第10話

・CHAPTER-10「大決戦!決意も新たに立ち上がれ!」

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8月始め・・


ようやく輪中の生徒達にも夏休みが訪れていた

臨海学校の一件から世間では一気に「怪物の噂」が広まっていたが、今の所は輪中の学生と旅館の者以外に目撃者はいない

・・あれ以降、A.R.Kが遭遇したのはあくまでも霧の中のみ


だからまぁ、「A.R.K」の存在の露見・・そういう面はなんとかなっているようだ

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8月1日・・晴れ

今日は朝からぶっ通しで夏の宿題をまとめてすぱっとやってしまった。

・・ユウちゃん達も来たけど、ろくにあたしの言う事聞いてなかったような・・

またギリギリで仕上げる事になっても知らないよ、あたし。


8月2日・・晴れ

マルに新しく「サテライトランチャー」を搭載する計画を立てた。

・・でもなぜかユウちゃんや忍くんは大反対して、結局没になっちゃった

う~ん・・なんで?


8月3日・・ちょっと曇りっぽい

母様が咲妃ちゃんとメイちゃん連れて本社に行っちゃったのよね・・(護衛?)

仕方ないからユウちゃん誘って映画館に行って来た。

映画のタイトルは「ゴジラvsUSAゴジラ -解釈の違い-」(笑)

・・やっぱ趣味が同じなだけあって、ユウちゃんもあたしも大はしゃぎで楽しんだ。


8月4日・・雨

小麦ちゃん、チェス、明くんと偶然ばったり会った

山手線経由で、どうやら東京ドームで開かれる「大骨董市」に行くらしい

・・誰の趣味なんでしょ~・・?(汗)

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「大変な一週間だったわぁ・・ホント」


あたしは独り言をつぶやいて、見返していた日記を閉じた

部屋の奥では咲妃ちゃんとメイちゃんが眠っている

昨日まで大変だったもんね・・


これからの事も気になるけど、あたしはまず、昨日までの事であの子の問題を解決しなければならないと痛烈に感じた

・・ALICEの徹底改修・・


正体こそばれなかったけど、A.R.Kの存在が露見した今・・・

あたし達はいっそうの戦力強化と行動の慎重性を求められる


・・全ては8月4日に始まり、11日の真夜中に決着した・・

今までで最大の戦いであり、あたし達の問題点を浮き彫りにするものでもあった

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8月4日・・昼過ぎ


恒例行事というか、夏の風物詩というか・・

近年の東京都では、夏に3回は東京ドームでの大きなイベントが開催される

今年は4日から7日までの間「大骨董市」

あとは30・31日に「日米合同科学技術展示会」


・・ちなみにそれぞれパブリとバイヤーズがあるが、もちろんあたしはその気になればバイヤーズに参加も可能である(特に後者)

あたしは日米・・には行くつもりでいたけど、まさかこっちに来ることになるとはね・・

ちょっとした用事の帰り道、山手線車内で明くん達に会って、なんとなく付き合うことにして・・


で、今まさに会場のまっただ中にいるワケで。


「・・・・(メモ:技モノですなぁ。)」


そう言って(書いて)小麦ちゃんが持っているのはあやうく「∞」のマークになりそうな怪しいカタチの壺・・


「そうかな?俺はこーいうのいいと思うんだけど~・・」


小麦ちゃんとほぼ同時にそちらを向くと、それこそ作者の趣味を疑いそうな不気味な彫刻(悪魔?)の掘られた湯飲みらしきもの

・・見れば「世界平和」とかいう意味不明な文字も・・


「・・明くん、それは怖すぎ」

「そう?」


とんとん、と小麦ちゃんに肩を叩かれて振り返る

どこかで似たのを見たような気がするけど・・「ロボコップ」の頭のカタチしたヤツがあった


「いいセンスね」


あたしは普通にコメントしていた(笑)

・・やっぱりこういうのがいいのよ♪


そうこうしている時・・

チェスは会場の隅にあった、セール品のところにいた

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ではここで「誰の趣味でここに来たか」・・という質問にお答えしておきましょう

私の趣味ですね・・正しく言うなら古い物好きなだけですが


「・・なるほど、このロボット・・」


私はこれでも様々な学問を学んでいますから

・・わかってしまうんです、物の価値が。


「1970年製の富松製火星ロボット(初期版)・・状態はよく保存状態も完璧かと・・」


・・この前明さんに言われました

私なら「何でも鑑定団」で仕事ができると・・

私、スパイが本職なんですが?

