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2005年10月13日
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カテゴリ:読書
六の宮の姫君 芥川龍之介 (青空文庫)
アラスジ:やんごとなき六の宮の姫君は、父母の死後、唯嘆き哀しむだけで流されるままに生きる。困窮し、身分違いの男に身を委ねるのだが、それも長くは続かず、事情により別れ行く。姫は、またしても無為にただ生きるのだが、零落の末、遂にその生涯を閉じるのだった。今際の際、姫が見たものは…

某ブログさんの日記を読み返していて琴線に触れるものがあり、芥川の『六の宮の姫君』を読む。
この手の名作を読みたい時、青空文庫は大変有難く、便利だ。(著作権切れ作品のインターネット図書館)
特に芥川好きと言う訳ではないのだが、『六の宮の姫君』には複雑な思いがあり、折に触れ読み返している。

はじめてこの短編を読んだ時、かなり考えさせられた。
自分の中に、姫君の影を見たから。
(残念ながら、姫のような美貌も高貴さも持ち合わせぬが)
守られる存在である事に安穏として、ただ流されるしか出来ない者。
生きると言う意識が希薄な女。
己の生の形さえ曖昧な者には、安らかな死さえ訪れない。
“能く生きる者だけが、能く死に逝く事が出来る”のだ。
己を虚しゅう生きた者は、『暗い中に風ばかり、――冷たい風ばかり吹いて』いる中に、独り死に逝くしかあるまい。
生き方に相応しい死を。

恐らく、姫は芥川の姿でもあったのではないだろうか。
余りに鋭利な知性が、彼の心を磨耗させてしまったのかもしれない。
人生を掌上に照らす事の出来る人間だったかもしれないが、それに耐えうる心の強さを持ち合わせていなかった。
『暗い中に吹く冷たい風』に曝される彼の姿が、姫の向こう遠くに透けて見える。

勿論、私と、身分・時代に縛られた姫君、知性に振りまわされた芥川とでは、その生き方の意味合いが違う。
束縛のない現在を生きているのに、人生を勝ち取る努力をしない私は、単なる怠け者にしか過ぎないのだろう。
そうなのだと判っていても、心にあるうつほが、前に進む事を拒み続ける。
この歳になって今更、“人生は空しい”なぞと、青臭い事を言う気はない。
唯、これが自分の生き様なのだと、そう思うのみである。

誤解なき様に言い添えるが、取り立てて不運でも不幸せでもないし、別に人生に絶望している訳でもいない。
心弱き人間だが、心を病んではいない。(多分)
大切に思ってくれる人もいるし、大切に守るべき人間もいる。
要は、凡庸な微温湯の生き方を許される幸せな人間なので、“生が希薄”なぞと戯けた事を言っていられるだけなのだろう。
あぁ、青臭いw
いい加減大人にならねばと思いつつ、気がついたら、人生の終わりを思わねばならぬ歳に近づいている。
もし、その時がきたら。
『極楽も地獄も知ら』なくても良い。
『腑甲斐(ふがひ)ない女の魂』として、『暗い中』へ吹き込まれたい。
それで良いと思っている。


…暗いなぁ。BGMに「花葬」なんて聴いているから、無駄にダークになっちまうんだっちゅーのw
敢えて言うまでもないのですが、芥川の傑作の一つだと思います。
個人的思い入れがある所為か、羅生門や蜘蛛の糸なんかよりも、人間性に対する深い洞察が感じられるのですが。
それと、精緻な文は、流石。
物憂い都会びとである姫と、田舎臭い妻の対比が、僅か数行の文章から浮かび上がってくるあたり、今の作家にはない力を感じます。
姫の死の件、取り立てて過剰な表現をせず、うわ言の繰り返しで彼女の荒涼とした心象を表したのには、抑えた故の凄みがあり、総毛だってしまう。
最期を看取った乞食法師が、実は徳の高い上人であり、姫の虚しい生を否定しつつも哀れむ言葉が掛けられる終幕は、実は救済を求めていた芥川の心の現れだったのか。

私の読み方は、浅いし間違っていると思う。
でも、どうしようもなく、そう読んでしまうのだ。
歪んだ読解だったにせよ、心に残すものがある作品の力は凄い。

“うつほ”は埋めなくては。
せめて、絶望の出来る人生を。
そう思いつつも、腑甲斐ない人間は、今日も風に吹かれるままにあてどなく1日を終えてしまった。





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最終更新日  2005年10月14日 01時27分20秒
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