町田氏はこの表現について、「スタッフがジェラートを選んでくれるということなのだろう」とした上で、「「おまかせコース」を選べば、客は料理をどれにするか考える必要がない」、つまり「「おまかせ」の主体は客でなければならない」が、「「スタッフにおまかせ」だと、スタッフが客に選択を任せるという、普通の注文のやり方を意味する」から、「ジェラートはおまかせ」若しくは「スタッフにおまかせ」と言うべきだと結論する。
確かにこの表現は少し違和感があるが、町田氏の言うように意味は通じる側面がある。そもそも、「スタッフのおまかせ」という表現が、必ずしもスタッフが主体になるとは限らない。一般的に日本語の〈格助詞〉「の」は、様々な関係を表しうる。「僕の本」「明日の会議」「私の指示」「株式の譲渡」「1キロの通過」「寺の参拝」はそれぞれ、「所有」「時期」「主体」「対象」「時点」「場所」などを示す。
また、第68回にとりあげた「お取り寄せする」にも述べたが、「おまかせ」はそれ自体で〈名詞化〉しているようにも思うので、日本語として、別の規範が育ちつつある印象がある。「ジェラートはスタッフのおまかせでお願いします」と言えば、割と自然な印象を受ける。敬語の独特の認識過程を研究する必要がある。
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最終更新日
2014年03月31日 22時45分09秒
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