最近先輩から連絡がないので、仕事してませんがね・・

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その、帰り道・・

チェス一人が大きな袋をかかえて、再び山手線~乗り換えで六澄へ帰路につく。

結局購入したのは、「阪神師匠のサイン入りハリセン(小麦)」「ガンヘッドの撮影に使われたエアーロボットのレプリカ(明)」

・・・で、あたしは何も買ってないと(どーせなら秋葉原で使いたいもーん)


電車を降りて少し歩いて・・学校近くの商店街の裏手、小さな路地に入っていた


「近道はどうやら、失態だったようですね」

「?」


ワケがわからずに振り返ると・・


「異形ーっ!?」


あたしの手は驚くより早くバッグからマルを掴み・・操作を一瞬にしてコンプリートする


「アリス!」


呼んだか否か、一瞬にしてアリスは霧の向こう側から風を切ってやってきた

(ただいま60秒チャレンジ展開中で~す(笑)


「ありがと佐渡さんっ!!」


叫んでアリスに飛び乗り、起動キーを回して構えて・・アリスのモニターが暗いコクピットを照らす


「さぁ行くわよ!いぎょ・・・」

「・・いなくなっちゃいましたね?」


あたし(アリス)がせっかくポーズを決めているのに、異形はささっといなくなっていた

・・どぉして~???


いつもなら不意打ちくらいやってくるような怪物が・・なんでだろう?

とにかく佐渡さん達の60秒チャレンジ初日は・・無駄に終わったようで・・。


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8月5日・・


ユウちゃんと忍くん・・はいつもの事として、A.R.Kのメンバー総勢12人(何度も言うようだけどマルもそうなんだから)

沖田大介、真中雫、早月野明、甘夜小麦、風原咲妃、勇輝改都

それからメイナード=リィオン、フランチェスカ=クロード・・マル。


皆が揃った所で、あたしは部屋を暗くして、メガネを怪しく光らせる


「今回わざわざ集まってもらったのは、一度もみんな揃って会議を開いた事がないから・・という理由だったりしちゃいます」

「ま、そうだな」

「特に私など、一度戦ったのみで何もしていないでござる・・」

「別に負い目を感じるような事じゃないわよ、生身で戦って生きているだけすごいんだから」

「そうであろうか・・?」


改都くんを見ると・・未だ背中に背負った流星牙皇が、異様な光景に見える(座っている時くらいその辺に置けばいいのに・・)


