once第三章 33 バカ
最初から&続きからはこちら***33*** バカ宏信は疲れた顔をして自宅に戻り、扉が開くとカードキーを車椅子のサイドポケットにしまった。天井の高い玄関ホールも、そこから続く広くて長い廊下も、しんと静まり返っていて真っ暗だったが、宏信は慣れた手つきで扉の右にあるスイッチを押し、明りをつけた。前進しながら何とか体を曲げて、足についた珊瑚樹の枯れ葉を払いのけた彼は、玄関ホールの花瓶を危うく倒しそうになり、苦笑した。いけないいけない。不注意は、死への序章………あの事件以来、身にしみているはずだ。毎日きちんと生活すること。それが、僕にとって決して落としてはならない課題なんだ。短い溜め息をつくと、宏信の顔にもう、疲れの色はなくなっていた。彼は長過ぎる廊下を車椅子で渡った。右に曲がり、突き当たりの部屋の扉を開けると、彼は驚き、その後笑みを漏らした。宏信のリクライニングベッドにもたれて、芳乃が眠っている。宏信は、芳乃の寝顔を目を細めてしばらく眺めてから、そっと彼女の肩に右手を置き、囁いた。「お嬢さん」途端に芳乃は目を開け、勢いよく声の主を振り返った。「宏信……………!! ご、ごめんなさい、寝ちゃってて……」宏信は満面に笑みを浮かべながら言った。「こっちこそびっくりさせてごめんね」彼の笑顔を見た芳乃は心底ほっとした様子で、彼の手を握り、体を抱き締めた。「……お帰りなさい」宏信は右腕を精一杯、左腕を少しだけ伸ばして芳乃を抱き締め返した。「ただいま。……待たせてしまってごめん」芳乃は宏信を不安そうに見上げたが、無理に笑顔で首を横に振った。その様子を見て宏信は、不意に真剣な眼差しになった。「芳乃、答えようか? この前の質問に」「……え?」更に不安そうな表情になった芳乃を見つめ、宏信は言った。「僕は、他の誰とも比べものにならないくらい、芳乃を愛してるよ」芳乃は驚いた顔の後、瞳からぽろぽろと涙をこぼした。宏信は慌てて、その涙を拭う。「泣かすつもりじゃ……」「泣いちゃうよ……だって、嬉しいんだもの」泣きながら自分に抱きついてくる芳乃の背中を優しくトントンとたたきながら、宏信は満ち足りた微笑みを浮かべていた。「君と離れて、一人で有芯に会いに行っている間、考えたよ。今の自分や過去の自分のこと。……僕は過去と折り合いをつけなきゃならない。今愛しているのが誰であろうとも、過去は過去で存在するし、そしてそれはなくならない。…………でもね、途中からそんな考え事なんて、全部どうでもよくなったんだ。芳乃に会いたい、って……ずっと一緒にいたいって……そればかり考えてしまって」宏信は芳乃を強く抱き締めた。力の入らない左腕にすら、力を込めて。「芳乃、僕と結婚してくれないか。君の二十歳の誕生日に、式を挙げよう」芳乃は驚いた顔で、目を見開き呆然と彼を見上げた。宏信は慌てて付け加えた。「いやその………僕は障害者だし、体も弱いし、だけど、僕は、君が」「バカ!!」芳乃が叫んだ。ああ振られた……宏信がそう思った一瞬後、柔らかい感触が彼を包んだ。訳がわからないまま、唇を離し彼を泣きそうな顔で見つめる芳乃をぼうっとしながら見つめている宏信に、芳乃は言った。「断るわけ、ないじゃない……そんな理由で。バカ。バカバカ!!」宏信の顔に、芳乃の大好きな笑顔が戻った。二人はいつまでも微笑み、抱き合っていた。ふと、宏信が言った。「有芯と朝子さん、どうするんだろうなぁ」「どうするって……決まってるんじゃないの?」「……どうかな?」「どうかな?って……宏信は、自分の取った行動に後悔がある?」芳乃の問いに、宏信は有芯のよくやる仕草を思い浮かべた。後ろ頭をぐしゃぐしゃにして苦笑するガラの悪い青年を思い出しながら、宏信はにこりと笑い、言った。「ないよ」やっとUPできた、、、( ↑∇↑ )てかやっぱりPCおかしいです……ウイルスは何とかなったはずだったんですが、やっぱり動作がおかしいんです!!今これも書いてる途中何度も消えましたから!!!!!新しいPC買ったら、またまともにレスとかつけますね、、、今はこれが精一杯、、、クリックでランキングが上がります。応援していただけるとなさこうが調子に乗って書くペースが……上がったり上がらなかったりします(苦笑)!!↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