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座 禅 猫

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2008年10月24日
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「私のハチ」と、つぶやくと、「僕のハチだよ」とだんな君に言い直されてしまいました。そもそも捨て猫だったハチを拾おうと言い出したのはだんな君だったのでした。彼にとっても、ハチの存在は大きかったのでしょう。


あまりにも突然に、ハチはいってしまいました。


泊まりのお客さんのあった火曜日。シーツを取り替えようと下の部屋のベッドにいったら、ハチが上に寝そべっていました。

(よく寝ているな)と、下のキルトごと移動させようと手を差し込んだとき、はっとしました。

息をのんだまま、しばらく動けませんでした。おろおろと階段の方に向かって、「ハチが!ハチが死んじゃった!」と叫びました。

おりてきただんな君は、私が触れるハチの様子を見て取って、何とも言えないため息をついた後、「もう死んでる」と言いました。

「なんで?」という言葉しか浮かんできません。


お客さんがいます。取り乱すわけにもいきません。いつものっていた青いフリースの毛布にハチを包んで、段ボールの箱の中に入れました。

箱の中を見つめている私の後ろで、「残念だ」「ハチはいいやつだった」「いろいろなところへ連れていった。沖縄にも連れて行った」と、だんな君がお客さんに話していました。

私は混乱してしまってどうすることもできず、ただ箱の中のハチを見つめていました。

その晩は、普段しない台所掃除などをして何とかやり過ごしたのでした。


次の朝、お客さんを送り出した後になって、いろんな思いが巡ってきました。


前の日、ひなたぼっこするハチを見て、急に写真を撮らなければとカメラを構えたこと。「なんで猫の写真なんか撮るの」と尋ねるだんな君に、「黒猫の写真を上手に撮るのは難しいんだよ。ハチだってもう年だし、いつどうなるかわからないから」と答えました。いままで、ハチのことについて、そんな風に言ったことはありませんでした。言いながら、なんでこんなこと言ってるんだろう、と、ちくりと気がとがめました。だんな君は私の言葉に苦笑いしながらも、日なたに寝そべるハチの姿をカメラに納めてくれました。

それが最後の写真になるなんて思いもせず。

そんなことを言ったから、ハチは死んでしまったんだろうか・・・

それとも、病気だったのか。いや、ハチは確かに強くはなかったけれど、最近の体調は良かった。前の日まで、ナナととっくみあいのけんかをしていたじゃないか・・・

子供が生まれてから、あまりかまってもらえずにストレスが大きくなってたのだろうか。でも、最近はテレコともうち解けてきて、朝の挨拶をしたり、テレコが床に並べるおやつを一つずつ食べてみせたり、少しの間なら抱かれたりもしていたじゃないか・・・


最後にはっきりと記憶に残っているのは、台所に取り付けた赤ちゃんゲートをひらりと飛び越え、私の背中に着地したハチの姿です。テレコは大喜びで拍手喝采。「ハチ、すごいねえ!」と二人で笑ったのでした。


そのハチが、今はもう動かない・・・


近くの町に、個別にペットの葬儀をしてくれるところを見つけ、だんな君に電話で手続きしてもらいました。引き取りに来てくれるとのこと。

種類は?体重は?色は?かかる日数、費用・・・。そんな事務的なやりとりを聞いていたら、ぐっと悲しみがこみ上げてきました。


釣り鉢に一杯咲いた花をはさみでざくざくと切って、箱の中のハチを囲みました。お気に入りだったガラスのお皿に、いつもはちびちびとしかあげなかったマタタビの小瓶を並べました。こんなことなら、もっとたくさんあげるんだった。涙がこぼれてきます。

テレコが私の様子に困った表情を浮かべていました。「マミはね、ハチが死んじゃって、悲しい」と、だんな君が話しかけています。「ハチはね、もうバイバイなんだよ」

テレコは、私のところに来て、床におやつを並べる仕草で「おやつをあげたい」と訴えました。おやつを二つ、三つ、持たせると、かがんでハチの口元に並べていきます。それを見て、また泣きました。


ハチを引き取りに来たのは、体の大きな中年の男性でした。ぎこちなく笑顔を作って挨拶しました。彼も沈痛な面持ちです。大変な仕事だよね、と、少々おかしく思いました。口数少なく、手続きを。

彼は毛布を敷いた籐のカゴをもって来ていましたが、花に囲まれたハチを見て、「このまま連れていきましょう」と言いました。

用心深く、神妙に、ハチの段ボールの棺は運び出されていきます。何か声をかけたかったけど、何を言えば良かったのでしょう。

玄関のドアを閉めたら、また、苦しくなってきて、ハチを連れた車が遠くなっていくのを見送りながら、泣きました。

数日したら、連絡が来て、私たちは小さな錫の小箱に入ったハチを迎えに行くことでしょう。



ハチは、プライドが高く、頭のいい、美しい黒猫でした。

「めいわくはかけませんから」

そんな風に、ふっと逝ってしまいました。


かつて、飼い猫は死ぬ姿を飼い主に見せないように、そのときを知ると行方をくらます、と言われていました。ハチは、そんな古風なあり方を貫きたかったのでしょうか。


泣きました。泣きましたが、(ハチが死んでしまったら、どんなに悲しいことだろう。私はきっと耐えられないだろう)そう思っていたほど、悲しめません。今は、ぽかんとしてしまって、心ががらんとしているだけなのです。悲しみは、これからひたひたと波のように迫ってくるのでしょうか。

ハチ。ハチ、ごめんね。もっと抱きしめたかった。もっと、名前を呼んであげれば良かった。
ハチ。私のハチ。こめんね。明日があると思っていたんだよ・・・。

hachithedaybefore








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最終更新日  2008年10月26日 06時45分38秒
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