めながらもし なずな が居たら、行けなくなったと伝えて欲しいと言い約束を破ろうとする祐介に怒る典道を尻目になずな に告白するという話も、なずな が告白してきた事も、なずな に花火に誘われた事も、なずな が好きだと話していた事も、全ては「シャレ」で「本気で好きだったわけ無いだろ」とうそぶきながら気になる女子に対して、仲間の前では「好き」を連呼するだけの大人ぶった態度をひけらかして来た祐介は何の心構えの無いまま突然降って湧いた「恋」の誘いに前に当惑し、どうして良いか分からず怯えて逃げ出す様に仲間の元へ行ってしまいます。大人の社会には、ドロドロの人間関係にある男女や人を騙す様な悪い人間がウジャウジャ居る事など梅雨ほども知ら無い、探検気分に浸っている屈託の無い少年の顔をした旧知の間柄の仲間たちの輪に安堵する様に戻った祐介は仲間たちと共に花火会場へ移動しおでん屋台で一杯引っ掛けている蛭子能収扮する男に花火に付いて無邪気に声をかける祐介達小学生の子供に対して「横から見たら平べったい」と適当な事を言って花火職人だと思わせる様に、からかって悦に浸る様な悪くてダメな大人の言うことを真に受けている時祐介の実家の医院で治療を終えた典道は祐介を待つ 浴衣姿の なずな を見て「祐介はこないよ」と伝えるとその答えをとうに知っている様に「そう」とだけ答えて医院を出て行く なずな に対して本来、祐介が受けるはずの罪悪感を感じる事になります。医院を出ると、行き場の無い様に立ち尽くす なずな の姿があり典道は なずな の後を追う様に なずな に付いて行くと道々、自分は裏切られる血筋で裏切りは慣れているという話を聞かされながら本当は典道を誘いたかった事を知り誘ったら 祐介の様に裏切ったか?と問われると「俺は裏切らないよ」と答えすると振り返って眼を合わせる なずな に「裏切るよきっと」と言われ堀の角へと消えて行く なずな に何も言い返せないまま立ち尽くしたその時「A」の結末ラストでは「伝説的ショット」と語られる市川崑の影響が見られる細かいカット割りと躍動感あるカメラワークが話題となった「堀の曲がり角の場面」が登場し堀の角から飛び出して来るなずなを母親が全速力で追いかけて来る異常な光景を眼にした典道になずな は スーツケースを手渡し逃げ母親は 典道をすり抜けて嫌がる なずな を抑え込み引きずる様に連れ戻すと見かねてスーツケースを手放さない典道を鬼の様な形相で睨み付けてスーツケースをもぎ取り典道に助けを求める なずな に差し伸べる手を力任せに振りほどいてまるで何も無かったかの様に堀の角へと消え去り後には なずな の鳴き叫ぶ声だけが響き渡る中無力感に陥り立ち尽くす典道を残した路地に一体アレは何事かと、このタイミングで仲間たち一行が現れ、「俺のせいじゃ無いよな」という表情で典道を見る祐介を、力任せに殴りつけると「アノ時俺が勝ってれば」とまるで全てが自分のせいでこうなったかの様に責任を感じながら罪悪感と無力感に苛まれ、歩き去る典道を最後にバッドエンドを迎えて終了となります▲目次へ▲■H.アンハッピーエンドの「B」の結末。■続いて「B」パートは、プールの50m競争で典道が勝った瞬間から幕を開けますが今回は典道となずながバスで駅に向かう「一日限りの駆け落ち」 と祐介と友人たちの 打ち上げ花火が丸いか平たいか確認する「花火検証の探検隊」とが別行動で物語が進んで行きこれまで居心地の良かった子どもの世界から大人への階段を登り始めるなずな 典道 裕介達一行のそれぞれの 成長と別れの旅 が描かれて行きます。内容としては、なずな 典道の方は東京に行くのかと思えば急に帰ったり祐介一行は、露店のおでん屋で適当な事を言って吹聴するダメな大人を代表する様な蛭子能収扮する男の言葉を鵜呑みにしたりと目的があって無い様な思いつきの行動が描かれ物語があって無いものの様な演出が続きますがこれは、どちらも子供ならではの無軌道で混沌とした様をまずは印象付けたい狙いからの脚色だと思われます。一方で、なずな が 典道 対して取る気まぐれで理解できない小悪魔的な行動の数々は目に余るばかりでこれに付いての説明は何も無いままドラマは終わってしまうので一見するとこの子は一体何をしたかったのだろうと思う所なのかもしれません。