914780 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

世川行介の株式ブログ                 (今後は『世川行介放浪日記』で)

世川行介の株式ブログ              (今後は『世川行介放浪日記』で)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2021.06.19
XML
カテゴリ:加藤暠伝説
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​加藤​暠​伝説4 


  ​天才相場師の記憶(3)

​​ であろうと何であろうと、
 「相場​」​とい​うものは、非情だ。

​ ​​売り方と買い方が、有り金を賭けて戦うのだから、
 ​
​​​
​​非情でなくては戦いに勝てやしない。​​​
​​
 先を読み損ねた者、
 資金の尽きた者、
 手を打ち間違えた者、
​ そういう人間は、相場に敗けて、落ちぶれ果てていく。

 「命までもは取って喰わない」という言葉があるが、
 相場は、命を取って喰う時だってある。
​ そんなことは、どこの誰でも知っている「相場の常識」だ。


 優良株相場であろうと、小型材料株相場であろうと、それは同じことで、
 株式市場を「相場」と呼ばせたくない人間たちが、
「株価は企業業績によって上下すべきだ。」
 そんな一方的な論理を押しつけているのが、今の東京株式市場の実状だ。


 しかし、

 加藤は、
「それは、実は、大手証券会社の営業トークに過ぎず、
 実際の株価は、需給関係で決定される。」
 と、株式市場の核を喝破して、
 彼なりの仕手戦を実践してきた、
 この国では100年に1度出るか出ないかの天才相場師だ。


 株価は需給関係によって決定される。と認識した加藤は、

 その優れた株式売買術によって、
 けい線の経験則を利用した空売り誘いをおこない、
 加藤の作るけい線に、「儲けのチャンスだ。」と爪を伸ばした欲深投資家たちが、空売りをかけ、
 しかし、加藤軍団によって買われているため、浮動株は市場に少なく、
 空売り筋には、「逆日歩」がかかってくる。
 慌てた空売り連の買い戻しによって株高をはかる、
 そんな彼独特の株式売買術を駆使し、
 そのほとんどに成功し、
 天才相場師の名を欲しいままにしてきた。


 この株式売買術は、非情ではあるかもしれないは、違法ではない。

 この一点については、彼をきちんと擁護してやらねば、
 稀代の天才相場師が不憫すぎる。
  

 加藤
の非情さについていけなかった人間たちが、
「彼に騙された。」
 とか、
「彼は、信者を裏切る。」
 とか言うが、
 僕には、そんな言葉こそが、「仕手戦に乗ってはいけない人たち」の言に過ぎない。という気がする。


 もう30年も前の話だから、僕が書いても差し支えないと思うので、

 少し書いてみる。


 ある日、

「おい。
 加藤さんが行ったから、
 すぐにS運輸を買うとけ。」

 ある人から、そういう電話をもらった。
「いくら買えばいいんですか?」
「信用枠で、好きなだけ買うておけや。
 売り時はまた教えてやるよって、買ったら、動かずに持ってろよ。」
「はい。」

 僕は、有り金はたいて、

 そのS運輸を、9万株、信用取引で買った。
 買値は、340円から360円くらいまでの間だった。


 しかし、

 10日経っても、
 20日経っても、
 全然上がらない。
 逆に、毎日、ジリジリ株価を下げていく。


 買って一か月ほど経ち、株価が300円を切りかけた頃、

 たまりかねて、電話をした。
「本当にやるの?
 下がってばっかりじゃないですか。」
 僕の問いに、こんな答えが返って来た。


「あのな。
 加藤があの株をやっとるっていうんで、
 うちの会社で提灯買いがつき過ぎてな、

 加藤が怒りよって、
 もうやめるって言うとるそうや。」
「そんな……、
 僕は、もう、9万株も買ってしまっているんですよ。
 売ったら何百万円かの赤になるけど、どうすればいいんですか?」
「まあ、待っとけや。
 加藤のことや。必ず何かをやらかす。
 黙って待ってろ。」
「……、わかりました。」
 僕は、不承不承にうなずいた。


 そして、数日後の土曜日。


 その時代は、土曜日も2時間、場が立っていた。

 土曜日が休みで、妻子を連れて喫茶店にいた僕に、
 証券会社の担当者から電話が入った。


「大変です。
 S運輸に、500万株の売り物が出て、
 値つかずのまま、売り気配で、値を下げています。
 今日は土曜日ですので、2時間でストップ安にまでいきます。
 このままだと、月曜日に追証が600万円くらい出ますが、どうします?」
 担当の証券マンは、慌てふためいていた。
「ちょっと待っていてくれ。」


