小腸内視鏡の普及でCrohn病のケースの回腸末端部からの生検材料の評価を委ねられることが多い.Crohn病は肉芽腫性炎症が特徴とどの教科書にも記載されているが,内視鏡生検材料で粘膜固有層に類上皮肉芽腫を見出す機会はほとんどない.消化管病理を専門にしている施設では10%を超える頻度と報告されているが,私験では5%にも満たない.いつもnonspecific ileitisと報告するのは芸がないので,なにか疾患特異的な変化はないかと思っていたらGoldsteinの論文に巡りあった.
彼らの研究は潰瘍性大腸炎の全結腸切除後のbackwash ileitisを主題としたものだが,これと対比して100例のCrohn病の回腸生検病変の分析を行っている.100例のCrohn病中25例は回腸末端の有意な炎症は認められなかった.残りの75%に慢性回腸炎が見出された.主な変化としては1. 粘膜固有層のpatchy edema,2.陰窩上皮の構造の乱れ(crypt disarray),3.局所的に平坦化した絨毛表面(flattened villi),4.濾胞形成を伴わない融合性のリンパ球,形質細胞浸潤,5.偽幽門腺化生である.偽幽門腺化生は27%に認められた.炎症の程度は軽微から軽度のものが半数以上を占めた.肉芽腫性病変については言及していない.
これらの所見を複合的に用いれば平均3.5個の生検材料で,Crohn病特有の回腸炎を示唆できるかもしれない.
Goldstein N, Dulai M. Contemporary morphologic definition of backwash ileitis in ulcerative colitis and features that distinguish it from Crohn disease. Am J Clin Pathol 2006; 126: 365-376.
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Last updated
2006.11.01 21:10:19
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