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2021.11.06
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カテゴリ:父の紀行文
(1994年に父が書いた原文のままなので、現在では変わっている部分もあるかもしれません)


西国第二十六番 一乗寺
      兵庫県加西市坂本町821番地の17



一乗寺に行ってきた友人に「こんな所にこんな寺が・・・とびっくりしたろう」と言ったら、返ってきた答えは「まあね」。この問答は一乗寺の実態を言い得ている。鉄道にも定期バス路線にも見離された山あいに、平安期の三重塔をもつ古刹があるのはびっくりだし、鶴林寺・円教寺など大寺の多い播州の寺としては「まあまあ」の規模である。

だが北条方から来ると、峠に小さな小さな総門がある。また寺の前の県道を西へ行くと、吹き抜けの小堂がある。この両者までかっての寺域だとすると、盛時は広大な境内を誇っていたことになる。

入山徴収所から急な石段を上り、最上層の屋根に照り反り(てりむくり)がある優雅な三重塔を見上げ、更に石段を上って舞台造の本堂へ入り納経印をいただく。本堂の裏に鎮守三社ー妙見堂・弁天堂・護法堂ーの神社建築三棟がある。鎌倉末期から室町初期の様式を伝える好ましい小社である。

中ノ島に祠がある池の周りを取巻いて、坂東三十三ヶ所を勧請した石龕列が立つ。四国や西国の霊場を勧請したものは多いが、坂東の霊場は珍しい。

駐車場のそばに、粟嶋堂と三棟の傘堂風の水子供養堂がある。一見、一乗寺の堂のように見えるが、「本寺の宗教活動とは関係ないもの」という一乗寺側の掲示があった。背後にはなにかドロドロしたものがありそうだ。

開基法道はインド渡来の仙人という。『元享釈書』巻18にある、海上を航行中の船に供養を求め、拒否されるや、空鉢を飛ばせて積荷を奪ったという説話の主だ。後に積荷を返す結末になっているが、これでは仙人というより武装商船団の親玉だ。古代末、中世の瀬戸内海の在地豪族が組織した水軍ー海賊ーの存在が投影されているのではないか。


(1994.01.08)





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Last updated  2021.11.06 13:40:05
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