思うにこれらのなずなの一連の行動は本作の「成長と別れの物語」というテーマを理解する上での重要な「鍵」と考えられるのでなずな の一見理解不能な行為も特別な意味がありそれは物語の中で微妙に貼られたなかなか見えにくい数々の「布石」から見えて来るものがあります■さて、BパートではAパート冒頭で、親元に離婚の報告を電話した後、諸事情が書かれた封書をなずなに渡すなずなの母親 の描写やなずな が孤立している理由や典道に告げる「裏切るよ」というセリフなどの良く分からなかった所が、Aパートラストでの堀の曲がり角で家出が見つかって逃げるなずなを人目も気にせず全速力で追いかけた末 力任せに取り押さえ見てられ無くて思わず加勢しようとした典道を鬼のような形相で睨みつけながら泣き叫ぶ娘を問答無用に引きずって連れ帰るといったなずなの母親が典道の前で見せた衝撃的態度によって、なずなの母親が離婚という人生の大事な決断を下した事を朝の慌ただしい中でまるで嫌いな会社を辞める様な口調で親元に電話で報告をし離婚による転校の知らせという親元にとっても児童にとっても学校にとっても大事な事を直接学校や担当教師にでは無く封書にしたものを娘に持たせ教師に手渡しさせてそれで済ませ様とした事や家出しようとした娘を、力任せに引きずって連れ帰る様な言葉で子供を諭せる人物とはとても思えないデリカシーにも人への考慮にも欠ける大人としても親としての行動にも加えて人としても何かと問題のある人物である事が見えてきた事で、そんな母親と、夫婦関係が破綻して出ていった父親との大人の事情に振り回されて正常な子供時代を送れなかったなずな の家庭の事情が浮かび上がり、加えて、なずなが子供らしく平和で無邪気に振る舞う周りのクラスメート達を拒絶する様な態度や典道を気まぐれで振り回す行動にも両親の醜い言い争いや納得出来ない大人の都合に始終晒され続けて子供ながら解消する事の無い過剰なストレスを抱え込んで来た家庭の問題 が影を落としている事が見えてきてなずな というキャラクターの見方が変化していく中で堀の曲がり角から急に、プールの対決へと場面が戻りそこではAパートとは異なり、典道が勝つ結末となり典道と花火を見る約束をして嬉しそうにプールを後にする なずな を見る、少しだけ「大人の階段」を垣間見た様な、締まらない顔をする典道からBパートが始まります。■教室では花火が丸いか平たいかを調べる探検の話で盛り上がる仲間たちをよそになずなとの約束で頭が一杯で話を聞いて無かった典道は、何でそんな話になってるの?となり家では、部屋に勝手に入ってゲームに夢中になる祐介を横目に、一瞬、なずな の約束を断る気持ちがよぎり、友人達と過ごす、何の迷いも無いいつもの子供の時間を謳歌するか、なずな と花火を見に出かけて、男子の輪から外れてしまうか迷っている所で浴衣姿にスーツケースを引きずりやってくるなずな の姿が眼に入ります。花火が丸かろうと平たいだろうとどうでも良いだろうと至極まともな事を言って共にエスケープしようと誘う祐介に困惑しながら、何とか理由を付けて下に降り祐介が居る手前、見られちゃまずいと裏口のドアをノックしようとする なずな の手を制止します。そんな煮え切らない典道に行かないつもりかと失望するなずなに行くから待っててと答えながら2階からヤッパリ行くから一緒に行こうぜとこのタイミングで告げてくる祐介に驚いているとどうするのか板挟みになった典道は なずな に手を取られてその場から逃げ出す様に走り出す なずな に引きずられる様に共に走って路地を曲がって行くのですが下に降り来た祐介にその姿を見られてしまいます。怒る祐介を背に 典道と なずな はチョットした冒険をした様な様相でバス停までたどり着きます。面白かったと、いたずらな笑顔で言う なずなはスーツケースの中身は何と聞く典道の前でどんな反応をするのか試す様にああ~開いちゃったwと、わざとスーツケースの中身をあけて、中身が道にばらまかれて困る典道を眺めながら自分に対してドギマギする男子の様子を愉しむ様ないたずらな態度を取ります。典道が 旅行に行くの?と尋ねると 旅行?どこに?と答え花火を見に行くはずなのに、やって来たバスに乗り込んだりする一体何がしたいのか 行動の意味が掴めない なずな に典道は仕方なく付いていく事になります。一方、好きだった娘を横取りされた様な形で典道に出し抜かれた祐介は、始終荒れながらもはや目的を失った様な様相で仲間と共に彷徨うように、灯台へと向かいます。バスに乗った二人も、目的も無く 何処へ向かうのか定かでは無く、好きな所に行こうと言い、東京?大阪?と訪ねてくる なずな に異変を感じた典道は、家出をして来た事に気付くのですが、なずな はそれをキッパリと否定して「駆け落ち」だと言い張り「死ぬの?」と 恐る恐る訪ねてくる典道には何も知らない子供に苛つく様に「それは心中っつ」と言い放つのでした。一方の 花火組は、相変わらず苛つく祐介に毒されたのか近道だと称して花火が見えない道を選んだ相手を罵り始め一旦はおやつタイムで収まったかに見えた仲違いが目的の灯台が見えない程、長距離を歩く羽目に陥ると仲間割れが再燃焼し、花火組の灯台までの探検は典道の出し抜きから始まった「波紋」が祐介を介して少年達の「輪」にも「異変」を生じさせたかの様な様相になって行きます。典道たちが乗ったバスは駅に到着し、バスから降りて電車の時間を確認した なずな は今度は典道にケースを持たせてトイレに同行させてトイレの前の塀一枚隔てて着替え始め街へ付いたらホステスになって食べさせてあげると話を進め出します。