「私たちの目的は一つ、「異形」と呼称している謎の怪物、それを倒して首都圏を防衛することよ」

「首都防衛部隊ってか?・・やっぱかっこいーじゃん♪」


大介くんが子供みたいに笑った


「警察も自衛隊も認知していない状況で、噂のみが流れていて・・」

「今の所人が襲われていないだけ、いいよ」


ユウちゃんは帽子の角度を変えながらそうつぶやいた


「そういえばそうですよね~?・・・なんで景さんや裕司くんの行く先々に出てくるんでしょーか☆」

「委員長・・それ、あってるかもしれないね」

「・・まさか、僕が呼んでいるとでも・・・!?」

「違うわよ、それならメイちゃんも同罪だから」

「ふぇ~!!・・ぼ、ボク何も悪いコトしてないよ~!?」

「・・イヤ、ただの可能性論だから泣く程の事じゃ・・」

「と、とにかく・・昨日出てきた異形の話に移すわね」

「ああ、昨日のアレですか・・突然消えてしまった・・」


チェスの言葉に合わすようにして、スクリーンにマルが映像を映し出した

それは昨日の光景・・あたしが操作している間もマルは周りの光景を記録していて、一部始終が映っていた


異形が現れて、あたしが慌ててアリスを呼んで、異形が撤退していって・・


「目的が違うのか?・・今までと?」

「そんな・・あいつら、ただ単に人襲ってるだけじゃないの?」

「よくわかんないウチにさんざんやっつけてたけどね、あたし達も正体とかわかってるワケじゃないのよ、実際・・」

「・・んで、こいつに関して何か言いたい事があったんじゃないのか?」

「そうそう、ユウちゃんとメイちゃんしか異形の位置がわからない、ってのも不便だから・・こんなの作ってみたのよ」

「こんなの?」


あたしは机の引き出しから取り出したデバイスを、得意げに見せる


「このシステムを携帯にインストールすれば、なんと!異形と一緒に出てくる霧の特殊な電波(っぽいもの)を感知できるのよ♪」

「・・すごい・・」


そうでしょうそうでしょう、あたしの作るモノはいつでもすごいんだから♪


「・・俺携帯なんて持ってないぞ」

「・・(メモ:私もないです)」

約二名が挙手する

大事の前の小事ということであたしはさらり、と流す


「じゃあ明日からは気を付けてね、みんな」

「・・だから、俺携帯ないって」

「忍くんはカンがあるでしょ?野生のカンとか忍者のカンとか・・」

「・・そんな危なっかしいアバウトなモンに頼れというのか、おのれは・・(汗)」


・・というワケで、明日からみんなであの異形を捜索する事にした。

今までと違うタイプが出てきたとすれば、もしかしたらヤツらの目的や正体もわかるかもしれない・・!

そう思っていた

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8月6日・・


「いたぞ!」

「追えッ!!」


・・新宿で遭遇、しかし取り逃がす。

以後しばらく周辺をうろついてみたけど・・結局今日遭遇したのは僕と忍だけみたい。

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8月7日・・


「雫殿!!」

「任せておきますよ~!私はまだ死にたくないですから~!!」

「流星・・」


・・私が流星牙皇を引き抜く前に、霧も敵もいなくなっていて・・

すぐ後に通りかかった警察官殿に危うく逮捕されそこなりました(汗)

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8月8日・・


「いたぞ!」

「ええい、皆の者出会え!出会えーっ!!」

「・・・(メモ:ちゃーちゃっちゃちゃーちゃちゃっちゃちゃー♪)」


あ、この曲↑は暴れん坊将軍の殺陣のテーマでよろしく。

今回はハリセンとか持ってきたのに・・漫才をやる前にいなくなっちゃったようで

明くんも大ちゃん(大介)も、しばらく辺りを警戒してすっごい緊張感だったけど・・

・・・・ん、私?・・・・小麦でっす。(って・・いつもこうやって喋ってるのに・・)


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8月9日・・


いい加減探すだけってのも疲れた・・と言うので、僕は忍につき合って秋葉原に来ている

・・また古いプラモを探すらしい(しかもマイナーな種類の・・)

正直僕は戦いたいワケじゃないので、こういう事してた方がよっぽどいい。


(今度こそガンダムエックス売ってるといいんだけどな~・・)


そう思って店の奥の方へ足を踏み入れる

そこにはかなり年代がかった箱が積み上げられていて、中には見覚えのありそうなモノもあった


「あ、アクロバンチ」

「魔境伝説?・・・俺さぁ、それバイク以外あんま好きじゃないんだよね」

「あ!ダブルエックス見っ・・・・・って・・これフリーダムか・・・」

「似てるけどな」

「・・親子マシン・・・」

「いつの年代だよ、それ(汗)」

「エルガイムのスパイラルフローは?」

「そんならドラグナーのドラウかバイファムのトランファムの方がいい」


・・今気が付いたってのもヘンなのかもしれないけど、忍って結構な「趣味人」だよね・・?


