320life

2022/12/03(土)23:18

301.80代で見つけた生きる幸せ [ G3sewing ]

【読書】ノンフィクション・ルポ・自伝(53)

本のタイトル・作者 ​あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた 生きる幸せ [ G3sewing ]​ 本の目次・あらすじ 1章 病気でお金がない82歳が 生きがいを見つけた 2章 どうする? お金がなくて 生きがいが続けられない!? 3章 毎日が楽しい! がま口バッグ作りの舞台裏 4章 生きがいを続けるための、 体と心の健康対策 5章 80代以上が頑張れる、 これからのG3sewing 引用 「後期高齢者の方々に、働く場を提供できたらいいなと思っています。G3とB3が『朝起きて、やらなあかん仕事がある。こんな幸せなことはない』といつも言うてます。まだまだ活躍できる。必要とされる場がある。自分のペースで働けて、お金を稼ぐことができる。そんなG3sewingになりたいです」 感想 2022年301冊目 ★★★★★ この本、良かったです。 ちょうど、 ・貯まらない生活はもうやめよう [ Takeru ] を読んでモヤモヤしていたところだったので、「そうそう、私が理想とする『働く』はコレなんだよ!!」と膝を打ちました。 私は表紙からてっきり「80代でも現役で働き続ける鞄職人がネット販売で若い人にも商品を届けられるようになった話」だと思っていたので、まったく違う内容だったことにまず驚き、そしてなんだか、すごく元気と勇気を貰えました。 G3(じーさん)は若い頃から人とぶつかる性格。 電気の技術もアイディアもピカイチなのに、いつも対人関係のトラブルで仕事を辞めてくる。 4人の子どもと妻(B3、ばーさん)はそのために貧乏な暮らしをしてきた。 そんなG3も年を取り、年金3万円で長女の家に身を寄せる日々。 病気もあり、ほぼ寝たきりのような暮らし。 すっかり生きる気力をなくしていたが―――。 ある日、娘に依頼されたミシンの修理から、ミシンに目覚める。 82歳。既製品を解体し、見様見真似ではじめた裁縫。 次から次へと作るので、布地の供給が追い付かない。 娘たちは新型コロナウイルスの特別定額給付金を生地代としてプレゼント。 そのうちにG3はめきめき腕を上げ、孫息子の提案でTwitter販売を始めることに。 これがバズって、注文が殺到した! という、アメリカンドリームならぬTwitterドリームのお話。 これは、それを支えている娘さん(三女)が書かれた著書。 ・父と僕の終わらない歌 [ サイモン・マクダーモット ] (認知症の父が歌う歌を息子がfacebookにアップし、最後はCDデビューをした話) を思いだした。 G3は、82歳でミシンを始めて、初心者から洋裁をそこまで出来るようになるって、本当にすごい。 そして、思う。 「自分が手に入れたもの」って、これにしか使えないと思っているけれど、実は汎用性があるのかもしれない。 G3は電気の専門家だったけれど、その「仕組みを見る力」は洋裁にも活かされている。 娘さんも書かれているけれど、この世代の方々の「物がない時代に頭を使って工夫する力」とか、「身につけた能力」って、太刀打ちできないものがある。 素地というのだろうか。 失われたもの。もう戻らないもの。 大量生産大量消費の時代を経て、立ち止まって、考えるようになって。 ネットによる「大衆化」は逆に、「自分だけのもの(物語)」を持ったものを、差別化や特異性、「差異」を求めるようになってきているように思う。 そしてネットがあれば、それを届けられる。 お客さんから手紙が届く。プレゼントが届く。 いつも発送をお願いする郵便局の人からもメッセージが届く。 私たちは、つながりを求めている。 自分にだけ送られた言葉。自分のために作られたもの。 私を、あなたが知ること。 ・一万円選書 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語 [ 岩田徹 ] ・「一万円選書」でつながる架け橋 [ 岩田徹 ] ここらへんも、同じなんだろう。 私は、あなたに私のことを知って欲しい。 たくさんの人がたくさんのことを発信している今だからこそ。 私は、あなたと繋がりたいのだ。 私はあなたがここにいることを知っているのだと。 