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2005年07月24日
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カテゴリ:読書
漆黒の王子
アラスジ:急激に力を伸ばした暴力団の組員が、立て続けに謎の死を遂げる。
何処とも知れぬ暗闇の世界で、瀕死の状態で倒れていた“ガネーシャ”は、
“王子”や“時計師”と名乗る浮浪者達に助けられる。
冷酷な知力と暴力で組を束ねる紺野は、正体不明の暗殺者を突き止めようとする。
記憶も曖昧なガネーシャは、狂気の淵に住む住人達から更に大きな謎を提示される。
交錯する記憶。陰謀。血。
やがて、二つの謎は…


図書館から本を借りた。(っても、1週間近く放置してたんだけど)
久々に読む、初対面の作家の本だ。
基本的に、作家単位で本を読むので、新規の作家に手を出す事は滅多にない。
ほぼ全作読んでいる作家だけでも相当数な上に、1冊を飽かず繰り返し読むので、
新規の作品にまで中々手が出ない。
が、そんな中でも、突然飛び込んでくる本がある。
予備知識があった訳でもないのに、いきなり、『読め!』と強烈なオーラを
発してくる本というのが偶に存在する。
表装やうたい文句を見ずしても、タイトルだけで強烈な吸引力を発しているのだ。
こう言う本は、まず外れがない。
今回読んだ、この『漆黒の王子』もそう言った磁石本。

手持ちの作家を追いかけるだけで精一杯だったので、最近のミステリ界の動向は
とんと疎くなってしまっている。
この初野晴と言う若い作家の名も、聞いたことが有るような無いような。
この所、湧いて出てくるニューウェーブ系には馴染めない事もあり、正直、
それほど期待はせずに読んだ。
が。
一挙に読了。
面白い。これは、かなり魅力の有る筆力の持ち主だ。

暴力団抗争と、謎の死の解決に奔走する現実世界。
不可解な住人が抱える“心の闇と病み”に惑わされる、暗闇の世界。
この二つの世界が、どう1つに終結するか。
ワクワクしながら読み進める。
殊に、暗闇の世界の設定が面白い。

名を捨てた住人達が、唯一よすがとしているのが、職業をあらわす通称。
現実からはみ出した彼らが完全な狂気の世界に足を踏み込むのを引きとめる
一本の蜘蛛の糸が、“王子”が授けた職業名なのだ。
人は完全には孤立して存在する事は出来ず、何らかの繋がりあいを求める。
自らと他との融合を望み、自らを他と画一化する事を拒む。
そんな相反する欲求を抱えねば存在出来ない我々は、
“名前”を最後で最強の鍵として、社会を形成する。
“名”そのものが、存在をマニフェストする。
彼ら闇の住人が獲得した新たなマニフェストの、暗い志向性。
抱える謎。
こう言ったほの暗いベクトルには、引き寄せられてしまう。堪らない。

かえして、暴力団の世界を描く現実世界編も、魅力が無い訳ではないが、
聊か類型的と言えなくも無い。
圧倒的な知力と暴力で支配するカリスマ。その謎の右腕。
彼らに忠実な配下であろうとしつつ、人間としての良心がそれを阻む若者。
抗争、策略、謎解き。いずれも、水準以上の出来で読ませてくれる。
が、今1つ全体のバランスが悪い感は否めない。
狂言廻しになる若者のキャラが、何となく不安定なのもその要因の一つ。
彼が何を求めていたのかが、もう少し明瞭に描かれていれば、
ラストへの加速がもっと魅力的になったであろうと思う。
更に言えば、闇にあったガネーシャが現実にリンクして、逆にその色を喪ってしまった。
手を広げ過ぎた上に、収集をつけようと小さくまとめ過ぎたのではないか。

結局、闇の社会とは、“王子”とは。
表層的に捉えると、死と現実の狭間の世界って事なんだろうけれど。
もう少し寓意性があるんだろうなぁ。
一読だけでは、何とも。
初野晴、これから要チェックの作家になりそうだ。
うわぁ、困った。本の樹海が更に広がりそうだ…



















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最終更新日  2005年07月25日 00時38分43秒
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