「伝説のギタリスト」 part-2 (Paul Kossoff)
1976年3月19日、ランディ・ローズの死から遡ること6年前の同日、アメリカに向かう旅客機の機上で心臓発作のため25歳の生涯を終えたイギリス人ギタリストがいました。彼の名は ポール・コゾフ(Paul Kossoff 1950年9月14日 - 1976年3月19日)。英国のヘヴィー・ブルース・ロック・バンド「ブラック・キャット・ボーンズ(BLACK CAT BONES)」で活動していたギタリスト、ポール・コゾフとドラマーのサイモン・カーク(Simon Kirke) が1968年4月にバンドを脱退、ブラウン・シュガーというバンドのシンガーだったポール・ロジャース(Paul Rodgers)、アレクシス・コーナーのバンドでプレイしていたベーシスト、アンディ・フレイザー(Andy Fraser)が合流してブリティッシュ・ブルース・ロックを代表する名バンド、「フリー(FREE)」が結成されました。当時全員がティーンエイジャーという若きホープがデビュー・アルバム「トンズ・オブ・ソブス(Tons of Sobs)」をリリースしたのはロック・ミュージックの黎明期、1968年でした。魂の咆吼とでもいうべきチョーキングを多用した"むせび泣く"ギター、タイトでヘヴィーなドラム、他に類を見ないユニークなフレーズで曲に独特な表情を付けるファンキーなベース、そして、多くのアーティストから賞賛された"天性の歌声"を自在にコントロールするヴォーカル、といった4人の個性がひとつになったサウンドは、一部のみで評価され、「知る人ぞ知る」といった存在でした。70年にリリースされた3rdアルバム「ファイアー・アンド・ウォーター(Fire and Water)」の収録曲、「オール・ライト・ナウ(All Right Now)」がシングル・ヒットし、ジミ・ヘンドリックス、EL&P、The Who、といったアーティストとともに出演したワイト島フェスティヴァルでのライヴが評判になり、フリーは一躍人気バンドとして持て囃されるようになりました。しかし次作「ハイウェイ(Highway)」のセールスは振るわず、メンバー間に亀裂が生じ、バンド内の険悪なムードから逃れるためドラッグに救いを求めたコゾフの肉体はしだいに蝕まれていきました。71年には傑作ライヴ・アルバム「フリー・ライヴ(Free Live!)」がリリースされましたが、ロジャースとフレイザーの間に生じた対立は解消することなく、71年5月9日に解散声明が発表されました。その後コゾフはカーク、日本人ベーシスト山内テツ、アメリカ人のキーボード・プレイヤー、ラビット(本名 John Bandrick)とともに「コゾフ・カーク・テツ・ラビット」を結成し、同名のアルバムをリリースしましたが、コゾフの薬物依存(抗鬱剤の過剰摂取)はエスカレートし、心身ともに危機的症状に陥ってしまいました。「コゾフを立ち直らせるため」不仲であったロジャースとフレイザーが手を組み、再結成したフリーは72年に「フリー・アット・ラスト(Free at Last)」をリリースしましたが、フレイザーはまたしても脱退、山内テツとラビットをメンバーに加え、73年にはラスト・アルバムとなる名盤「ハートブレイカー(Heartbreaker)」がリリースされました。コゾフの健康が完全に回復することはありませんでしたが、比較的容態が良い時にスタジオで収録したというテイクには最後の輝きが収録されていました。(コゾフはこのアルバムでは正式メンバーではなく、ゲストとしてクレジットされています)73年にはフリーは自然消滅してしまい、ロジャースはカーク、元キング・クリムゾンのボズ・バレル(B)、元モット・ザ・フープルのミック・ラルフス(G)と共にバッド・カンニー(BAD COMPANY)を結成。コゾフはフリーのメンバー、イエスのアラン・ホワイト等の協力を仰ぎ、ソロ・アルバム「バック・ストリート・クロウラー(Back Street Crawler)」を73年にリリース。アナログ盤A面を全て使った大作"Tuesday Morning"、悲壮感漂うインスト曲、"Time Away"といった名曲が収録されています。その後ソロ・アルバムのタイトルと同名のバンド「バック・ストリート・クロウラー」を結成し、75年に「バンド・プレイズ・オン(The Band Plays On)」をリリース。後にキーボードがフリー時代の盟友ラビットに交代し、セカンド・アルバムをレコーディング。そしてリリース直前の1976年3月19日、旅客機の機上で薬物の後遺症による心臓発作を起こし、静かに息を引き取りました。コゾフの実質的なラスト・アルバム「二番街の悲劇(2nd Street)」がリリースされたのは、彼の死の翌月の事でした。---- Paul Kossoff Discography ---★Black Cat Bones* Paul's Blues (2008) - Recorded 1967 - 1968★Free* Tons of Sobs (1968)* Free (1969)* Fire and Water (1970)* Highway (1970)* Free Live! (1971)* Free at Last (1972)* Heartbreaker (1973)★ Kossoff, Kirke, Tetsu and Rabbit (1971)★Solo* Back Street Crawler (1973)* Koss (1977) - Antology* Blue Soul: the Best of (2010) - Best Album★Back Street Crawler* The Band Plays On (1975)* 2nd Street (1976)* Live at Fairfield Halls (2009) - recorded at Croydon's Fairfield Hall in June,1975-------------------------------◆Back Street Crawler 1st.* Paul Kossoff - lead guitar* Terry Wilson-Slesser - lead vocals* Terry Wilson - bass, guitar* Tony Braunagel - drums* Mike Montgomery - keyboards, vocals◆Back Street Crawler 2nd.* Paul Kossoff - lead guitar* Terry Wilson Slesser - lead vocals* Terry Wilson - bass, acoustic and electric guitars* Tony Braunagel - drums* John "Rabbit" Bundrick - keyboards, vocals*コゾフ亡き後、「クローラー」と改名したバンドは元イフのジェフ・ホワイトホーンを後任ギタリストとして迎え、77年に「毒牙(Crawler)」をリリースしました。Paul Kossoff ポールコゾフ / Live At Croydon Fairfield Halls 輸入盤 【CD】