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2005/10/26
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カテゴリ:novel
雨が降りだしたみたいだ。どうやらしばらく帰れそうにも無い。

長い学校の一日が終わり、終礼も終わらせてまさに帰ろうとした時だった。

いかにも雨、と言う音が嫌なほど耳に刺さり、僕の体は自然と窓へと引き寄せられた。

学校の一端の窓から身を乗り出す。雨はただひたすら落ちていく。

自転車で登校した僕には、多少なりとも帰るのに抵抗感を覚えた。

普段から学校に残ったりはしない方だが、今日は仕方ない。

そう思うと、雨も億劫ではなくなった。窓から見る雨が、雨としか感じなくなる。

先程まで嫌なほど耳に刺さった音も、静かに耳から消えうせた。

そうなれば、窓から見る景色も随分変わった。

雨の中、走って帰って行く自転車通学生を窓際で小気味良く感じ、仕方無さそうに残る生徒に同調した。

しばらくその場で外と中、目をやりながらぼーっと時間を消費した。

何分経ったか分からないが、雨は一向に弱くなる気配を感じさせなかったので教室の自分の席へと戻った。

すると、荷をまとめる途中で投げ出した事を、憖な机を見て思い出す。

自分でも少々呆れたが、散らかった荷物をごそごそと鞄の中に詰め込んだ。

ある程度帰れる用意をした所で、教室を見渡した。

最前列の机に誰かの鞄が放置され、右隅の席には一人の女子生徒がいた。

しめた、と僕の顔はにやけた。僕は僅かではあるが彼女に興味を持っていた。

今二人きりなのだから、話しかける絶好の機会だと確認する。

何から話しかけるべきだろうか。別に普段からよく話す仲でもない。

むしろ、ほとんど会話らしい会話をした事が無い。

ありがとう、とかごめん、会話が成り立つ前に僕らの言葉のやり取りはいつも終わる。

そんな調子だから、いざとなると何から話しかけるべきだろうか。

いきなりあまりに踏み込んだ話では引かれる。

かと言ってあまりに内容の薄い話題ではいつもと変わりはしない。

絶妙な切り出し方って何だ。雨?あぁ、雨を話題にしよう。

僕は鞄の紐を握り締めながら、早く話しかけたい半分、不安半分で落ち着かない。

時間が無駄に数分と過ぎてゆく。一体どれ位の時間をこうして過ごしたか。

よく覚えてはいないが、ようやく頭の整理が出来て話しかけようと鞄の紐を放した時だった。

ごめーん、ごめーん!とクラスの女子生徒の声が廊下から聞こえてきた。

すると彼女は全然待ってないよ、と軽く流して帰る準備をはじめた。

後から入ってきた女子生徒は最前列の机の上の鞄をとると、彼女を連れて早々と教室から姿を消した。

呆気にとられて教室を見渡してみる。

どうやら、僕しかいないようだ。



















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Last updated  2005/10/26 07:01:19 PM
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