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2005年11月12日
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カテゴリ:読書
蒲公英草紙 常野物語 恩田陸 集英社
アラスジ:まだ戦争が幽かな予兆だった頃の、緩やかな時間が流れる農村。大地主・槙村一族は村の為に力を尽くし、人々は穏やかに暮らすことが出来ていた。村の医師の娘・峰子は、体の弱い槙村の末娘・聡子の話し相手として少女時代を過ごす。人の出入りの絶えぬ槙村家だったが、或る時、不思議な雰囲気の一家が訪れた。人々の記憶を“しまう”事が出来る彼らは、異能を持ち放浪する“常野一族”だった。彼らを受け入れ、時間は穏やかに過ぎる。だが、思わぬ悲劇が村を襲い…


夜中、と言うより未明に蠢動する大ばか者。
諸般の事情で、この処、PCに触れる時間がどんどんずれ込んでいる。
で、夕べ折角書いた感想文が、楽天メンテでダメになっちゃいましたとさ。フンッ
気を取り直して、もう一度書き直し。さてさて。


どうしても泣いてしまう本と言うものがある。
何度読んでも泣けてしまう本。私には3冊。
恩田陸の『光の帝国』もその一冊。(もう1冊は、恥ずかしながら…銀英伝のヤン提督の死の下り。数年読んでないから、今も泣けるか判らないけど。そしてもう一冊は、嶋田双葉のbird。えー、この本を知ってる人は一寸好事家w)
更に、この『蒲公英草紙』が加わることになりそう。
本を読んで泣いたのは、いつぶりなんだろう。
久々に、ポロポロと涙を流しながら読んだ。
実は、少女趣味なのだw
あぁ、こっぱずかしい。
だが、そう言うのも悪くはあるまい。
人は、ひとつくらいはきらきら光るがらす玉を、心の中に持っていたいのだから。

美しく、穏やかで知的な人々が、ゆったりとだが綿密に時を紡ぐ、何時もの恩田ワールドが展開される。
これが性に合わない人には、嘘臭さが鼻について我慢出来ないだろう。
キャラクターが少女漫画と指摘されれば、確かにその通り、一言もない。
それと、まどろっこしさに苛々する向きもあろう。
殊に前半のテンポは緩やかで、物語が動き出す後半までが長い。
私はこの緩やかな前半が好きなので、しみじみと恩田の空気を吸い込み愉しんだが、退屈だと感じる人がいるだろうし。
結局、これはこういうものとして受け入れることが出来る人のみが、甘露のような常野の話に耳を傾けるべきなのかもしれない。

今回の常野物語は、『光』から更に時代をさかのぼり、主人公は一族以外の少女。
彼女の視線は、常野と聡明で美しい聡子に二分されるので、さらにもどかしさが強く感じられるかもしれない。
だが、この無垢な少女の視線を介することで、読者の「常野って何?」との疑問を、判りやすく示してくれていると思う。
人間の本質的な美しさ、それを聡子や常野一族に象徴させている。
個である人間は、美しく、寂しく、そして強い。
だが、戦争という時代のうねりに乗った集団としての人間の、醜さと弱さ。
小さな、だが重い自己犠牲を見せた聡子の行為の後、慌しく時代を駆け抜け終戦まで飛ぶ。
ここに恩田の想いを見た。
聡子の、そして常野一族の強く美しい想いに、我々日本人は値するのか、と。
いや、彼らの思いに答えることの出来るだけの“心”を、我々は持たなければならないのだ。
敢えて一足飛びに時代を通過させた事で、それを問いかけたのだと感じた。
小説の中で事細かに訴えるのではなく、飛んだ空間を読み解くことで答えは自分で考えて出せ、と言う事なのかもしれない。
私はそう読んだ。
が、戦争中の話を飛ばしたことで、物足りなく感じた人もいても可笑しくはないと思う。
その辺も、解釈は人それぞれで。

解釈といえば、聡子が評する日本画と西洋絵画の違いについての考察が面白かった。
目の前の物そのものより、それが有する全てを俯瞰した解釈を画布に展開する日本画に、今見えているものを写し取ることで本質を抽出しようとする西洋画。
若き仏師と画学生の対峙は、全体的な流れから浮いてはいるものの、その場面そのものはかなり良いと思った。
しかし、やはり白眉は、聡子の健気な自己犠牲の場面であろう。
本当は、この手の展開は好きじゃないんだけどね。
でも、お涙頂戴ぽいなぁと思いつつも、泣いちゃったんだから仕方ないw
素直に、恩田の力量に敬意を払い、泣かせて貰おうではないか。
恩田にとってきっと、人間とは恐ろしい、でも底の底では壊れぬ美しさを持った存在なんだろうなぁ。
人物が表面的とか評価される事もあるけれど、私は彼女の書く人々が好きだ。

全体的に、『光の帝国』ほどの重さや深さには至っていないが、これはこれで良いと思う。
“蒲公英”と言う、どこにでも咲くありふれた、だが観るだけで優しい心持になれる花をタイトルにもつ本だ。
ふわふわと飛び立った綿毛が、きっと心のどこかに、新しい花を咲かせることが出来ると思いたい。





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最終更新日  2005年11月14日 00時13分03秒
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