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病理検査の玉手箱

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2006.11.12
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カテゴリ:日誌
原発性糸球体疾患の中でもFSGSは生検診断に難渋し,治療にも抵抗性を示す厄介な病態である.FSGSの病態の理解にはメサンギウム細胞の病理を明らかにし,細胞の増殖や基質の沈着の仕組みを知る必要がある.嘗て日本の免疫病理のグループが,マウスの実験系を用いてメサンギウム細胞の動態が骨髄幹細胞の移植で変化することを発見し,原発性FSGSがstem cell disorderである可能性を主張した.これらの結果が契機となりマウスの同種同系移植モデルを用いて骨髄幹細胞を移植し,ドナー由来の幹細胞がメサンギウムに定着し,メサンギウム細胞に分化することが証明された(Imasawa T et al, 2001).この実験事実は在米の基礎血液学者として高名な小川眞紀雄教授らのグループも追認している(Masuya M et al, 2003).一端糸球体に定着したメサンギウム細胞はself-renewalによる恒常性を維持していると考えられる.
腎生検材料を観察するたびに,メサンギウム細胞は謎の多い細胞であり様々な疑問が浮かぶ.血管系に普遍的に分布するmyopericyteとともに興味ある研究対象である.

Imasawa T, Utsunomiya Y, Kawamura T, Zhong Y, Nagasawa R, Okabe M, Maruyama N, Hosoya T, Ohno T. The potential of bone marrow-derived cells to differentiate to glomerular mesangial cells. J Am Soc Nephrol 2001;12:1401-1409. 【要 約】
骨髄幹細胞は血液細胞や間葉系細胞の発生に関与するが,糸球体構成細胞への分化は知られていない.そのような幹細胞の糸球体細胞への分化が可能かどうかを検討した.C57BL/6j (B6)マウスに致死的放射線照射を行い,GFP遺伝子を導入したトランスジェニックマウス由来の骨髄幹細胞の移植を行った.ドナーの骨髄細胞を移植されたマウスでは,GFP陽性の細胞が糸球体に出現した.これら陽性細胞は移植から2-24週間の観察期間で継時的に増加した.免疫組織化学的にはほとんどのGFP陽性細胞はマクロファージでもT細胞でもなかった.共焦点顕微鏡の観察で,GFP陽性細胞はメサンギウムの中に観察された.さらには間接免疫蛍光抗体法でキメラマウスの糸球体のデスミン陽性細胞がgreen fluorescence陽性であった.骨髄移植後24週のマウスから得た糸球体細胞を培養したところ,84%の細胞がデスミン陽性であり,デスミン陽性細胞の60%にgreen fluorescenceの発現が認められた.加えてこれら培養系のgreen fluorescence陽性細胞はアンギオテンシンII刺激に対して収縮反応を示した.これらの実験結果から骨髄由来の細胞が潜在的に糸球体のメサンギウム細胞に分化する能力があることを示唆する.

Masuya M, Drake CJ, Fleming PA, Reilly CM, Zeng H, Hill WD, Martin-Studdard A, Hess DC, Ogawa M. Hematopoietic origin of glomerular mesangial cells. Blood 2003;101:2215-2218. 【要 約】
最近,骨髄細胞から糸球体メサンギウム細胞が分化する能力があることが報告された.しかし骨髄中でどの細胞がメサンギウム細胞になるのかは知られていない.血液幹細胞からクローン化した細胞を移植することで,糸球体のメサンギウム細胞を再構成できるという仮説を検証した.C57BL/6-Ly-5.2由来のマウスから得たEGFPトランスジェニックマウス(enhanced green fluorescence)からLin-, Sca-1+, c-kit+, CD34-の骨髄細胞を培養した.個々のクローンは1週間,IL-11, steel factorで培養した.このクローンを致死的放射線照射したC57BL/6-Ly-5.1に移植した.移植から2-6ヶ月を経て,高レベル(60-90%)まで多潜性造血細胞が再構成した5匹のレシピエントから腎臓を摘出した.腎細胞をDICと落射蛍光で観察し,EGFP陽性のメサンギウム細胞形態を示す細胞を糸球体にみいだした.100個の非培養下のLin-, Sca-1+, c-kit+, CD34-の骨髄細胞を移植してもメサンギウム細胞が生成した.培養されたEGFP陽性の糸球体細胞はangiotensin IIで収縮能を示した.雄-雄間の移植をしたマウス由来のEGFP陽性のメサンギウム細胞はY染色体を1個のみ有していた.これらの結果から単一の骨髄幹細胞が糸球体メサンギウム細胞に分化し得ること,このプロセスには幹細胞と体細胞の細胞融合は関係していないことが証明された.





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Last updated  2006.11.12 08:25:53
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