そんな思いも寄らない事に巻き込まれた典道でしたがこのままなずなを放っておいて逃げ出す訳にもいかずかと言って共に都会に出るならば、何の変哲もないこの駅は二度と還れない「大人の世界」に繋がる入り口と化してしまいます。そんな事を考えていると、口紅を付けてドレスを纏う なずな が現れ16歳に見える? と尋ねられ大人とも子供とも違うまるで母親に隠れて服と化粧品を拝借して大人びる思春期に入る美少女がそこに居ました。駅舎に戻り切符を買わなきゃと告げる なずな に、腹をくくる様に改札へ向かう典道でしたが、切符を買っていない なずな を変に思い切符は?と訪ねると 切符?何の切符? と聞き返され電車の と答えると 電車がどうかしたの?と返され挙げ句、バスが来たから帰ろうと言われあの、トイレの前の話は一体何だったんだ と思いながらなずなと共に駅を後にするのでした。一方の花火組は、さっきの仲間割れは一体何だったんだ と思う様なサッカー応援歌『WE ARE THE CHAMP』を合唱しながら夜道を歩き俺はなずなが好きだー、俺は先生が好きだー、俺は観月ありさが好きだーと思春期の男子が開放された場所で、定番の叫びをしながら仲間の失恋の傷をまるで自分の事の様に癒やしている中、典道たちは 夜の学校のプールへ侵入し、これじゃあ泥棒だぞ と言う典道に私泥棒になろうかな、何盗む?この水全部?と取り留めのない会話をしている時、夜空に花火が上がります。それがまるで、この「駆け落ちゴッコ」の終わりを告げこの後、母親と共に街を去らなくてはならない「現実」に還る「合図」に感じたかの様に大切な何かが終わった様な表情で夜空を見上げた なずな は突然、服のままでプールに入り、沈み始めます。典道の心配をよそに、再び浮かび上がった なずな はこれまでの事は、自分の「境遇」を受け入れる為の「儀式」だったかの様にこれまで理不尽な大人たちに、尽く裏切られて来た中で唯一裏切らずに、最後まで付いて来てくれた典道 に癒やされた事に、満足し子供時代にかかった一時の「熱」を冷ます様に、プールの水を浴びて全てを振り払い、自分の「現実」を受け入れる事に納得した後水面に反射する街灯に照らされてこの上なく美しい笑顔を見せるのでした。典道は 子供の顔に戻った なずな と共に無邪気にプールではしゃいだ後二人で夜空を見上げて花火って横から見たら平べったいのかな?今度会えるのは二学期だね、楽しみだね と言い残しプールを後にする なずな からそれは永遠に来ない事を察するのでした。花火組が灯台に達した頃には、打ち上げ花火は終了した後で、一行が落胆していた頃、祭りの夜店で賑わう中を、一人彷徨う様に歩く典道は夜遅いから教え子には見られないだろうとすっかり油断して彼氏と歩く先生と出会います。仲睦まじく歩く姿を不意に教え子に見られた先生は苦し紛れに彼氏の存在を隠そうとして花火は横から見ると平べったいだろうと誤魔化す様を見て大人も俺と一緒じゃんと、同病相哀れむ様な気持ちでその場を去ろうとしますが、彼氏の計らいで残り玉の花火を見せてもらう事となり典道のそばに寄り、子供を見つめる眼で花火を仰ぎ見る大人達をよそに典道と灯台の一行は、それぞれ違う場所で同時に花火を眼にしながらそれぞれが、それぞれの場所で、それぞれの出逢いと別れを経験をし打ち上がっては鮮やかに広がり、やがて消えて行く花火の様に、希望に満ちた子供の日々の終わりが近い事を感じながら夏の終りの最後の花火の煌めきを、見つめる典道だったの で し た・・・。■このドラマを見た視聴者の多くは、なずな が典道に取った一連の行動の意味が分からず「気まぐれな小悪魔的な態度」 という様に捉えるのも多くを語らず、全てを映像で語ろうとする岩井俊二の演出に理由があると思われます。従って「物語」ではなく、「映像」の方に注意を傾けて観てみますと、なずな が駅で年上に見えるように着替えたり突然気変わりを起こしたり、夜の学校に忍び込み服のままプールで泳いだりした行動の理由は「気まぐれな小悪魔的な態度」というよりは子供扱いされ続けて話も聞いて貰えず約束も守ってもらえないで自分たちの都合ばかり押し付けてくるまるで子供のまま大人になった様な両親のやる事を見て来てあんな大人と一緒に居る位なら早く大人になってしまいたいという自我を芽生えさせつつあれが大人の姿なら大人になんてなりたくないというまだ子供のままでいる自分との間で相反する気持ちが常にせめぎ合う思いがあってまだまだ自立と逃避との区別が付かない駆け落ちをしてしまいたいが子供だから無理という心理が「一連のチグハグな態度」に現れているのでは無いかという印象があります。