「・・忍は何を探してるの?」

「バトルスキッパー。」


・・そんな二十年以上前のモノ、知ってるだけで十分すごいよ(今西暦何年だと思っているんだか・・)

僕らがこうやっている間にも、みんなはそれなりに捜索を進めているんだよね・・

・・なんか悪い気がしないでもないな・・

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ボクはチェスとコムギと一緒に、あのファミレスにいた

外は暑くて死んじゃいそうだったけど、ここは涼しくておいしいものも食べられるし♪


「せっかくですから何か食べて行きましょうか」

「・・・(メモ:いいかも)」

「そうだね~・・・」


・・う~ん・・何か忘れてるような気もするけど・・

ボク達、何してたんだっけ?


・・まぁいいや、ごはんごはん~♪

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一時間後・・


食事を一通り終えたボク達は、ルインさんに見送られながらファミレスを後に・・


「ふぁぁ~・・・む。」

「・・・(メモ:眠い?)」

「うん・・おなかいっぱいになったら、なんだか目が・・」

(単純というかなんというか・・)

「ふぇ?何か言った、チェスぅ?」

「いえ、なんでもないですよ」


ヘンなの。


「クラクションの音・・」

「ふぇ?・・・ホントだ、なんかおっきなトラックみたいな・・」


どんっ!!!


あれ・・・??


トラックのクラクションの音・・その直後、ヘンな衝撃の後にボクの頭の感覚がおかしくなっていた

・・え?ボクがおかしくなったの??


景色がぐるぐる回って、三回くらい地面にぶつかったような気がして・・

うわぁ、こんなにぶつかったら痛いよね・・?・・・・・痛くない?

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「・・!」


私はとっさに身を翻したからいいようなものの、信号無視のトラックは無防備なメイさんを思いっきりはねて・・・

ちゃき・・

手慣れた動作でいつものように愛銃イーグルを取りだし、私は逃走しようとするトラックのタイヤめがけて二発・・・


ばっ・・ん・・・


コントロールを失ったトラックは信号機に衝突し、完全に停止・・

私はそれを確認すると、メイさんの身体を抱え起こした


「・・ちぇすぅ・・・ボク、おかしくなっちゃった・・」


神経をやられたのか、メイさんは痛みを感じていないらしく、やけに落ち着いている


「右腕複雑骨折、頭部損傷、頸椎損傷・・・出血多量・・」

「・・(メモ:・・これは・・)」

「・・数分と保ちません」


彼女の倒れた辺りから血で満たされ、アスファルトは真っ赤に染まっている


「救急車を・・間に合うとも思えませんが」


私は何度もこういう状況を見ているので・・ね

誰かが誰かにやられたり、自分がそうした場合も・・

キズの度合いで、その人間の生死の可能性がわかるようになっている


・・そして・・・静かにメイさんの鼓動が止まるのが、わかった

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「ふぇ~・・死ぬかと思ったよぉ~(泣)」

「死んでたくせに(笑)」


非常識な事に、病院を出る時には頭に包帯、頬にばんそーこーという簡単な治療の跡だけで、メイさんは歩いていた


病院に運び込まれて少し・・景さん達が到着

そしてメイさんになにやら電極つないだりなんだりすると・・


「・・変身?」


した。

死んだはずなのに・・メイさんの身体が反応して、寝台他の金属を取り込んで変身・・

そしてゆっくり伸びをすると、ウイングショットになったメイさんは私たちに気が付いたらしく


「あれ・・ここどこ?」


簡単にそう言ってくれました(汗)


「説明しとくとね・・ユウちゃんメイちゃんの変身は「ナノマシン」によるものなのよ」

「ナノマシン・・」

「元の状態を記憶しておいて、変身形態を作って、また元に戻す・・」

「・・・だから今のでナノマシンを動かしてやれば、元に戻るってか・・??」

「そゆことぉ。」


忍さんがハリセンで、何度か景さんの頭を叩いていた


「ンな無茶苦茶な理屈でー!!!」

「しょーがないでしょー!?そういう風にできてるんだから~!!」

「・・まるで僕ら、ゾンビか何かみたいなんだ・・(泣)」


・・その後病院側に景さんがどう説明したのかは不明ですが、まぁ事が収ればいいでしょう・・


え、メイさんの頭の傷ですか?

