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HANNAのファンタジー気分

HANNAのファンタジー気分

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May 12, 2008
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 もうじき映画が終わりそうです、「ライラの冒険 黄金の羅針盤」。なかなかよい出来だという噂なのでにわかに観たくなりましたが、果たして行けるかどうか。

 原作は1995年に出ていまして、私の分類としてはすでに「ちょっとなつかしのファンタジー」に入るのかもしれません。私の知っている退官した英文科教授が当時原書で読まれて、「ハリーポッターよりだんぜん面白い、読むのがやめられない」とコメントしてらしたことがあり、よしそれならばと、(翻訳が出るのを待って)読んでみたのが5年前。
 新潮社がファンタジーを出すなんて、それだけでもスゴイなあと思いながら。

 ところが・・・だめでした。とても良質で、面白いんだけど、だめでした。そのわけは。

 いわゆるパラレル・ワールド物で、作者がしょっぱなから公言しているのですが、ヒロイン・ライラの登場する舞台は、現実世界と似て非なる英国のオックスフォード大学なのです。

 オックスフォードのジョーダン学寮、などというと、英国人でない私たちはそんなカレッジがほんとにあるのかなと思いますが、だまされてはいけません。どうもないようです。国策委員会とかカルバン教皇とか、規律監督法院、献身評議会、などという固有名詞は、いかにもありそうだけど、架空のものです。そのくせ、テムズ川やロンドン、ジュネーブなんて地名も平然と登場します。
 かと思うと、タタール人がモスクワ大公国に攻め入っている、などと。
 えっホント?そうだっけ? とびっくりし、自分の歴史に関する知識の記憶違いかとあわてますが、違うんです。パラレル・ワールドですから。
 ライラも彼女の世界の他の登場人物も、人間なんですが、守護精霊(ダイモン)という守護獣みたいのを連れている点が普通じゃない。
 時代も、北極探検とか飛行船とか出てくるので現実の二十世紀初頭だと思っていると、北欧に魔女の領事館があったり、鎧を着たシロクマ一族の傭兵なんてのが当たり前に出てきたりする。

 私は、現実世界の地名やそれにまつわる独特のイメージが、二次世界で濫用されているように感じられ、楽しく読み進むことができませんでした。
 タイムスリップとかSFとかなら現実の固有名詞が出てきてもまだ許せるんですが、どこまでも現実に似たパラレル・ワールドだと、私はだまされたような気分になって、あのファンタジーを楽しむ基本的条件ともいえる「不信感の停止」(ロマン派の詩人コールリッジの言葉)ができません。
 作者がわざと似て非なる世界を創って、現実と共通の固有名詞でまず読者を安心させ一定のイメージを抱かせておき、頃合いを見計らって、不可思議なこの世ならぬものを素知らぬ顔でふっと混ぜ込み、読者を煙に巻いて楽しんでいる・・・ような気がしてしまうのです。

 現実じゃないオックスフォード大学で、幾何学、アラビア語と並んでアンバロロジー(電気学と訳されているエセ学問)なんか教えている。このごちゃまぜを、読者は楽しむべきなのでしょうが、私には耐えられません。アンバロロジーなるモノを出してくるなら、アラビア語を出すのはやめなさい、と言いたくなります。
 冒頭に出てくる毒入りワインも、「トカイワイン」なのが気になります。確かハンガリーかどこかの、甘くて最高級のワイン。学寮の秘蔵するとっておきのワインだということが言いたいのなら、「トカイワイン」という固有名詞でそれを表すのではなく、違う方法で表現して欲しい。

 現実世界に魔法の事物・人物が自然に出てくるファンタジーは世の中にたくさんあって、それはそれでOK。
 あるいは現実とまったく違う固有名詞を出してくるハイ・ファンタジーも大いに結構。

 でも、それらとは違う、現実世界の固有名詞が出てくるのに現実とは違うパラレル・ワールド。これ、私だめです。
 すぐバレるちゃちなもじりでもいいから、オックスフォードじゃなく、違う名前の大学にしてほしかった・・・

 などと、愚痴ばかり言っていましたが、このたび無理矢理そのキモチワルサを抑えつけて、もう一度トライしてみました。う゛ー、何とか、読めたかな。手に汗握る冒険行で、ストーリーは面白いんです!
 映画を観たら、「不信感の停止」ができて、素直にお話を楽しめるのかもしれません・・・守護動物の特撮なんか、すばらしそうだし・・・ううう。





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Last updated  May 12, 2008 11:15:14 PM
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