つまり、「駆け落ち」と称する家出が途中から「子供の遊び」の様になって行ったのもこれまで自分の話に耳も傾けず尽く約束を破ってきた大人や子供から大人へと成長する過程でその様な環境で大人の世界を垣間見て子供時代を謳歌している同世代の子達の輪に入れないまま子供のままでは居られなくなり大人の世界に幻滅しながら大人の世界に逃避しようとしている何処にも居場所のない自分が脚本の無い演技をする様に、バスの中で「駆け落ち」発言に始まり駅のホームで「都会でホステスとして働き面倒を見てあげる」で終了する、ある意味「気晴らし」の為の予定の行動を続けて見せた事に対して、嘘偽りの無い、ありのままの姿で真摯に受け止めてくれて約束を破る事無く自分の気まぐれに最後まで付き合ってくれた典道によって癒やされ た事で自分の現実を受け入れようと決心した気持ちの現れが一気に熱が冷めた様な、あのチグハグな行為となって表れたという印象があります。岩井俊二はクライマックスのプールの場面を「本当の別れ」という言葉を使っていますが先程解説した『銀河鉄道の夜』をモチーフとした意味の他にたとえ数年後、数十年後に 大人になった二人が再会したとしてもこの日なずなを癒やした典道と癒やされたなずなという子供だったこの日の二人には二度と戻れないし二度と逢えない事を称しての意味だったのかもしれません。ラストで夜店通りで先生に呼び止められ打ち上げられる花火を仰ぐ典道はいつもの先生の、小学生の生徒を見守る笑顔が浮く程大人の世界を意識してしまった当惑した顔つきとなり何もかもが、これまでとは違って見え何もかもが、これまでとは違う意味が見えるもう子供のままでは居られないもう子供の世界には還れないひと夏の、忘れられない体験をした後のほろ苦さを噛みしめる様な典道の表情を残しながらドラマは静かに幕を閉じます。この作品は今でも撮影地に巡礼者が訪れる程の岩井俊二作品の中でも特別な作品としてファンの間で語られ続けていますがそれは「かけがえのない出逢い」とは同時に「二度と出逢えない別れ」の様でもあるという事を誰もが経験する子供時代との別れを通して描き失われた想い出が蘇ってくる様な思いをさせてくれるそんな作品だからなのかもしれません☆▲目次へ▲■3.ドキュメンタリー作品■関係者の証言や描かれなかった物語などドラマ制作当時を振り返る岩井俊二自身が企画監督【DVD】少年たちは花火を横から見たかった価格:4213円(税込、送料別) (2021/8/8時点)少年たちは花火を横から見たかった■現在この作品を視聴するにはAmaz○n Primeで「日本映画専門チャンネル」の有料会員になるかT○TAYAの宅配レンタルを利用するか楽天かAmazOnでレンタル落ち中古品を安く手に入れるか又は、制作秘話パートのみをノベライズ本のあとがきで読むか各自お選び頂くとして・・・この作品は、93年にドラマ版が放映されてから6年後の99年に公開されたドキュメンタリー作品で、主演の奥菜恵と山崎裕太を進行役に据えて千葉県飯岡市のロケ地を訪れ撮影当時を振り返り放送当時は描かれる事の無かった新たな物語を主演二人によるロケ地での朗読の他脚本監督の岩井俊二や番組プロデューサーなど制作に関わった関係者達のインタビューがまとめられた内容になっています。有り体に言えばいわゆるメイキング作品なのですがいわゆる「特典映像」の様なものとは異なり出演当時は子供だった主演の二人が成人した姿で脚本を朗読するパートではドラマから数年を経て再開した二人の姿に子供だった二人にはもう逢えない事をドラマさながらに痛感しこの作品のファンには軽くショックを受けるものがありながらもう戻る事のない、失われた子供の世界のこれまで語られなかった新たな物語がロケ地となった小学校で 主演の二人によって語られて行くという一つの映像作品として充分成り立った興味深い作品となっております。一方、製作者達の証言を収めたパートでは番組プロデューサーや岩井俊二自身の今だから話せる制作裏話の数々が収録されており実は2時間ドラマ化の話もあったのに、ここで生まれようとしている作品の為にあえて蹴ったテレビマンとしての葛藤や最後まで決まらなかったプールでの別れの場面の軌跡やこの作品がTV番組の企画内に収まり切らなくなりまだ新人だったにも係わらず岩井俊二が独断で企画にそぐわない内容に勝手に変更した事による実は皮一枚でつながっていた様な岩井俊二の立場と作品の評価や放送当時、岩井俊二の独断を巡り上層部と現場との綱渡りの様な駆け引きとなった制作秘話の数々や後の輝かしい評価と映像作家岩井俊二の誕生へと繋がった話など非常に興味深い内容になっております。▲目次へ▲■3.岩井俊二による小説化■【文庫本】少年たちは花火を横から見たかった (角川文庫) [ 岩井 俊二 ]価格:528円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)少年たちは花火を横から見たかった■これはドラマ化から24年、岩井俊二自ら執筆し岩井俊二が元々付けたかったタイトルに変更して2017年のアニメ化を機に出版された純然たるドラマのノベライズ本です本書を読むには、楽天市場で購入する他、場所によっては図書館でも閲覧 貸し出し出来るみたいなのでできれば ご拝読した後ご観覧頂ければ、として・・・只、タイトルが変更された事からも分かる様に『ifもしも』の『打ち上げ花火・・・』をノベライズしたものでは無くて新たな物語とその後の主人公達の描写を加えドラマ版の空気感をそのままに、2つの結末を一つの物語に再構成した非常に読み応えのある内容になっています。