・・廊下を歩いていて転んだだけですよ(笑)

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8月10日・・


どーもぉ、委員長の雫でございまぁ~す♪

・・いきなりなんですが・・


「はひぇぇっ・・!?」


・・な、なんで私一人だけの時に~!?・・

がたがた震えていなければ、私はそう大声で叫んでいたと思う。

声が出ない、足がすくんで動けない・・


・・せ、せめて改都くんがいてくれればなんとかなりそうなのに~(泣)


六澄の商店街の裏手・・この前遭遇したばかりなのだから警戒すべきでした・・

ふらふら~と歩いていると突然霧が立ちこめてきて、私の視界は真っ白に・・


「あうあう・・・あうぅぅ・・(泣)」


・・おぉぉぉ・・・

って・・・そんな雰囲気出すようなうなり声出さなくても~!!!

・・わ、わたしはぁ・・どうなるんでしょ~?

食べられる?原型止めないくらい酷く殺される?・・

敵をいざよく見てみると、想像が当たっているような気になってしまいますよぉ~(泣)


「・・?」


しかし・・いつまで経っても、私の方を見たまま動こうとはしませんねぇ・・?

これはもしかして、らっきぃ☆ですかぁ?


そそくさと逃げだそうとすると・・異形さんはそれより速く、私の行こうとした方向に走り出して・・


・・そのまま、通り過ぎてしまいました(汗)


「委員長!!」

「はへぇ・・ゆ、裕司くん!!」

「待てよ!この野郎!!」

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ずるずると引きずるような音を立てて逃げるように霧の外へ向かっていく異形・・

・・・霧はさほど広い範囲に展開しているわけではないので、すぐに外にでてしまった


六澄の商店街は、すでに夕暮れに差し掛かっているために人通りが多い!!

案の定、その禍々しい姿を目視した通行人が、騒ぎ始めてしまった


・・くっそ~!!なんなんだこいつはっ!?


元々秘密にする理由のない僕である

ブルーナイトの腕で異形に組み付き、それ以上の前進を妨げる


ぉぉ・・・


うなり声、もう何回も聞いているけど・・イヤになりそうな声

腕が伸びると僕の身体を掴み、引き離そうとしてきた


「やらせるか・・!!」


周りを見ると、写真を撮る人、何かのショーと勘違いしてはやし立てる人、通行の邪魔になると吼える人・・色々だ

しかし、異形の行動で辺りは大混乱に陥れられる


・・びじゅっ・・・ぅぅぅ・・・


レーザー・・景が言っていた、アリスをやったヤツと同じのだろう

それが近くに止めてあった自転車を貫通し、融解させ・・発火させた

アスファルトにも大きな穴が穿たれ、その恐ろしさを物語る


そして・・異形はレーザーを乱射し始めてしまった


「やめろ!!!」

・・ぉぉ・・


いい加減耳に障る声・・

ブルーナイトの全力を出してその3メートル台の怪物を持ち上げると、僕は商店街の出口・・人通りの少ない道路の方面へ、投げ飛ばした


・・ヤバイ・・予想以上にヤバイ事態になってるぞ・・コレは・・!


人通りの多い所、目に付くのは別に構わないがレーザーが危険だ

商店街、街のど真ん中である以上、人的被害が出る可能性は明らかに高い・・!!