娘さんが全面的にお父さん(G3)をサポートしていらして、素晴らしいなと思うのだけど、なかなかにご苦労の多い人生だったのだろうと思う。 いくら親にお金を渡しても焼け石に水。 これ、まさに私の母とその祖父母の関係性に似ている。 徒労感。失望。でも僅かな期待を持って、裏切られて。その繰り返しに疲れ果てて。 愛された記憶にがんじがらめになる。 4人のお子さんは全員、小学生のときにお菓子が貰えるからというような理由で教会へ通い始め、三女の娘さんは中学生で洗礼を受ける。 親の仕事が不安定で、心の平穏を求めていたのだそうだ。 子どもが教会の扉を叩く時。 私も8歳か9歳の時に近所の教会に通い始めた身なのでよく分かる。 そこに誰か、助けてくれる人がいるんじゃないかと。 私は、赦されたいと願うこどもだった。 それは、神さまなんじゃないかと思っていた。 知り合いの方は親がネグレクトで、近所の教会でお金の使い方、料理の仕方、洗濯の仕方、繕いものの仕方を教わった。 その人は、教わった方法で暮らしを立て直し、弟妹を自分で育てた。 釣った魚を与えるのではなく、魚を釣る方法を教えること。 宗教を否定的に見る現代日本において、でもやはり必要とされる場面はあるし、零れ落ちて誰も手を差し伸べられないそこに手を伸ばす。 その範囲に置いて私は宗教に存在の意味を見出すし、その精神を尊いと思う。 G3sewingは、運営が安定してきた2021年末から、がま口バッグ1個につき150円をタイの児童養護施設に寄付しているんだそう。 ここらへんも、 ・74歳、ないのはお金だけ。あとは全部そろってる [ 牧師ミツコ ] の時にも思ったけれど、信仰というものが土台を支えているのだと感じた。 だって、別に自分だって裕福になったわけじゃないじゃないですか。 お金なんて、いくらあったって困るもんじゃないんじゃない。 でもそれをちゃんと、世界に戻せる。回せる。すごい。 働くって、何だろうか。 私は自分が出来ることを、世の中に還すことなんじゃないかと思う。 誰かのおかげで出来た道。水。食べ物。服。家。 享受する豊かさを、誰かのおかげを、自分も返したい。 与えられて、与えて、まわる世界。 世界の一部として存在する意義。 自分が占める場所。必要とされる役割。 それを果たしたい。出来るなら、自分が一番得意で役に立てるもので。 じゃあ、「働く」がなくなるということは、それを失うこと? 働けない人もいる。 子供は?年寄りは?障害はどうだ?病気は? じゃあ、働けなくても存在するだけで、「役に立っている」のか? そもそも「役に立って」いないとだめなのか? 「役に立つ」と言う言葉の、違和感。 働くことは、誰かのおかげを回すこと。 それは、過去と未来の誰かにそれを返すことでもある。 今ここにいる自分のためだけではない労働。 うーん、上手くいえない。 でも、思うのは、私の「はたらく」は、一義的には私のためであるけれど、そうではない。 近江商人の活動の理念・三方良しが「買い手よし、売り手よし、世間よし」というように。 ・カゴメの人事改革 [ 有沢正人・石山恒貴 ] で書かれていたように、「四方良し」では「働き手」が、「六方良し」では「作り手、地球、未来」が追加される。 つまり、そういうことなんじゃないのか、と思うのだ。 どんなチャリティーも、偽善では続かない。 G3sewingのバッグは、本を捲ったところに作業風景の写真がある。 目に入った瞬間、「可愛い!」「素敵!」「欲しい!」と思った。 そうじゃないと、どんな活動も続かない。 このバッグを買った人は、「このバッグが欲しいから」買ったんだと思う。 そこに物語と言う付加価値(G3が作った)はあるにしろ。 私も欲しいもん。読み終えてすぐTwitterのアカウント(G3sewing)検索したもん。 私は今、「自分」のことしか見えてない。 その先にある「売り手」としての立場さえ、ちゃんと見えてないんじゃないかと思うんだ。 ああ、未熟だなあ。 成長の余地しかないなあ。(笑) それでもいつか私は、「六方良し」の働き方がしたいな。 この本は、そのお手本になるような本。 ランキングに参加しています。 「見たよ」のクリック頂けると嬉しいです。 にほんブログ村

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