この小説版の大きな特徴としては成人した主人公たちが再開して子供時代を回顧する新たなプロットや典道となずな は、もっと以前から出逢っていたという典道の家に一泊する、新たなプロットでの典道の部屋に飾られていた課題で制作した労作の立体地図模型が朝になったら なずな が叩き壊していた事が分かる自分以外の同級生たちが普通の小学生生活を謳歌している事を憎悪するなずな の心の闇が描かれる衝撃的エピソードやそんな なずな の行動に対しても「別にもう捨ててもいいんだそれ」と答えて何も責めなかった典道にその後心を開いていた事が分かる話や典道の家を抜け出したなずなを見つけて二人で行った海で見つけた真珠の様な玉がアニメの不思議な「願いのビー玉」となったり結婚式直前に別の恋人と駆け落ちしようとした若かりし頃の なずな の母親の話や祐介たち一行の、更なるエピソードが加わった花火の夜の探検記などの様々な新しい物語が加わった事と冒頭のプラネタリウムの場面でこの作品が『銀河鉄道の夜』を柱とした作りになっていた事を分かりやすく明かして物語を更に意味深く読む事ができる様にした、興味深いプロットなどひとつの読み物としても、ドラマのファンが更なる物語に触れるノベライズとしても愉しめる内容になっております。又、先程のドキュメンタリー作品での新たな物語を朗読するパートが文章化され纏められた作品でもあり特に、岩井俊二自身が語る あとがきでは『ドキュメンタリー作品』でも語られた制作記が文章になって纏められているのでドキュメンタリー作品を見る機会を得られない方も内容に触れる事が出来る様に構成されております加えて、2017年公開のアニメ版制作にも触れておりかねてから『打ち上げ花火』のファンを自称してきた(10)『モテキ』の大根仁を脚本に抜擢したエピソードも収録されております。▲目次へ▲■5. 2017年公開 アニメーション映画■【Blu-ray】打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? [ 広瀬すず ]価格:4981円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?■この作品はDVDレンタルや配信などAmaz○nPrime会員なら無料で容易に鑑賞可能なのでまずは観ていただくとして・・・オリジナル版のTV放送から実に24年振りの映像化となった本作は『化物語』『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之総監督とアニメ制作会社「シャフト」がタッグを組み脚本は実写畑の監督で本作のファンを自称する(00)『TRICK』 (10)『モテキ』の大根仁が担当し岩井俊二監督自身もアイデア出しの段階から参加したアニメーション作品として制作され、オリジナル版の45分だった尺は大幅に脚色された新たな物語が加わり倍の90分に拡張され主要登場人物も小学生から中学生へと改められ新たになずなの両親が登場するなどの設定の変更に加えて「What if」ジュブナイル作品だった物語は何度も同じ日をやり直すライトSFファンタジー作品へとプロットも改められリメイク作品と言うよりはリブート作品として企画され仕上がった長編アニメーション映画です。■物語は、主人公たちが中学生という事以外は実写版同様に夏休みの登校日の朝から始まりプールでの50m競争の下りからなずなの約束をすっぽかした祐介をぶん殴る典道まで同じ流れで進みますが朝の海岸でなずなが拾った不思議なビー玉を手にした典道が同じ時間を繰り返す「タイム・ループ」を起こして失敗しても何度もやり直してなずなとの駆け落ちを続けながら「銀河鉄道の夜」の様をモチーフとしたファンタジーな帰結をするラストまでアニメ作品ならではの展開で物語が進んでいきます。元々の原作ドラマが中途で2つの結末へと枝分かれして行く造りだったので事情が分かっていても唐突な展開に若干の違和感を感じたりしましたがファンタジー映画としてリブートした事によりプロットに違和感が無くなった分ある意味作品が本来の姿を見せた作りとなったとも取ることが出来ますのでラストでのパラレルワールド的な世界が弾けて様々な「確定した未来」が現れるという展開を取りその中から「あの」結末をチョイスして物語を締めくくったのも「本当の別れ」で幕切れとなった実写版での切ないラストに対して原作のファンが20数年をかけて待ち望んでいた「本当のラスト」と出逢える作品にするためのアニメ化だったと捉えると非常に納得できるものがあり『打ち上げ花火』ファンを自称する脚本を担当した大根仁のすべてのファンの願いを汲んだ「使命感」を感じさせる岩井俊二ファン必見の仕上がりとなった作品という印象を受けるものがありました。