「・・!?」


なんでだろう・・再び投げ飛ばした異形の方を見ると・・・いなくなっていた

ヘンなヤツだなぁ・・調子狂っちゃうよ


呑気な事を考えながら、僕は変身を・・・

とくワケにはいかなかった


「どっかの特撮?」

「今の敵の方、どこいっちゃったんだよ?」

「かっこいーね、あの人」

「そうかぁ?もう少しモールドにこだわった方がいいと思うぞ」

・・うわ、なんか後ろからヤな会話が聞こえてくる・・


とりあえず僕は路地裏に「ばびゅん」と逃げ込んで難を逃れた

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夜・・

街は再び大騒ぎになっていた

今度もまた、かなり人通りの多い所に・・


現在地:渋谷駅前・・109までもう少しくらいの所・・


「くっそぉ!!近づいたら即レーザーかよ!!」


毒づくのと当のレーザー発射はほぼ同じだった

持ち前の反射で避けるけど・・街のあちこちはコレのせいで破壊がひどい

A.R.Kの全戦力を動員しても、こういう所ではどうにも抑えがたい・・

(全戦力・・ブルーナイト、ウイングショット、アリス、あと正体隠しのため変装した咲妃ちゃん)

・・ていうか咲妃ちゃん、それはどう見ても「魔法少女のコスプレ」でしかないと思うけど(汗)

・・まぁ委員長が気が付かないくらいだから大丈夫だと思う(ホントに?)


警察がすでに管制を敷いているために付近の人は撤退したらしいけど・・

どうやら、僕達も決して安全とは言えないらしい

何度か警察官から発砲を受けて、アリスの装甲を弾丸が跳弾した


「景!」


アリスの肩・・30ミリマシンガンを内蔵していたブロック部分がレーザーに撃ち抜かれ、本体から溶け落ち・・炸薬が連続して爆発を引き起こす


「っくぅぅぅぅ!!!」


どうにか気合いで機体を立て直すと、アリスはまた持ち前の機動力を活かしてレーザーを回避しつつ攻撃に移る

ウイングショット・・メイちゃんは腕から発射する光弾とレーザーブレードを多用し、敵の攻撃を防ぎ、弾きながら接近する

・・しかし・・接近すると異形はレーザーをかなりの広範囲に放射するため完全なゼロ距離まで近づく、というワケにはいかない

それに・・ヤケに堅い、こいつは・・

アリスのマシンガンはまだしも、ウイングショットの光弾、ブルーのレーザーブレードを受けてもダメージすらないように見える

それどころか・・さっきより大きく・・・進化している!?


「自衛隊が出るの!?」

「そ、それホントの話!?」

「僕らも戦車砲なんてくらったら・・」

「・・敵戦力低下確認できず・・ブルー、ウイング疲弊・・アリス性能30%低下」


咲妃ちゃん(そういえばセキュリティ)の状況分析と、今の情報を判断した結果・・


「一度撤退しましょう!!」

「それしかないか・・!」


アリスの肩から発射された煙幕弾・・その煙に包まれて、僕らは一時的に、初めての撤退をする事になってしまった・・。


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8月11日・・

決戦の時は来た

自衛隊の攻撃はどうやら効果を発揮できなかったようで、戦車砲の直撃にも耐えて見せた異形はなおも移動を続けている

TVではこぞって臨時ニュースの嵐

・・いつもなら帰省ラッシュあたりの情報が一番に来るのに、さすがに東京の危機とあればこうなるわね・・

異形はどうやら、広い場所へわざわざ向かってくれている

・・決戦の地は水道橋駅から少し・・東京ドーム!!


