土星マンション。
今の世の中だからこそ読んでみたい作品。小学館から発刊されている、岩岡ヒサエさんの「土星マンション」-------------------------------------------------地球全体が自然保護区域となり、地上に降りることが許されなくなった時代、人間は遙か35,000メートル上空の建造物で暮らしていた。地球の周囲をめぐる上層・中層・下層からなる巨大なリングシステムで、主人公・ミツは生まれ育った。ミツは中学卒業と同時に、亡き父と同じ職業「リングシステムの窓を拭く仕事」に就いたのだった。 -------------------------------------------------この作品では未来の格差社会が舞台として用意されています。風景や背景には言いようのない暗さや寂しさが漂い、読み手には時として漠然とした不安感を感じさせます。決して優しいとはいいがたい社会。そんな厳しさの取り巻く社会の中で、主人公のミツは周りの仲間達に支えられ、その日その日を生きています。仕事と向き合ったり、周りの人たちとの交流をしていく中で、ほんの少しずつではありますか、ミツは成長していきます。それは、まるで広大で真っ暗な宇宙に小さな灯りが、揺らめいているかのよう。その灯りの温かさが、ほんのりと読み手の気持ちを温めてくれるそんな作品です。