その一方で、あの伝説の「堀の曲がり角」の場面をアニメで完全再現するというファンであれば鳥肌モノの意欲作でもある一方でキャラクターが中学生へと年齢設定が上がった事により「堀の曲がり角」の場面では大人びた少女が無防備な子供の顔を見せるという元々の演出の意図が崩れる結果を招いたり「花火が平たいか丸いか」を確認する行動がそもそも小学生だから「冒険」として成り立っていた所、中学生では微妙なものになってしまったりと年齢設定を1歳上げただけで崩れてしまう「岩井俊二の繊細な世界観」を廃してまで「シャフト的化物語風世界観」でリブートしたのはアニメ化に当たり「大人の事情」を含めた「シャフト」的演出を効かせる意図を感じさせるビジュアルのリニューアルだった事は 理解出来る所ですがそれが前年度の『君の名は。』のポスト作としての戦略だったとしたらこの作品をこの様に企画した事自体あまりにも線が細いものにしてしまっているのでは無いかと思わせるものがありました他にも、途中、駅でなずなの母親達に見つかった時抵抗する典道を母親の内縁の夫が殴りつけるという21世紀が舞台の作品にしては大いに違和感のある描写があったり如何なる荒唐無稽な説明になってしまったとしてもファンタジー作品で「鍵」として使用されたアイテムは必ず納得の行く帰結を迎える展開を取り内容の回収を図るべしというファンタジー作品のセオリーをハナから無視する様な「不思議なビー玉」がなぜタイムループを起こすのかという点で「父親の海での死」や「灯台」などいくらでもモチーフはあったのに一切触れないままで物語は終了するので灯台のレンズを思わせるビー玉がラストで粉々になり破片の数だけの可能性の未来が現れその中のどの未来を選ぶのか、という本作最大の感動的な見せ場が意味不明なままで終わっている致命的欠点がある言えます例えば・・・娘の幸せを願う父親の魂と宇宙の不思議なパワーで増強された灯台の光がレンズで凝縮され灯台のレンズの様な形をしたビー玉となってなずなの前に現れると言ったような、手垢のついたプロットを織り込んだ物語になるのを避けて敢えて説明を取らない内容にしたという狙いがあったとしてもなずなの居なくなった父親が海で浮かんでいるヒトになった時父親が手に掴んでいた時のビー玉が、今持っているものと同じものなのかも、という描写ひとつであとは見る者に任せる丸投げの様な内容になっている様なプロットを散らかすだけ散らかして片付けない印象の構造的空白が目立つ脚色で造られている所に大きな問題があると言えますこれは、近年漫画原作の実写化が失敗しがちになる問題と同じで脚本の大根仁が本作の大ファンであるが故にこの作品が始めから鑑賞層を「絞り込む」様な「リスク」を抱えた企画であった事に加えてファンであれば分かる筈 と言う様な説明無しの顛末がファンを代表して作ったファンムービー的な様相となった事と岩井俊二版公開当時は駆け出しで現在はヒットメーカー映画監督として活躍する大根が若き岩井俊二の『打ち上げ花火・・・』の「若かりし点」をヒットメーカーの今の自分が自分流に補完しようとした様な原作ドラマに大胆なメスを入れたという印象を受ける事からその「自分流」を全く望んでいない鑑賞層との「ズレ」が本作がヒットに繋がらなかった最大の要因があった様に思われます加えて銀河鉄道の夜をモチーフとしたラストの展開はドラマティックではあってもそもそも銀河鉄道は死の国へ向かう列車であり実写版では二人は列車に乗らなかった所に意味があったのに対し「千と千尋の神隠し」的なファンタジーな列車が登場して駅に着いて海で泳ぐ展開自体が手垢の付いたプロットの様な印象が強い事からも、実写作品ではストーリーテーリングに長けた独特の切り口で物語とキャラクターに生き生きとした息吹を吹き込む芝居作りに定評のある大根仁監督でしたが実写では役者がそれぞれの持ち味を活かした芝居をしてくれる事に対してそれら全てを描かなければならないアニメでは緻密な描写とイマジネーションが不可欠となる為役者にイマジネーションを与えてエモーショナルな芝居を引き出す事に長けた映像作家ではあっても自らイマジネーションを生み出す緻密さを要求されるアニメーションの世界の前にいつもの暑苦しい程の大根節だけでは過不足だと言う印象を受けました。■本作は近年、小説版の映像化やアニメ版を実写化する流れとは逆となった実写版を原作にアニメ化した作品で近年のアニメーション作品に見られるロケ地を本編で正確に再現するという 巡礼行為 に対しては実写での『堀の曲がり角』の場面も忠実に再現されている所からも本作の制作そのものが実写版のロケ地を巡る巡礼行為そのものとも言えるものがあり多分に原作ドラマや岩井俊二監督のファンをターゲットに据えた極めてマニアックな目的の元の映像化という側面がある作品という点に於いても原作となったドラマは岩井俊二の名前を世に拡め映像作家岩井俊二が映画界に進出する橋頭堡となった作品ではありましたがキャラクターの背景が説明を極力廃した物語となっている為キャラクターには謎の行動が多く見られ何が言いたくて何を描いている作品なのか一見では分かりにくい作品になっている所から一般的には「文芸作品」の部類に入っているドラマでしたので本作の前年の夏休み期に公開された『君の名は。』