 僕は、いつもの人に電話した。

「どうなるんですか?」
「どうもこうもあらへんよ。
 500万株売りが出ておるんやから、
 ストップ安になるんやろ。」
「そんな…、」
 僕は、もう、生きた心地がしなかった。


「お前、ナ。
 加藤がやっとるんやぞ。
 黙って見ておかんかい。」

「しかし…、」
「お前、加藤を信じてきたんやろうが、」
「はい。加藤さんの腕は信じています。」
「だったら、黙って見ておけや。
 加藤のことや。必ず何かをやりおるから。」
「わかりました。」


 僕は、電話をかけ終わると、自分の担当者に電話し、

「大引けまで見ておきましょう。
 月曜日に追証が出るなら、手当てしますから。」
「しかし、世川さん。
 売り物が膨らんで、いま、900万株になりましたよ。
 大丈夫ですか?」
「見ていましょう。」
 電話を切った。


 11時までの2時間は、実に長かった。

 呑みかけのコーヒーの味も忘れるくらいだった。


 11時ぴったりだったか、その直前だったか、
 今はもう、記憶にないが、

 担当の証券マンから、また電話が鳴った。


「世川さん。
 いま、
 S運輸のストップ安の215円に、
 誰かが、500万株いっぺんに買いを入れました。

 900万株あった売り物は、400万株消えて、
 売り物は500万株になって、
 それを全部誰かが買ったんです。
 商い成立です、」


「そうですか…。
 500万株全部かっさらいましたか。
 ……、」
 僕の中に、深い安堵が訪れた。


 これが加藤の相場なのだ。

 月曜日は、今度は一転して、買い気配から始まるだろう。
 僕は、そう確信して、月曜日を待った。


 月曜日。

 予想どおり、S運輸は50円のストップ高をした。
 翌火曜日も、80円のストップ高をした。
 水曜日も、ストップ高近くまで暴騰して終わり、
「どこまで上げるんだろうか?」
 僕は、期待に胸をワクワクさせて株価を見ていた。


 木曜日、

 440円くらいの時、
 僕は電話した。
「S運輸、どこまでやるんですか?
 どれくらいを見ておいたらいいか、教えてくださいよ。」
 そう尋ねると、

「お前は馬鹿か!
 もう、本尊は、みんな売ってしもうて、
 今度は空売りをかけとるやないか。
 早う逃げんかい。」

「ええっ?!」
「はよう、売れ!」
「は、はい!」

 僕は、電話を切るなり、持っていた9万株を売りに向かった。
 420円くらいで売れたから、700万円か800万円は儲かった。


 その次の日から、

 S運輸は、売られに売られ、
 再度ストップ安売り気配となって、
 結局、僕などが青ざめた時と同じ215円まで下げた。


 提灯買いのつきすぎた銘柄に空売りをかけて儲け、

 ストップ安の安値を買って棒上げさせて、儲け、
 高値に空売りをかけて、また儲ける。

 僕の人生で、

 あんなに華麗な3度の売買はを見たの、初めてだった。
「この人は、天才だな。」
 改めて、そう思った。


 断言しておくが、

 この売買のどこにも、違法性は、ない。


 この3度の売買で、

 逆を張った仕手株好きの個人投資家は、大損した。
 中には、加藤の信者もいて、
「加藤に騙された。」
「加藤に損をさせられた。」
 加藤の悪態を言った。


 しかし、

 それは、お門違いというものだ。
 恨むなら、自分の未熟を恨むべきだ。
 と僕は思った。

 僕だって、
 一つ間違えたら、大損をさせられていたかもしれないが、

 仮にそこで大損を出していたとしても、恨みを加藤あきらには向けなかっただろう。
 ただ素直に、
 こんな華麗な3度の売買をやった加藤の相場術に、絶賛の拍手を送っただろう。


 少しは株に精通している人間には、そんなことは当たり前すぎるほどに当たり前のことだが、

 そこいらの不勉強な新聞記者や検察官あたりには、
 永久に理解できないに違いない。



      2015-11-18 12:22:13記

​​​​​​
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2021.06.20 10:38:03
コメント(0) | コメントを書く
[加藤暠伝説] カテゴリの最新記事


PR


© Rakuten Group, Inc.