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カテゴリ:弁護士業務
1月から今月末まで、第71期の司法修習生Sさんを受け入れています。
年末年始休みの上、短い2月、もうあっという間に残り10日間になってしまいました。 毎日、真摯な姿勢で、一生懸命、色々なことを学ぼうとしているSさんから、私も沢山のことを学ばせて頂いています。 弁護修習の指導担当の任務のひとつに、「起案」の添削指導があるのですが、普段、自分で書いた書面を自分で見直すだけなので、他人の視点で書いた起案を自分の視点で見直す機会は、本当に貴重です。 この貴重な機会から学んだこと、備忘録を兼ねて書き留めておきますね。 1,書面の目的を考える 弁護士が作成する書面は、「漫然と聞き書き」することで仕上がるものは、ほぼありません。 準備書面や主張書面といった主張を書く書面は当然、陳述書などの立証に使う書面も、また、簡単な連絡文書であっても、必ず「目的」があります。 この書面を書く目的は何か、何のためにこの書面を書くのか、常に意識することはがとても大事だと思います。 誰から見ても自明な目的がある書面もありますが、私の感覚では、そうではない書面の方が多いと思います。その場合、自分で目的を発見する作業が必要になってきます。 ここで考え抜くか、考え抜かないか、で、書面の出来は全く異なってきます。 よくよく見比べると拾った「要素」としては、同じでも、目的がはっきりしている書面と何となく書いてある書面は、伝わり方がまったく違います。 「要素」を拾ってあるね、と褒められることはないのが実務の起案です。拾っていても伝わらなければ意味がないのですね。 2,「一読了解」を目指す 目的がはっきりしていても、その目的を達成するためにどのような書き方をするかも重要です。 技術的なレベルでは、個々の弁護士が様々工夫しているところだと思いますし、私自身、「目的を明示する」、「漫然と項目をつけず、内容を要約した項目をつける」、「事実と主張を区別して書く」等を意識していますが、読みやすい書面に共通しているのは、「一読了解」ということだと思います。 「一読了解」という言葉は、論理が流れている、読んでいて無理なく話が頭に入ってくる、といったイメージで使っていますが、読んでいて、どうもゴツゴツするというか、引っかかりが多い書面は、どこかに論理の飛躍があったり、説明すべきところが落ちてしまっている場合がほとんどです。 一読了解ではないということは、実は、自分が伝えたいことをわかりきっていないという場合がほとんどです。ここでも考え抜く作業が必要になります。 3,言葉に落としながら考える 起案の基本姿勢として大切なのは、私たちは、「言葉と理屈」を武器をする職業であることを意識することだと思います。画家が絵で、音楽家が音楽で、俳優が演技で表現することを、私たちは、言葉と理屈で表現しなければならない。起案のパーツは言葉なので、どんな表現、どんな言い回し、どんな単語を使うのか、言葉に落として具体的に考えることが必須です。 1,2,で考え抜くと書きましたが、漫然と考えるのではなく、言葉に落として考えるという姿勢が大事だと思います。 何かが降臨してきて「これだ、これだ!」と一時にわあっと書ける、もどかしい思いと共に言葉が溢れてくる・・・みたいな幸せな時もたまにありますが、考えていてもよく分からないことも非常に多いので、考えていることをまとまらないままに、とりあえず書き始めてみると、言葉にすることで自分の考えが整理されたり、穴があることに気付いたりします。 難しい起案だと、エクセルで書き始めることもあります。 どんどん行が足せるので、思考がまとまっていないときに骨格を作る作業をするのに便利ですよね。 主張対比表みたいなものを作っていて、足りないところや補足すべきところが分かることもあります。 ・・・色々書きましたが、でも、私は、読書は、「一読了解」じゃない本の方が好きですね(笑)。 よく分からないけど凄い文章、はっと自分の心に引っかかる文章、なぜだか分からないけど心に飛び込んでくるストーリー、ああ、沢山読みたい!!! 2月もあと少し、そして3.11まであと少し、ですが、心をきちんと保って毎日頑張っていこうと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.02.20 06:18:30
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