カテゴリ:金魚花 小説
たけくらべ、読んでみて。原文は結構難しい。だけど読み終わった後、すこし哀しい気分になった。
眼を15秒間閉じて考えてみる。もう少し大人だったらって考える。そうしたらしっかりと受け止めることが出来るのに。出来ない自分が歯がゆくてしょうがない。正直に言えてしまえたらどんなにいいか、だけど素直に、泣いたり。感情を表すほど子供でもない。大人と子供の線引きってどこからなんだろ。成人を迎えてから?それでも大人になった気がしないと思う。いつの間にか大切なことを忘れてきっと忘れたまま、思い出すことのないまま生きてく。それが少し哀しいけどそれが、あたしにとっての大人の定義。もう少し、もう少しだけ幼い考えを、素直のままに忠実に生きていけたなら失うことも無かったのかもしれない。昔って生まれが自分の身分に直結する。それは、少し哀しいことで。その中で懸命にもがいてる姿は綺麗だとも思う。今なら、伝えれば良いのにって思うけど、それすら出来ない時代って。どんな苦しい恋をしていた人が一体どれだけ居るんだろ。はいはいはい、かなり真面目な話になった~ でゎ 金魚花 「拓也、どこまで行くの?」 「俺たちの家だけじゃあない、この町全体が変なんだよ」 息を切らしながら何とか成立する会話。 不意に大きな柔らかい何かに躓き、拓也の右手と左手が離れた。 「いったぁ」 膝小僧を抑える。 「大丈夫?」 「うん」 言い終わった後、何に躓いたのかって。そんなこと思ってみたのがいけなかったのかもしれない。それは人の死体で、もっというとあたしの幼馴染で。あたし、あたし。長年の想い人だったわけで。それが、やっぱり香也みたいに、水草一杯口に。ピチピチ音が。それに、あぁおなかの中にもぞもぞと動いて。嫌。こんなん、 「蒼兄?」 「やめてよ、なんなの。あたしが何したってゆうんだよ!!!!!はッ?何で香也も蒼も皆居なくなる。お母さんもお父さんも目、血走ったみたいに。獲物を見つけてスッゴク嬉しそうな肉食獣みたいに。あたしたちを殺そうとして、あたし何で」 奇妙な沈黙があたしたちの間に走る。 一瞬だったのかもしれないし、でもあたしにはとても長く感じた沈黙の後。 「母さんたちが俺たちのこと見つける前に、ここから離れよ」 「もう、良いよ。あたし死んでも。香也が居なくなって、蒼が居ない世界で生きてくなんて残酷じゃない?生きてることが罪じゃない?拓也ももう腹決めてさ、死のうよ。どうせどこいったってこの現実からは逃れられないよ?」 あたしは笑った。瞬間頬に大きな衝撃が走った。 「何すんの?」 「へらへら笑うんじゃねえよ」 「いいじゃん」 「良くねえ、香也も蒼も死にたくて死んだわけじゃない。生きたくっても、その道閉ざされたんだよ!!!!!お前、わかんのか?そいつらの気持ち。死にたくないって言いながら、思いながら死んだんだよ。お前みたいに、勝手に絶望して勝手に投げやりになって、死のうとする奴とは訳が違うんだよ。そうやって軽く見てるの見ててうざい」 後ろから、ヒタヒタいう人間の足音。きっと母さんだ。 恐怖だ。顔が強張る。さっきやられたところが、じんじんとして。死ぬのってどれ位恐いんだろ。一瞬なの?でもたかだかあんな包丁じゃあ、絶対即死出来ない。じゃあ、ずっと痛くてそれなのに、水草入れられて。それで、あたしの死体もピチピチ音を立てて…… 「嫌、ごめんなさい」 鼻水交じりの泪は汚かったと思う。それでも拓也は笑って。手を差し伸べてくれた。 「行くよ」 「ごめんなさい」 「もうしゃべんな。気付かれる」 喋らずに音を立てないように走る。 心臓が破裂しそうだ。恐怖であたし。気が狂ってたのかもしれない。リアルな恐怖があたしの肌にびんびん感じる。だけど、右手と左手。少し湿った手のひら。温かい、あたし生きてるんだ。だから、声をださず泣いた。絶対、生き残らなきゃ。この無意味に人が死んでく馬鹿げた現実世界。 夜の闇やこの生臭い臭気は異常を異常で見せなくするカモフラージュ。この匂いや、この暗さに慣れてしまえばホラ。何かに加担してしまう奴まで出てくる。 「拓也、もう追ってきてないんじゃあない?」 何時間歩いたろう、あたしは眠さと疲れのピークを迎えていた。 「わかんない、最初の30分はヒタヒタとつけられてるような感じがしたんだけど。もう、音も聞こえないし、この暗さじゃあ目の前見るので精一杯だからさ」 「今って何時なの?」 「さぁ」 「あっねぇ拓也携帯持ってないの?持ってるんだったら、電話か何かさ、メールでも良いし」 「ナイスじゃん」 そういうと、ポケットから携帯を取り出し、電源ボタンを長押しする。 「圏外だ。おまけにこの時計なんだか変なんだけど」 「何が?」 「2時を指したまま、1秒も動かない」 「何それ?じゃあ、あたしたちがあの家出てから数分も経ってないって事じゃん!!!!」 「俺たち、絶対家の界隈から、出れないのかもしんない」 「何でよ?」 「だってホラ」 拓也の指差す方向へ目を向けると、そうあたしたちの家。3時間前に飛び出してったあの家。一際匂うその臭気があたしの寒気を誘った。 「もう、わけわかんないよ。あたし疲れた」 そういって地面にへたり込む。 「おぶってやろっか?」 「何言ってんの?いくら姉弟だからってもう、おんぶは無いって」 「姉弟?」 「そう姉弟」 なぜだか、罪悪感を感じた。感じるはずの無い、姉弟では絶対に感じてはいけない感情が胸をよぎり、かき消した。 「いいや、どっかに抜け道があるかもしれない」 ヒタヒタヒタ……… 水に濡れたような足音。 顔が引き攣る。 再び恐怖だ。 「あなた、次失敗したらあんたの死体をあの方に送り届けてやるからね」 「解かってる、今度はホラ包丁なんかじゃあなく鉈を持ってきたから大丈夫だ。お前こそ、俺の足を引っ張るなよ」 「解かってるわ、それにしてもちょこちょこ小賢しい子を産んじゃったわね」 「しっ!!!!余計な無駄口を叩かないで。美弥と拓也がそこに居るかも知れないでしょ?」 「あぁ、そうだな」 お母さんたちの声。どうやら、お父さんよりお母さんの方が主導権を握ってるらしい。 「そら見ろ、やっぱ休めない」 汗が大量に出る。恐怖、恐怖なのに。耳元で聞こえる声が脳まで支配していて。あたし、嫌。 「走ろう?もうあたし、嫌」 最初に通ってきたと思われる道を夢中で走る。でも、この道は。蒼が死体となって。道の真ん中に。 ぽんっと肩を叩かれた。 「ちょっと、拓也!!!!こんな時にふざけないでよ」 あたしは自分の目を何度も擦りたいと思うほどに、自分の目の前の光景を疑った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 27, 2007 06:21:05 AM
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