「あたし達が決着をつけるしかないわよ!」

「その通りでござる!」

「・・(メモ:改都くんも変装しないと戦えないし、レーザー危ないよ?)」

「・・そうでござった・・あのような光線を受けては私も・・」

「戦力はブルー、ウイング、アリス、咲妃ちゃん・・四人で止めるしかないわ!!」

「補給は俺たちに任せろ」


大介くんたちも笑いかけながら言ってくれる


「ピィィ。」

「・・行くわよ!一世一代の大決戦!・・出し惜しみはなし、アリスも最強の装備を・・」

「最強装備?」

「尺鋼を多量に練り込んで作ったスーパーウェポン!その名も「カイザードリル」!!!!」

「・・(メモ:回転体にかかるのはジャイロ効果、つまりアリスはドリルの反動で転倒・・)」

「こむちゃん、その心配は無用よ♪」

「気合いでカバーするとか言うつもりでしょ?」

「モチのロン♪」


忍くん他数名のハリセンがあたしの頭を直撃した

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自衛隊が防戦する一方、通常兵器が通用しないお約束があるらしく、ダメージを一切受けていないようにも見える異形

・・アリスの尺鋼兵器が効かない相手に、たかがミリ単位の鉄鋼弾が通用しますかって

それこそダムダム弾使ったって環境破壊になるだけ、資源と環境を無駄にするだけよ


・・あたし達は異形の目標を予測して・・東京ドームの中で、その時を待っていた


「・・しかし腑に落ちねぇな・・なんで次はココなんだ?」

「今までのあいつの登場ポイントよ」

「新宿は都庁の近く・・改都達は確か浅草寺の裏手、明達は東京タワーだっけ?」

「他にも東京名所の近くで遭遇してるでしょ?」

「・・まさか奴らの目的って・・東京観光とか言い出すんじゃねぇだろうな?」

「それにしては臨海学校の時にも出てきたし・・人は襲うし・・」

「・・だがしっかり一致するな、観光地という共通点では・・後は東京ドームだけになる」

「・・(メモ:じゃ、そろそろ私たちは待避してるね)」

「そうであった、私も戦う気になっていたでござる・・(汗)」


急いで流星牙皇を引っ込めると、改都くん達は行ってしまった

残るのは戦闘部隊・・あたしとユウちゃんとメイちゃんと咲妃ちゃん

(今改めて考えると女っ気多いような・・(汗)

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「来たか?」

「・・騒がしくなってきた・・」


ヤツが入ってきやすいように、ゲートは全て開け放ってある

俺たちは水道橋駅の方向を見守っていた

・・爆音と異形のレーザーの高い音が、夜の静けさに反響してとても大きな音に聞こえた


俺も、大介も、改都も・・本当ならあいつらと一緒に戦いたいところだが、そうもいかないんだよな・・

こちとら生身、あっちは常識無視の怪物ときた

・・ケンカの相手じゃねえんだ


「・・念のため私が最後の策を仕込んでおきましたが」

「・・チェス、何を仕込んだんだ?」

「発信器ですよ、R-BLAST爆撃機への誘導電波を出す・・」


※説明しよう!

イギリス諜報部00エージェントであるフランチェスカには、発信器が渡されている

これは衛星軌道にある人工衛星からR-BLASTと呼ばれる攻撃機を呼び寄せ、目標地点を最短3分以内に完全消滅させる事ができるのだっ!!

ちなみにR-BLASTの積載兵器は「C4爆薬」「核」など様々に指定できるらしい・・


「今すぐ撤去してこい!!」


チェスはちょっとだけ残念そうな顔をしたが、無言のままドームの方に戻っていった


「・・あ、危ういトコでしたねぇ・・☆」

「委員長よ、お前・・もしかして裕司達が負けると思ってたのか?」

「へ?・・あ、ああ・・いやそんな事ぁ・・・」

「もしかして・・はあり得ない事じゃないからね・・」

「・・ま、そりゃそーだがよ」


・・不死身の騎士様お二人と、最強の金属でできたスーパーロボットに天下御免のスーパーメイドだ

・・よくわかんねぇ組み合わせだが・・ヤツらなら大丈夫だろ、いい加減。

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「・・行くよ!」

「うん!」

「かかって来なさいな!」

「・・完全粉砕します」


ご丁寧にドームの入り口から入ってきた異形・・

・・僕達は一斉に攻撃を開始した


こいつらとの戦いの中で、初めてケガ人が出た、街が破壊された、大事になった・・

僕は事態の転機である事を感じる前に、そういうまるで戦争みたいな事をふっかけてきたこいつらが許せなかった

・・それとも、こいつらは本当に宣戦布告のつもりなのか?