のポジションに当たる作品として公開されながらそのつもりで鑑賞すると肩透かしを喰らう仕上がりになっている所や一般的なアニメユーザー向きの内容では無かった事を承知の上での公開となりながら当然の様に興行的に惨敗を強いられた点に於いても非常にユニークな存在の作品と言えるものがありますこの様な「文芸作品」に当たる分野の作品が実写ではなく大作アニメとして映像化される背景にはひとつには前年度の『君の名は。』の大ヒットの理由を考慮して『君の名は。』に次ぐ様なビジュアルで内容と性質の異なる作品を夏戦線にぶつけてヒットを狙う戦略の一環があったと思われ今や数兆円規模となったアニメ市場に於いて多種多様なジャンルの作品がヒット作として排出されている実績と実写を鑑賞するユーザーに比べてアニメユーザーがカバーするジャンルの幅広さを考慮した所による数兆円規模へと肥大した市場に於いて人気作品と呼ばれるヒット作の内容が似通う事で既成のジャンルと化して乱立化する事による形骸化を見据えての他作との差別化をする事でヒットに繋げる狙いがあっての上での作品化では無いかと感じるものがありました。■▲目次へ▲■6.大根仁監督制作ドラマ『モテキ』第二話■【Blu-ray】モテキ Blu-ray BOX(TVドラマ) [ 森山未來 ]価格:17347円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)深夜高速上に乗るか下に寝るか■さて、この作品はDVDレンタルなどで容易に鑑賞可能なので興味がある方は、お近くのGE○、T○TAYAなどを利用してご鑑賞いただくとして・・・アニメ版で脚本を担当した大根仁 は自身の監督作だった久保ミツロウ原作の人気作で2010年のドラマ『モテキ』の第2話で『深夜高速〜上に乗るか 下に寝るか〜』というタイトルで本作をモチーフにしたエピソードを撮っております。その内容も主人公演じる森山未來が満島ひかり演じる映画マニアの女性と共に『打ち上げ花火・・・』のロケ地を巡るという『打ち上げ花火・・・』マニア必見のコメディーでなずなが路地の角から母親に追われながら走ってきて家に連れ帰られる場面を、細かく視点が変わるカメラワークを嫌がるなずなの演技を満島ひかりを使って完璧に再現しラストはバスで森山と満島が「本当の別れ」の帰宅をするという良く出来たオチまで付いた『打ち上げ花火』愛(フリークとも言う)が満載のファン必見のエピソードになっていますwしかしながらなんと、このエピソードは岩井俊二には全く無許可で撮っていたばかりか放送前日にYouTubeに『打ち上げ花火・・・』の本編を『おさらい』と称して無許可でアップしたり とwもしコレがどこかの大きい『書店』が相手なら問答無用に『クビ』にされる様なそれ以前に訴えられたら賠償責任を追求されるか下手をすればキャリアの全てを棒に降る事になる業界人にあるまじき驚くべきグレーな行動を取った所が、フリークならではの混沌さなのですがwこれに輪をかけて『ぼくは怒らないよ』という典道の有名なセリフを使った書き込みを大根仁のTwitterに初対面で行った岩井俊二も岩井俊二でwこれに大根が 『怒るよっつ』となずなのセリフで返しwなずなと典道の有名なセリフをSNS上に再現した初対面で話した事も無い稀代の映像作家の二人がネットで思いもよらない邂逅を成し遂げるというドラマを知る者同士がネットを介して理解できるやり取りに共に悦に入る監督二人は実に 気持ち悪・・・阿吽の呼吸 なのですがW只、このエピソードを含めてこの『モテキ』シリーズは性質上下ネタや下品な台詞回しが多く使われ監督大根仁のいわゆる「大根節」満載な赤裸々で癖のある内容の為ご家族で観るには全く相応しく無いドラマの為注意が必要です とだけ言っておきますW【電子書籍】モテキ1巻 [ 久保ミツロウ ]価格:660円 (2021/8/8時点)■と言うわけで、コロナ禍に加えて、高温注意警報で外出がままならない今年の夏を、岩井俊二作品を鑑賞しながら、記憶の忘却の彼方へと潜んだ失われた子供の日々へと思いを馳せて、夏の日のノスタルジックに浸るのも一興かもしれません。