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テーマ:本日の1冊(3686)
カテゴリ:ちょっとなつかしのファンタジー
今日の日食、曇り空でしたけど、買い物に出かけた大阪・梅田のビルの谷間で、三日月の形のお日様(の輪郭)を見ることが出来ました。遠くまで見に出かけて雨に降られた人とかもおられる中、私ってラッキー
いちばん欠けた時間帯だったので、あたりは雨でも降りそうなぐらい薄暗くなりました。これが皆既日食だったらもっと暗くなって、異常な雰囲気なんでしょうね。 で、日食に非日常的世界へ脱出を試みるお話を思い出しました。児童書なんですが、大人向きか?と思われるところもあり、なかなか奥の深いお話です。 生物学者であるぽっぺん先生が、太陽や磁気をたよりに旅をすると言われる渡り鳥が、日食の時はどんな様子を見せるかを研究しようとするところから始まります。ところがそこは『ぽっぺん先生』シリーズのオハコで、先生はいつしかヨットにただ一人乗りこんで、鳥たちの伝説の楽園アルカナイカ島をめざすはめに。 「ごらんなさい。太陽がすっかりかくれたわ」 ・・・そこには、昼の月にべったりと目かくしをされた皆既食のどす黒い空が、舟のゆくてへ流れる一条の帯に切りさかれてひろがっています。が、よく見れば、その帯は舟を追いぬいて飛行してゆくおびただしい渡り鳥たちの影だったのです。 ・・・ということは、カモメのいうとおり、いまこの舟は海図にない海流を、地図にない場所めざして進んでいるということなのでしょうか。 ――舟崎克彦『ぽっぺん先生と笑うカモメ号』 前作『ぽっぺん先生の日曜日』『ぽっぺん先生と帰らずの沼』と違うのは、日常的現実世界へ帰ろうとする先生の試みが物語り中ほどで失敗し、先生はこの世を捨て去る決心をして、水先案内のカモメとともにこの世ならぬ楽園島を本気でめざす気になるところ。 ところが、前向きな決意をしたというのに、舟が進むこの世ならぬ海域は、何やらおどろおどろしい様相を呈してくるのです。入道雲は巨大なイモムシに、夕焼け雲は水平線からわき出てだまし絵のように空へ駆け上るイモリたちに変幻し、夜になるときらびやかな満艦飾の亡霊船が出現。魔王ルシフェルや魔界の怪物たちのパーティ、美少女の姿でいけにえにされそうになるカモメ・・・など、さながら地獄絵巻。 そして、魔物をうちやぶって、(日食の終わっていつものように)のぼる朝日とともに、めざす島が見えてくる、その時・・・。魔法はとけ、楽園は消え、夢は霧散してしまいます。何ともいえない切ないエンディング。 ぽっぺん先生シリーズのうちで、ひそかに私のいちばん好きな1冊です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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