ここで、こいつを倒して全てが終わるワケでもないとは思う

・・だけど・・だから放っておく、そういうワケにはいかない

僕はもう後には引けないし、引くつもりもない・・

戦うのはイヤでも、A.R.Kとしてでも、僕としてでも・・戦えるのなら戦うしかない!


僕はそう心に決めた

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8月12日・・早朝


あれから何時間経ったんだろう?・・みんな揃って天導寺邸の前にいた

昨日の11時に始まった決戦は・・深夜の決着を迎えたワケで。

メイちゃんが攻撃をわざと直撃され・・ユウちゃんがアリスの折れたドリルを融合、背後から本体に撃つという方法で・・

ユウちゃんは眠っちゃって、メイちゃんも再生の際の疲労で同じく眠っちゃって・・

結局あたしは咲妃ちゃんと、片腕のアリスで帰還した


・・で、今・・あの二人を除いた全員が集まっている


「なんとかなったね」

「景、お前も十分活躍できたみてぇじゃねぇか?」

「失礼な!・・アリスはいつも活躍してますもん!」

「・・(メモ:まぁそう怒らないで)」

「ま、ひとえに俺らの応援のおかげだよな?」


・・大介くんにハリセン所持者から一斉攻撃(こむちゃん含む)


「しかし・・疲れますねぇ・・・セキュリティモードって・・・・記憶も残ってないですし・・」

「どういう事してたか知りたいなら、ターミネーター全部見ればいいですよ☆」


委員長の言葉で咲妃ちゃんの顔が青くなる

どのシーンを想像したんだろう?・・最後の辺りのプレス機でつぶされるトコ?(笑)


「・・あれ・・・?・・にしても・・なんだか眠くなってきたよな・・」


がくん、と咲妃ちゃんの身体がくずおれた

・・咲妃ちゃん、結構長い間セキュリティモードだったから筋肉が弛緩状態なのかな?(汗)

(無理に筋肉活性化とかやってるから・・結構身体によくないのよね(当然)


「咲妃さん、だいじょーぶですか☆」

「・・う~・・・お、起きあがれません~・・・(泣)」

「しょうがない、手ェ貸してやるよ」

「ひっ!?・・ど、どこ触ってるんですか忍さん!?」

「・・おぶってやろうってんだ、大人しくしてろ」

「・・・・・・はい」


少し笑った

・・みんな揃ってしばしの間笑って・・


「じゃあな、まだ夏休みなんだからエンジョイしろよ?」

「またなんかあったら呼んでよ、狙撃の仕事とか」

「そりゃないと思うが・・・ま、俺もサッカーと旅行の時は呼んでくれ」

「・・(メモ:またヒマあったら遊ぼうね)」

「裕司くん達、風邪ひかないように言ってくださいね☆」

「私も流星牙皇を鍛え、レーザーに太刀打ちできるようにしてみせるでござる」

「・・それは無理があるんじゃ・・」

「不可能をなくしてこそ男、アル殿に勝つ可能性も出てくるというものでござろう」

「・・まぁ、そうかもね・・」


・・・・みんなが行ってしまってから・・

忍くんは咲妃ちゃんをあたしの部屋まで運んで、代わりにユウちゃんを背負って帰っていった


あたしは大きく伸びをして、窓の外を見た

これで今後の課題も増えたけど・・収穫もあったんだから、イーブンね


・・咲妃ちゃんじゃないけど、いきなりどっと疲れが襲ってきた

・・あたしも、もう寝よう・・


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翌朝・・


覚悟はしていたことだけど、ニュースも新聞もラジオも・・

一斉に、怪物を倒した者達の存在を、大きく報じていた


・・まぁ、正体バレてないからどうでもいいけどね・・

どうでもいい、って事はないか・・。


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