それでは、良い一日をお過ごしください☆【ブログ更新】ドラマ・映画 レビュー『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』- 楽天ブログ(Blog)https://t.co/4YTBsCq4B7 #r_blog— Voyager6434 (@voyager6434) August 9, 2021---------------------------------------------------------------------------------------------------【Blu-ray】打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?【豪華版 Blu-ray BOX】撮影時に岩井監督が実際に使用していた台本の縮刷版も封入。台本は岩井監督直筆の演出メモや落書きも忠実に再現。<内容>■[ディスク1] 本編 ■[ディスク2] 『少年たちは花火を横から見たかった』■[ディスク3(CD)] 『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』-Original Soundtrack-価格:7,326(税込、送料無料) (2021/8/8時点)打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?Fireworks,Should We See It from the Side orthe Bottom?■キャスト■島田典道:山崎裕太及川なずな:奥菜恵安曇祐介:反田孝幸和弘:ランディ・ヘブンス純一:小橋賢児稔:桜木研仁三浦晴子先生:麻木久仁子同僚教師:光石研看護婦:植村結子受付の看護婦:中島陽子マコト:小山励基おでん屋:こばさしせつまさ典道の父:山崎一典道の母:深浦加奈子祐介の父:田口トモロヲなずなの母:石井苗子安さん:酒井敏也露店の客:蛭子能収□スタッフ□■プロデューサー:原田泉■監督/原作/脚本:岩井俊二■助監督:桧垣雄二 / 行定勲 / 島田剛■撮影:金谷宏二■音楽:REMEDIOS■企画:小牧次郎 / 石原隆■制作:フジテレビ/共同テレビ---------------------------------------------------------------------------------------------------【Blu-ray】打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? [ 広瀬すず ]価格:4981円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?Fireworks,Should We See It from the Side orthe Bottom?■声の出演■及川なずな:広瀬すず島田典道:菅田将暉安曇祐介:宮野真守田島純一:浅沼晋太郎和弘:豊永利行稔:梶裕貴なずなの母の再婚相手:三木眞一郎三浦晴子先生:花澤香菜光石先生:櫻井孝宏典道の母:根谷美智子典道の父:飛田展男祐介の父:宮本充花火師:立木文彦看護師:斎藤千和、嶋村侑屋台の兄ちゃん:新垣樽助レポーター:種崎敦美アナウンサー:井之上潤生徒:小原好美、廣田悠美 / 内田修一なずなの母:松たか子□スタッフ□■原作:岩井俊二■総監督:新房昭之■監督・絵コンテ・美術設定:武内宣之■脚本:大根仁■キャラクターデザイン:渡辺明夫■CGプロデューサー:西川和宏■総作画監督:山村洋貴■美術原案: 秋山健太郎■美術デザイン:田中直哉■美術監督:飯島寿治 / 宮越歩 / 船隠雄貴■音楽:神前暁■色彩設計:日比野仁 / 滝沢いづみ■撮影監督:江上怜 / 会津孝幸■編集:松原理恵■音響監督:鶴岡陽太■配給:東宝■企画・プロデュース:川村元気■エグゼクティブプロデューサー:古澤佳寛■アニメーション制作:シャフト■製作「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」製作委員会(東宝 / アニプレックス / シャフト / KADOKAWA / トイズファクトリージェイアール東日本企画 / ローソンHMVエンタテイメント / LINE)■主題歌「打上花火」作詞・作曲:米津玄師 / 編曲:米津玄師、田中隼人 / 歌:DAOKO×米津玄師■挿入歌「Forever Friends」作詞・作曲:REMEDIOS / 編曲:神前暁 / 歌:DAOKO■劇中歌「瑠璃色の地球」作詞:松本隆 / 作曲:平井夏美 / 編曲:神前暁 / 歌:及川なずな(CV. 広瀬すず)■公開:2017年8月18日N『間違いなく前年度国民的大ヒットをした「君の名は。」の後追いヒットを目指した思惑アリな企画だったと思われるけれど「君の名は。」を期待した鑑賞層と「化物語」「まどマギ」の「新房節」を期待したファンにとってはビジュアルが良いダケの退屈な文芸作品となったのかもねぇ・・・』【CD】映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」オリジナル・サウンドトラック価格:2768円(税込、送料無料) (2021/8/8時点)